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 寒くて目が覚め、ハァーと息を吐いたら息が白く見えた。すっかり冬になってしまった。まだ寝ているナミとロビンに、取り出してきた羽毛布団を掛ける。多分手足が冷えていたのだろう、布団を掛けたら二人ともモゾモゾ動いていて可愛い。

 時計を見たら朝の五時前で、冬服に着替えて外に出る。ちょうど日の出の時間だったみたいで、朝日を浴びながら腕を上に上げてうーんと伸びをした。すると後ろでドアの開く音がして振り向いたらブルックがいた。

「おはようございます。渚さん。お早いですね」
「ブルック! おはよう。寒くて目が覚めちゃって。今日は冷えるね」
「一気に肌寒くなりましたね。あ、私寒く感じる肌ないんですけど! ヨホホホホ」

 目覚めの一杯ご一緒にどうですか、と誘われたのでうんと返事をしてダイニングに入った。灯りがついていたので誰かと思えばサンジがいた。

「おはようございます。サンジさん」
「おう、おはよう。コーヒー淹れようか?」
「ええ、二つお願いします」
「二つ?」

 ブルックに隠れて私はサンジから見えていなかったらしく、ひょっこり顔を出して挨拶をするとサンジは体をクネクネさせた。朝から元気だ。

「渚ちゃんおっはよー! 朝からなーんて可愛いんだ!」
「おはよう。朝食作ってるの? 手伝うよ」
「良いんだ。渚ちゃんはゆっくりして。今日は寒いからおれの愛をいーっぱい詰め込んだホットコーヒーで温まってくれ」
「ありがと」
「私のも愛が込められているのでしょうか」
「渚ちゃんだけだ」
「ヨホホホホ。悲しい」

 ホットコーヒーを飲むと身体が温まってきた。ドアの隙間から入ってくる風が冷たくて手足が冷える。

「今日は温かいもんでも作るか」
「サンジ! 私おでん食べたい」
「んんかわいいー!! 渚ちゃんのリクエストなら、いつも以上に腕を振るわなきゃな。朝から煮込んでおくか」
「ありがと。今から楽しみ!」
「良いですねえ、おでん」

 もう昼食の支度を始めるなんて凄いや。朝食のサンドイッチはもう出来てるし。


「雪だーーーー!」

 外からルフィの声が聞こえた。飲んでいたコーヒーを置いて外に出ると雪が降っていて、足元が白くなっていた。

「渚、雪だぞ!」
「雪だね!」

 「雪合戦する?」と私が聞いたのと同時に彼も「雪合戦するか!」と言ったので、二人で目を丸くした。

「ニシシ! 負けねえぞ」
「雪が積もったらやろうよ」
「おう!」


 今日は冷えるからか皆いつもより早い時間に起きてきて、朝ご飯を食べて再び外に出ると、雪が積もっていたので小さな雪だるまを沢山作って手すりに並べた。

「沢山作ったわね」
「うん。可愛く出来た。これがロビンね」
「あら、よく見たらこの雪だるま私達?」
「そう!」

 ロビンは微笑みながら雪だるまの頭にちょんと触れた。甲板ではもうルフィとウソップが雪合戦を始めていたので、二階からその様子を眺める。するとそこへゾロが通りかかった。寒さなんて平気って顔してる。

「ゾロ、手が凍りそうなくらい冷えてるの。その素晴らしい筋肉で温めてー」
「知るか。寒いなら船ン中入れ」
「えー、冷たいー」

 ゾロだけ一人薄着だし体温高いんだろうな。足元の雪を拾って雪玉を作り、ゾロの胸筋目掛けて投げつけた。

「てい!」
「つめてッ!! 何すんだ!?」
「胸筋曝け出してるからだよー!」
「待てコラ」

 階段を下りながら逃げると後ろから雪玉が飛んでくる。背後から甲板にいたウソップの肩を掴み、くるりと彼の体の向きを変え飛んでくる雪玉を回避したら、見事にウソップの顔にヒットした。

「ブッ!! ゾロ! 急になんだよ!?」
「ウソップに投げたんじゃねェ」
「ごめんね、ウソップ」
「二人とも雪合戦しようぜ! じゃあゾロはこっちなー」
「やるか」
「「いや負けるって」」

 ウソップと声が重なった。ルフィとゾロ相手に勝てるわけない。しかし彼らは雪玉を此方に投げてくるので、負けじと雪玉を投げ返す。

 投げても投げても避けられるが、逆に向かってくる雪玉は何度も顔面に直撃する。あの二人、容赦ないぞ。疲れてその場に倒れると、ウソップに心配された。

「大丈夫か渚!」
「ウソップ、あとはお願い……」
「おれ一人でアイツらと戦うのかよ!?」
「もう体力の限界……」

 頑張れウソップ、私の分まで。身体が冷えて寒いけど動きすぎて立ち上がれない。地面に寝転がっていると影が出来て、ナミが腰に手を当てて私の顔を覗き込んでいた。

「風邪引くわよ」
「寒い」
「お風呂入ってきたら?」
「ゾロの筋肉で温めてもらうー」
「ハイハイ。お風呂沸かしてるから」

 ナミが手を差し出してくれたのでその手を掴んで立ち上がった。寒いし彼女の言う通りお風呂に入りに行こう。


********************

 お風呂で体を温めて再び外に出ると、冷たい風が心地良かった。

「あれ……?」

 雪だるまを並べていた手摺りをふと見ると、雪だるまが一つ増えていた。誰が作ったんだろう。雪だるまの顔は笑っていて可愛い。
 もう少し見ていたいけど寒くなってきたから、もっと着込んでからまた見に来よう、そう思って船内に入ろうとしたら、視界がぐにゃりと曲がった。

 あ、どうしよう。これ、やばいやつだ。

「おい、渚!」
「……ぞ、ろ」

 近くにいたのか、ゾロが駆け寄ってきてくれた。彼に支えられながら立ち上がる。ゾロの手が私の頬に触れ、彼は「あちィな」と呟いた。

 何でだろう、身体に力が入らない。ゾロは少し屈んだかと思えば、私を横抱きにして歩き出した。

 彼のはだけた胸元を見つめ、顔を摺り寄せる。火照った頬より彼の胸筋の方が温度が少し低くて、心地よい体温と筋肉の弾力を感じながら目を閉じた。


ーーーー
ーー


 重たい瞼を開けると医務室のベッドの上だった。額には冷えたタオル。動かそうとしても怠くて動かない身体。
 頭を動かしたらチョッパーが椅子に座っていて、くるりと体を此方に向ける。

「気が付いたか?」
「私、ここに来た記憶無くって……」
「ゾロが渚を連れてきたんだ。気温差で体が驚いたんだろうな。熱があるから安静にしてるんだぞ」
「そうなんだ。ごめんね、迷惑かけて」
「気にすんな。暖かくしていっぱい汗かいたらすぐ治るからな。あと昼食べたら薬も飲めよ」
「分かった。そうだ、ゾロは?」
「今みんな、飯食ってるんだ」
「そっか、チョッパーも行ってきて」
「うん」

 チョッパーは昼食をとりにダイニングに行った。入れ替わるように入ってきたのはサンジだった。良い匂いがする。料理が乗ったお盆を机に置いて、空いた椅子に腰掛けた。

「お粥とすりおろしたりんごを持ってきたんだが食べれそうかい?」
「身体が重くて……」
「そっか。じゃあ食べれそうな時にまた持ってくるよ」

 彼はまたお盆を持って腰を上げた。ああ、またキッチンに戻っちゃうのかな。

「渚ちゃん?」
「ん……」
「ここいようか?」
「どうして」

 そんな事聞くの、と言おうとして顔を上げたら彼の優しい目と目が合ってドキリとする。サンジはふわりと笑って再び椅子に座った。

「寂しそうな顔をしてるから」
「……ここにいてほしい」

 どうして風邪を引くと寂しい気持ちになるんだろう。風邪がうつるかもしれないのにこんな事言うなんて。でも彼は優しいからきっと否定しないだろう。そんな優しさにつけ込むなんて私は最低だ。

「そばにいるよ」
「ごめん、やっぱりうつるから……」
「渚ちゃんは優しいな。おれ、体は丈夫な方なんだ」

 心配しなくても大丈夫、と言って私の頭を撫でた。ひんやりした手が気持ち良くて落ち着く。




 それからいつの間にか眠っていて、目が覚めるとサンジはまだ近くにいてくれた。

「おはよう。体調はどうだい?」
「うん、さっきより良くなった気がする」

 良かった、とサンジはお粥を温めに一度キッチンへ行って、すぐに戻ってきた。薬を飲むには何か食べた方がいいって言うし頂こうと思ってお粥を貰おうとしたら、彼は首を横に振った。

「おれが食べさせてもいい?」
「えっ、うん。サンジが良いなら……」
「役得だよ」

 年下に食べさせてもらうのなんて恥ずかしいとかそんな事はボーとする頭では考えられなくて、素直に甘えさせてもらった。


「ご馳走様でした。折角作ってくれたおでん、食べれないの残念」
「明日元気になったら食べて。おでんって煮込んだ分だけ美味くなるだろ」
「うん、ありがと」

 チョッパーに渡された薬を飲んで、再びベッドに寝転ぶと瞼が重くなってきた。


********************


「渚の熱はどうだ?」
「薬も飲んでるし寝たら治ると思う」
「ルフィ達がおれ達に容赦なく雪投げつけるからだぞ。気をつけろー」
「ゾロが温めてあげないからよ。アンタの筋肉で温まりたいって言ってたわよ」
「アホか。おれのせいかよ」
「渚ちゃんの弱った顔、めちゃくちゃ可愛かったなァー!」
「ヨホホ。サンジさんそれ、変態っぽい」
「変態っておれかァ?」
「誰もフランキーの話はしていないわ」
「お前さんら、静かにせんと渚が起きてしまうぞ」

 皆の声だ。何で皆ここにいるんだろう。もしかして心配してくれていたのかな。優しいな。


 意識はあるのに重い瞼は開かない。また意識が遠のいていくのを感じて申し訳なくなった。つぎ目を覚ました時には熱が下がってると良いな。そして一番に皆にお礼を言おう。




↓おまけ ルフィとロビンの会話

「おっ、良いな。この雪だるま」
「ええ。可愛いわね」
「これロビンが作ったのか?」
「いいえ、渚よ。私達を作ってくれたみたい」
「そっかー」

 ルフィは並んでいる雪だるまの横に、自分が作った雪だるまを置いた。彼の作ったものは笑顔の雪だるまだった。

「ルフィ?」
「これでヨシ!」
「あら」
「アイツもいなきゃな」
「ウフフフ、彼女が見たら喜ぶわね」
「だろ!」
「……でも彼女、この雪だるまが自分だって分かるかしら」