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 目が覚めるとベッドの上だった。見たことのない部屋。
 昨日は上陸した後みんなで酒場に行って飲んでから……記憶がない。何してたっけ。飲んでそのまま寝ちゃったんだっけ。そもそも私どうやってここまで来たんだっけ。誰にも迷惑かけてない? いや絶対かけてる。

 ベッドから下りると一緒に何かが落ちた。見たことのある黒色の手拭い。これは……確かゾロのものだったはず。どうしてここにあるのだろう。

 身支度を整えて宿を出る。サニー号に戻ったら誰かいるだろうか、と思って船に走ったら甲板で寝ているゾロを見つけた。彼に昨日の事を聞いてみよう。何も迷惑かけてないと良いんだけど……。

「おはよ、ゾロ」
「……ん、ああ」
「昨日のことなんだけど……」

 ゾロがスッと目を逸らした。この反応は……。ど、どうしよう。もしかして私ゾロに何かしちゃった!?
 ちょっと探りを入れてみよう。

「昨日はごめんね。大変だったよね?」
「あー、まァな」
「迷惑かけたよね」
「酔っ払ってたからな」
「……私って昨日、一人で宿に泊まったんだっけ」
「いや、おれが連れて行った」
「そうだったんだ。ありがと。ゾロもあの宿泊まったの?」
「ああ。さっき帰ってきた」

 同じ宿に泊まったなら船まで一緒に戻れば良かったのに。きっと道に迷いながら帰ってきたんだろうなァ。
 それにしてもさっきから彼と目が合わないし、どことなく気まずい空気が流れている。

 そういえば起きた時から身体が怠くてそれだけじゃなく身体の節々が痛い。

 迷惑をかけた、同じ宿、身体の痛み。
 このワードから考えられる可能性は……。サァーと血の気が引いた。万が一、彼と一夜の過ちがあったのならヤバいのでは? いやでもゾロに限ってそんなこと。

「この手拭い、私が持ってたみたいでごめんね。でも何で持ってたんだろう」
「そりゃお前が離さなかったからだろ」
「!?」

 あーだめだ。遠回しに聞いても分からないし、昨夜何があったのかちゃんと聞いてしまおう。
 もし私が襲ってしまったのならちゃんと謝らなければならない。いや謝罪だけで済むわけがない。どう詫びたら良いのだろうか。

「ゾロ、あのさ……」
「なんだよ」
「もしかして私たち昨日、一夜のあや……」
「あら、二人とも戻っていたの?」
「……ロビン。おかえり」
「ただいま」

 ロビンだ。彼女に相談する? それともゾロに聞いた方が良い? ロビンのいる前で?
 ぐるぐると混乱する中、ゾロは「さっき何言いかけたんだ」と聞いてくる。

「……? もしかしてお邪魔だったかしら」
「ちっちがう、大丈夫。ロビン、聞きたいことが」
「ええ、どうぞ」
「ここじゃちょっと。えっと、女子部屋で」

 彼女の手を引っ張って女子部屋に連れて行く。混乱しすぎてゾロがどんな顔をしているか見えなかった。

「何かあったの?」
「あの、私昨日酔っ払ってて……」
「ええ。随分酔っていたわね」
「それで今日目が覚めた時は宿でね。ゾロが宿まで連れて行ってくれたみたいなんだけど」
「そうね、貴女ゾロから離れなかったもの」
「そっ! そうなの……?」
「ええ。誰が何を言っても全然離れないから、サンジはハンカチ噛み締めて泣いていたわよ。記憶がないの?」

 コクリと頷くとロビンは小さく笑った。どうしよう全然思い出せない。

「それで今日……その、身体の節々が痛くてね。もしかして、やらかしちゃった……のか、と……。ロビン?」

 私が言い終わる前にロビンは、私から顔をそらして肩を震わせていた。顔が見えないから感情が読めない。数秒後こちらに顔を向けた彼女の表情はいつも通りだった。

「ゾロには聞いてみたの?」
「聞こうとしたんだけど、聞けてないの。で、でも昨日の事を聞こうとしたら目を逸らされて……! 会話しても目が合わないし。私絶対昨日襲っちゃったんだと思って……」

 ロビンはまた私から顔をそらしていた。そして一度咳払いをしてから口を開いた。

「もし貴女が襲ってしまったのなら、先に謝った方が良いかもしれないわね。怒っているのかも」
「……そうだよね。行ってくる」

 甲板に戻るとゾロは空をボーッと眺めていた。私が近づくと一瞬だけ目をこちらに向けてまた空を見た。

「ごめん!」
「……?」
「私、記憶ないけどそんな事するつもりなかったの。本当にごめん。許してもらえるなんて思ってないけど、本当に反省してるの。もう、ゾロと距離を置いた方が……ううん、一層この島で降りた方が……」
「お前はいつもと同じことしただけだろ。そんなに反省することか?」
「そっ! そんな、いつも私ってそんな過激なの!?」
「筋肉好きの変態だろ」
「うぐっ、否定できない」

 胸をおさえて後退れば腰に激痛が走った。思わず膝をつくと、手が差し伸べられた。

「身体、いてェのか?」
「う、うん」
「巻き込まれたとはいえ、振り回したのはおれだしな。手ェ貸してやる」
「怒ってないの? 私のした事」
「別に怒る程のことでもねェだろ」

 そ、そうなの? 襲ったのに許してくれるの? 振り回したのはおれだしって言ってたけど、私振り回されたの? そうだ、念のためきいておかなければならないことが一つある。

「ゾロ、念のため確認なんだけど」
「何だ」
「避妊ってしてくれた?」
「…………は?」
「えっ、あ、もしかしてこの世界の人ってそういうのしないの?」
「……オイ待て。何の話をしてんだ」
「だって私達、昨日しちゃったんだよね?」
「……」
「……あれ?」

 めちゃくちゃ大きなため息を吐かれた。それと同時に後ろから吹き出す声も聞こえた。

「コイツの勘違いの原因はお前か? ロビン」
「違うわ。私は話を聞いただけよ」
「勘違いなの?」
「当たり前だろうが」
「じゃあどうして目を合わせてくれないの!」
「そ、れは……。別に意味はねェ」
「なんか歯切れ悪いじゃん!」

 やっぱり何かしちゃったんだー! と泣くとロビンが私の肩に手を置いた。

「ウフフフ、いじめちゃったかしら。昨日あったこと教えてあげるわ」

 ロビンの話によると昨日の酒場で、ルフィが他の席の食べ物に手を出して、それに怒った海賊と喧嘩になった。ゾロも巻き込まれルフィに応戦していると、ゾロの近くにいた私が狙われた。
 ゾロは眠った私を抱えながら戦っていたため、私の身体は振り回され首や腰を痛めたらしい。

「そんなことがあったんだ」
「ええ」

 通りで首や腰が痛かったわけか。巻き込まれたとはいえ振り回したのはおれだしな、ってゾロが言った意味も理解できた。

「でもそれから先は彼しか知らないわ」
「宿に連れて行ってくれたんだよね」

 ロビンと二人でゾロに視線を向けると、彼は頭を掻いた。ちょっと面倒くさそうな顔をしている。

「渚が全然離れねェから、近くの宿に行って寝かせたんだ」
「同じ部屋に泊まったの?」
「別の部屋に決まってんだろ」
「じゃあゾロの手拭いがあったのは?」
「腕の代わりに渡しただけだ」
「ふーん」
「ここまで言えば満足か?」
「本当にそれだけ?」
「……あのなァ、酔っ払いに手ェ出すかよ」
「違うよ。ゾロを疑ってるんじゃなくて、私ほかに迷惑かけてなかったのかなって」

 ゾロは他にはないと言うけど、多分何かあったんだと思う。これは女の勘。でもこれ以上問い詰めても教えてくれそうにないから聞き出すのは諦めよう。
 ロビンは変わらず楽しそうに微笑んでいた。

「おーい!」
「あっ、ルフィとナミだ」

 ルフィの声がしたので船の下を覗くと、ルフィとナミがいた。二人が戻ってきたってことは今日出航するのだろうか。

「二人ともおかえり。今日出航するの?」
「三日くらいでログが貯まるから、この島にはあと三日は滞在する予定よ。ちょっと荷物を置きにきたの」

 ナミは両手に紙袋を持っていて、後ろから来たルフィも沢山荷物を持っている。何処かで荷物持ちとして捕まったんだろうな。


「船が近づいてくる」

 ゾロが遠くを見つめてそう呟いた。あの派手な船ってもしかして……。

「どこかで見たことあるわね、あの船」
「ギザ男んとこか!」

 ギザ男? てっきりキッドの船かと思ってたけど、違ったのかな。でもルフィってローのことをトラ男って呼んでたし、ギザ男もあだ名かも。

 ナミがルフィにどうするのか尋ねていたが大丈夫だろうとの事で、船が近づいてくるのを見守った。

「やっぱりお前の船だったか、麦わらァ!」
「ギザ男! 何でこの島に来たんだ!」
「この島の酒場が有名だって聞いて……あ?」
「え? ……あっ!!」

 キッドと目が合い思い出した。そういえば私、彼に喧嘩を売ったんだった。

「あら、彼と知り合いなの?」
「えっ!? う、うーん。顔見知り以上知り合い未満ってところかな」
「顔見知りなのね」

「返してやるよ、忘れもん」

 キッドからハートの海賊団のツナギを投げられた。このツナギお気に入りだったから返ってきて嬉しいけど、ずっと持っててくれたのかな。

「お前、何故麦わらのところにいる。トラファルガーから寝返ったのかァ?」
「あの時はお世話になってたけど、私は元々……」
「渚は元からおれたちの仲間だ! それとこの島の酒場は先に来たおれのもんだから、ギザ男は帰れ」
「んだと!? 誰が格下のお前の言う事なんざ聞くか!」

 俺は格下じゃねェ! とルフィとキッドの言い合いが始まり、周りが溜息を吐く。

「何それ服? 何でアイツから渡されるのよ」
「ローのところでお世話になってる時に貰ったツナギなんだけど、キッドに攫われて脱がされたの」
「脱がされたァ!? ルフィ! ソイツぶっ飛ばして! 渚を襲ったのよ!」
「襲ったァ? なんかわかんねェけど、渚はギザ男になんかされたんだな!?」
「誰が襲っただァ!? 襲われたのはこっちだ」

 怒鳴りながらキッドは飛んでサニー号に着地した。勝手にサニー号に乗るなとルフィが怒った。そしてまた言い合いが始まる。二人って仲悪いんだなァ。
 あっちの船にいるキラーさんや部下の人達は気にせず船を降りていた。キャプテン置いて行かれてるけど。

「コイツにおれは腕舐めまわされたんだぞ。それに胸も触られたな」
「舐めまわしてなんか……!」
「おれだけじゃなくキラーも襲ってたな」
「……渚ならしでかさない」
「ナミ!?」

 周りも確かにと頷き、私に冷やかな視線を送る。酷い、誰も私を庇ってくれない。攫われたお詫びにちょっと触らせてもらっただけだもん。

「ちょっと! 誤解を招く言い方は……」
「良いんだぜ? 今日も好きなだけ触ってもよ」
「えっ?」

 良いの? どうして急に? キッドの身体って筋肉量多くて全体的にどの筋肉も大きいから、すっごく魅力的なんだよね。

「ハッ!!」

 口の端から垂れていた涎を拭いて、ハッと我に返った。しかし時すでに遅し。私は無意識のうちにキッドの近くまで来ていた。首に手を回され、船から下りる。うわあ、何て素敵な上腕二頭筋。

「この間の売られた喧嘩、買ってやるよ」
「やっぱり覚えてたんだ……」
「おいギザ男! 渚を返せ!」
「コイツはおれに借りがあんだよ。今日一日借りてくぜ」
「かえせーーーッ!」

 ルフィの声が島中に響いた。