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 私とチョッパー、ウソップは大きく膨らませたルフィのお腹でトランポリンをして遊んでいた。

「すっごーい! 楽しーい!」
「よォし! 誰が一番高く飛べるか勝負だ」
「ウォォォ!」

 ルフィが疲れるまでしばらく遊ばせてもらった。人のお腹がこんなゴムみたいになるなんて不思議だ。

「ハァー、つかれたァ」
「ありがと、ルフィ。すごい能力だね」
「おう。なんか腹減ったなー」

 にくー、と言いながらルフィはキッチンへ向かった。

「そういや渚の住んでたとこには悪魔の実の能力者はいたのか?」
「ううん、全く。悪魔の実自体存在してなかったよ。だから色んな能力を見せてもらえるのが嬉しくて感動するの」
「うちは能力者多いからなァ」
「悪魔の実って珍しいんでしょ? 凄いよね。他にどんなのがあるの?」
「そうだなァ。炎や氷を出す奴、煙や糸を操る奴、触れた相手をおもちゃにする奴もいた。まっ、全員おれが倒してやったけどな!」
「すごーい!」

 ウソップは他にも悪魔の実の能力について教えてくれて、その能力者達をどうやって倒したのか語ってくれた。

「それでさ、ホロホロの実の能力を受けたら皆ネガティブになっちまってよ。でもおれには効かなかったんだよ。なぜだと思う?」
「えっ! なんでだろう。ウソップはその攻撃を避けたの?」
「いや、攻撃は確かに当たっていた。おれは元からネガティブだから効かなかったんだ」
「すごーい!」

 他には他にはと沢山聞いた後、彼が語ったある一つの能力について気になった。メロメロの実。魅了した対象を石化する能力らしい。ポーズまで教えてもらった。

「可愛い能力だね。こんな感じかな。メロメロメロウ」
「おっ、良い感じじゃねェか?」

 よし、と意気込んで偶然通りかかったサンジにハートを向ける。

「サンジ、メロメロメロウ」
「グハッ!」

 サンジは血を吐いて大袈裟に倒れた。

「出来た!」
「サンジなら何やっても倒れそうだな」

 ウソップは呆れながら倒れたサンジの体をつついていた。

「おっ、何かおもしれェことやってんのかァ?」
「フランキー、メロメロメロウ」
「いやいや流石にフランキーには無理だろ」

 笑い飛ばされるかと思ったらフランキーは石化したように固まった。驚いて二人で「えっ」と声を上げて、ウソップと顔を見合わせた。

「どうしようウソップ、フランキーが動かなくなった」
「まさか本当に!? いやそんなはずねェ。お、おいフランキー、大丈夫だよな?」
「何してんだお前ら……」
「ゾロ! フランキーが動かなくなっちまってよ。渚は能力者だったのかもしんねェ」
「何馬鹿なこと言ってんだ」

 全く動かないフランキーに焦る私達と呆れた様子のゾロ。ウソップがゾロにもやってみてくれと言うので手でハートを作ってゾロに向けた。

「メロメロメロウ」
「ハァ?……って何だ!? ロビンか!?」
「ウフフフ、ここはノッてあげないと」

 ロビンの能力でゾロの動きを止めた。ノッてあげないと? ってことは、と思ってバッとフランキーをもう一度確認したら普通に動いていた。

「もう! フランキー動いてるよ! ウソップ」
「ビビったー……あっいや、おれはそうだと思ったぜ!?」

「アンタたち、もうすぐ島に着くわよ」
「なにー!? 島はどこだ!?」
「もうそろそろ見えるはずよ」

 ナミの声に肉を持ったルフィが食いつく。彼は船首に乗り島が見えるのを待っていた。

「ナミ、メロメロメロウ」
「ハイハイ。アンタのことは大好きよ」
「ナミィー!」

 嬉しくてナミに抱きついた。暑いから離れてと引き剥がされたけど、呆れながらも好きだと言ってくれるナミに自然と顔がニヤけた。

 するとすぐに島が見えてきて上陸した。島に下りて今回は誰と一緒に回ってもらおうかな、なんて思っていると私の上に大きな影ができた。見上げるとジンベエがいて思わず声が出た。

「ジンベエって身長大きいよね。どれくらいあるの?」
「三メートルはあると思うぞ」
「す、すごいね」
「ワハハ。この海にはもっと大きいやつが沢山おるぞ」
「そうなんだ」

 この島は大きくて有名な酒場があるらしく、皆で行くことになった。今日は珍しくルフィは先に飛び出していない。

「渚、絶対はぐれないでね」
「分かった」
「ゾロ、アンタは特にね」
「何でだよ」

 ナミの指示に従って皆一緒に酒場に向かう。人が多いし気を抜いたらはぐれそうだ。身長が低いチョッパーも歩きづらそう。

「お前さんら、わしの肩に乗るか?」
「良いの?」
「良いのか!?」

 ジンベエに持ち上げられて肩に乗せられる。普段見上げるばかりの彼らを今日は見下ろしている。

「たかーい。すっごーい」
「高いなー!」
「ゾロって上から見たら本当にマリモみたい」
「あ? そこから下ろしてやろうか?」
「下から言われても怖くないもん。あ、そっちじゃないよ。別の道行かないで」
「……」

「あれが例の酒場ね」
「飯だー!」

 酒場は本当に大きくて、島の人や海賊達が沢山飲み食いしていた。ジンベエの肩から下ろしてもらって、テーブルに置かれたお酒を手に持った。

「ジンベエ、いざ勝負!」
「言っておくがわしは強いぞ?」
「どんとこーい! 私が勝ったらゾロの腹筋触らせてね」
「分かった」
「勝手におれを賭けんな。ジンベエも了承してんじゃねェ」

 いつもはゾロと勝負してるから、今日はお酒が強いというジンベエと勝負することにした。

「安心せい。わしが負けることはない」
「なんじゃとー!」
「渚、ジンベエの口調うつってるわよ。飲むのはいいけど面倒事は起こさないでよね」
「大丈夫大丈夫!」

 注文した料理が運ばれてきて、すごい勢いで皆が食べていく。

「てか渚って酔っ払うとどうなるんだ?」
「そういえばいつも最後まで起きてんな、コイツ」

 ウソップとゾロに聞かれて、うーんと考える。

「いつも酔っ払ってるけど、楽しい気分になるよ」
「酔っ払ってるようには見えねえけど」
「あんまり飲み過ぎると周りに迷惑かけちゃうんだよね。記憶なくなるし」

 赤髪海賊団の人達と飲んだ時、記憶なかったし。

「どうなるのでしょうね。ヨホホホホ」

 ジンベエと同じペースで休まずに飲み続けていたら、いつの間にか記憶がなくなっていた。

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 料理をたらふく食い、酒もたらふく飲んでいた麦わらの一味は殆どが出来上がっていた。渚もそのうちの一人であった。

「えへへへへへ、たのしーい」
「あら、酔っ払いが増えたわね」
「渚ーこっちにこいよー!」
「おー!」
「「たのしーい」」

 酔っ払った渚とウソップは一緒に変なダンスを踊っていた。

「渚ちゃんがあんなに酔うなんて珍しいな」
「そういえば渚、今日体が怠いからってエナジードリンク飲んでたぞ……」
「酒との相性が悪かったか」

「ナミー、ガルチュー」
「なんでアンタ、ミンク族の挨拶知ってるのよ!?」
「もしかしてトラ男くんのところかしら」
「あいつ、渚ちゃんにガルチューさせてたってことか!? なんて羨ましい!! 渚ちゅわーん、ガルチュー!」
「ガルチュー」
「ブホッ!?」

 鼻血を噴き出してサンジは倒れた。虚な目をした彼女は一人の男を捉えた。近づいてくる女に男は気づき、ゲッと声を出す。

「オイ、なんで近づいてくんだ」
「えへへ、きんにくー」

 彼女はゾロに手を伸ばすが、ゾロは彼女の顔を手で押し退ける。そして首根っこを掴んで自分から離した。

「あー、ゾロがいじめるー。フランキー、慰めてー」
「どんとこいってんだ」
「フランキーの筋肉かたいー。なんか違うー!」
「そりゃ改造してるからなァ! うはははっ」

 彼女と同じく酔っ払っていたフランキーは、大きな笑い声を上げながらまた酒を飲んだ。一方渚はルフィの腹筋をボーッと見ていた。

「ルフィー、筋肉触らせてー」
「あひゃひゃひゃ! お前酔っ払ってんのか?」
「酔っ払ってるのはルフィでしょー」
「おれは酔っ払ってねえ」
「私もー。一緒だねえ」
「そうだなァ!」

 二人で笑い声を上げた。ルフィの腹筋を触ろうとした彼女の手が届くことはなかった。伸ばしているはずの手が腹筋に届かず、彼女は「あれェ?」と首を傾げる。首根っこを掴んで彼女を持ち上げていたのはゾロだった。

「水飲め、酔っ払い」
「ゾロー、腹筋触らせてくれるの?」

 先程まで自分が座っていた場所に彼女を連れ戻す姿に、ロビンとブルックはニヤニヤしながら見つめていた。その視線に気づいたゾロは怪訝そうな顔をして口を開いた。

「……んだよ」
「ウフフフ。何も言ってないわよ?」
「ヨホホホホ。若いって良いですねえ」
「酔っ払い同士に好き勝手させると、何しでかすか分かったもんじゃねェからな」
「そういうことにしておきましょうか」
「だからって自分の所に連れてくるなんて」

 ゾロは二人に反論しようとしたが、渚がまた酒に手を伸ばすのが見えたので反論できなかった。酒を水にすり替えて、コップを彼女の口に押し当てた。

「お酒飲むのー!」
「いいから水飲め」
「飲んだらご褒美くれる?」
「褒美だァ?」
「くれないならお酒飲みまーす!」
「何が欲しいんだよ」
「んー? んー……」

 彼女は何が欲しいかは言わず、言われた通り水を飲んだ。何なんだと呆れたゾロは溜息を吐き、自分の上腕に彼女がしがみついているのを見て頭を掻いた。

「おい離れろ」
「上腕二頭筋最高。絶対離れないー」

 火照った頬に潤んだ瞳に上目遣い。まつ毛がしっかり上げられた大きな瞳と目が合い、ゾロはゴクリと喉を鳴らした。

「大好き」
「なッ!?」

「ゾロの、筋肉……」

 そう言って目を閉じた彼女は、すぐに寝息を立てはじめた。ゾロは頭をガシガシと掻いた後、頭を抱えて呟いた。

「……勘弁してくれ」


 終始見ていたロビンとブルックはずっと顔がニヤけていたそうな。