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医務室に足を運んだところ、チョッパーが医療の本を見ていたので、声を掛けたらいつの間にか医療の話で盛り上がった。

「すごいな渚、よく勉強したな!」
「えへへ、ローにたくさん教えてもらったの」
「そうなのか!」
「チョッパー先生の助手になれるかな」
「そんな、先生だなんて……。褒められても嬉しくねーぞコノヤロー。助手にでも何でもなりやがれ!」

チョッパーは照れながら変わった踊りをしていた。可笑しくて笑っていると、ガチャリとドアが開いてサンジが入ってきた。

「チョッパー、薬を貰いたいんだが」
「どうした、何の薬だ?」
「体調悪いの? 大丈夫?」
「おっと渚ちゃんもここにいたのか」

朝から頭がちょっと痛くて、と話すサンジにチョッパーがふむふむと頷いていた。

「渚、薬をだしてくれ」
「はい、チョッパー先生」

棚にある鎮痛薬を取ってチョッパーに渡した。嬉しそうに小さい手で受け取るチョッパーは可愛くて抱きしめたくなる。
私たちのやり取りを見ていたサンジは不思議そうな顔をした。

「渚ちゃんはチョッパーの助手になったのかい?」
「うん」
「そうだ。おれの優秀な助手だ」
「えへへ。サンジ、ベッドに座ってちょっと待っててね」
「えっ!?」

水を取りにキッチンへ向かい、すぐに医務室に戻るとどうしたら良いのか慌てた様子のサンジがいた。水が入ったコップを渡すと、レディの手を煩わせてしまったと申し訳なさそうに眉尻を下げていた。

「チョッパー先生、彼の看病をしましょう」
「おう! サンジ、薬を飲んでそこのベッドに寝てくれ」
「薬も飲んだし大丈夫だろ?」

頑なにベッドに寝ないサンジにどうしたものかと考える。
彼の横に少しスペースをあけて座った。不思議そうに私の名前を呼ぶサンジに、手招きをする。近づいた彼の頭を自分の膝の上にもっていった。

「渚ちゃん!? こここっ、これは膝枕!?」
「うん。嫌だったらやめるけど」
「嫌なわけない……! 足、痛くないかい?」
「全然大丈夫」
「ああ、ここが天国か……」

幸せだと言ってはしゃぐ彼の頭を撫でたら大人しくなって、少ししたらスースーと寝息が聞こえる。チョッパーにグーサインをしたら「流石おれの助手だ」と言われた。

すると外からチョッパーを呼ぶルフィの声が聞こえて、チョッパーは医務室から出て行った。サンジの事頼んだぞ、と言われたので勿論だと頷いた。

ふと視線を落とすと、光に反射してキラキラと輝く金髪が眩しかった。髪の毛に指を通せばさらりと指から落ちていく。綺麗な髪だな、と羨ましく思いながら彼の頭を撫でた。静かな時間が流れる。

寝顔はいつもより幼く見えて可愛くて、頬を撫でると思っていたより滑らかな肌で驚いた。そのままくるりんと巻かれた眉毛にも触れる。しばらく彼の顔や髪に触れていたら、耳が赤いことに気付いた。

彼の名前を呼ぶと、ピクリと身体が僅かに動く。

「もしかして起きてる?」
「……うん」
「ごめん、何と言うか……肌、とても綺麗だね」
「渚ちゃんの方が綺麗だよ」

ゆっくりと上体を起こしたサンジは腕を上に伸ばしていた。

「頭痛は大丈夫?」
「ああ、頭痛が治ったどころかいつもよりすっきりしてるよ。ありがとう。天にも昇るような心地だった」
「良かった」
「さて、昼飯の支度しなきゃな」
「私も手伝う」
「チョッパーの助手はいいのかい?」
「うん。今度はサンジの助手になる」
「おれの助手!? 手取り足取り教えてあげるよー!」

サンジはくるくると回りながらキッチンに向かった。ルフィ達と遊んでいるチョッパーに一声かけて、私もキッチンに向かった。

ジャガイモや人参の皮むきをしてサンジ渡す。一つ一つにお礼と誉め言葉が添えられて、なんだか気恥ずかしい。この恥ずかしさを彼にも知ってもらおうと、私も食材を渡す時に一言添えることにした。

「はい、愛のこもったジャガイモだよ」
「ありがとう。こんなに愛が詰まっていて綺麗で輝いているジャガイモは見たことがない。女神のようにやさしい心と輝くような綺麗な手が、ジャガイモをこんなに美しくさせたんだね」

言葉がより一層多くなった。彼以上の言葉を返せるわけもなく、両手を耳の横まで上げた。

「降参。サンジに勝てる気がしない」
「勝負してたのかい?」
「甘い、甘すぎるよ」
「思ったことを言ったまでさ」

「花火しようぜ!」

突然ダイニングに入ってきたウソップは、沢山の花火を抱えながらそう言った。

「花火っつったって、まだ日が落ちてねェだろ」
「夜だよ! よ・る!」
「楽しそう!」
「だろー! 皆でやろうぜ」
「おう。じゃあ祭りっぽい料理も作るか」

甲板から聞こえるのは「いいな花火!」「どんな花火があるんだ!?」「どうせなら浴衣着ましょ」「酒も用意しなきゃな」「盛り上がる曲も必要ですねェ」と盛り上がる皆の声。ダイニングのドアからナミがひょっこりと顔を出した。

「渚の浴衣もあるから、手が空いたら部屋に来てね」
「うん! あとで行く」

それから料理がある程度出来たところで女子部屋に行くと、ナミとロビンが浴衣を用意して待っててくれた。二人とも浴衣姿で、とても綺麗だ。後ろの帯をより華やかに結びなおすととても喜んでくれた。

浴衣を着てキッチンに戻り、サンジに後ろから声をかけるが返事がない。彼は浴衣姿で「うーん」と首を傾げていた。もう一度声をかけると彼は私に気付き、誉め言葉が並べられる。

「どうかした? あ、浴衣?」
「ああ。上手く着れなくて」
「私、着付けできるよ」
「ほんとかい? 渚ちゃんは器用だね」

サンジの正面に立ち、彼の胸元を整えた。素敵な胸筋を隠すのは勿体ないけど仕方ない。そして腕を回して緩んだ帯を彼の後ろで結ぶ。サンジは「えっ」と声を上げた。

「渚ちゃん、あの、さっ」
「ちょっとじっとしててね。すぐ結ぶから」
「でもこの体制……」
「ん、もうちょっと」
「渚、ちゃん」
「よし、終わったよ」

帯を結び終わって顔を上げるとサンジは何かを耐えているような顔をしていて、どうしたんだろうと首を傾げた。そういえば帯を結ぶのに夢中で気付かなかったけど、抱き着いているみたいだ。

「ごめん、近すぎたね」
「いや、いい匂いだった……じゃなくて! いやいい匂いであることは間違いないんだけど。あー、ごめん。何言ってんだか。着付けありがとう」
「ふふっ、うん」

「サンジー! めしー!」とルフィの声が聞こえる。サンジは仕方ねェなと溜息を吐いて、作った料理を甲板に運んだ。

皆でご飯を食べながら花火をする。ルフィは何本も花火を持って振り回していた。

「ルフィ、すっげー!」
「だろー!」
「チョッパー、おれの方がすごいだろ」
「ウソップもすげー!」

ウソップは頭と鼻の上に花火を立ててチョッパー達を驚かせていた。賑やかな彼らを見て自然と口角が上がっていた。

今度は打ち上げ花火をしていて空を眺める。わたあめやりんご飴もテーブルに並べられていて本当にお祭りのようだ。

「ロビン、わたあめいる?」
「いただくわ」

二階にある椅子に腰掛けていたロビンの正面に座り、わたあめを渡す。

「花火、綺麗だね。あっ、今の花火チョッパーの帽子に似てない?」
「ウフフ、そうね。似ているわ。あれはブルックかしら」
「あ、ほんとだ!」

チョッパーの帽子やブルックの顔のような花火が打ち上げられていて、ロビンと花火を指差しながら笑い合った。

次に打ち上げられた花火はグルグルと渦巻いていて、この花火のイメージはきっと……。

「「サンジ!」」
「えっ?」
「今の花火、サンジだったよね!?」
「そうね。サンジの眉にそっくりだったわ」
「ビックリした。花火のことだったんだね」

サンジが驚いた様子で二階に上がってきた。

「どうぞ麗しのレディ達。パフェをお待ちしました」
「わぁ、すごい」
「ありがとう」

テーブルにパフェが二つ置かれるが、私の前に置かれたパフェには棒が刺さっていた。ロビンのにはない。何だろうと見つめていたら、サンジはライターを取り出した。その棒に火をつけると、パフェの上に花火が咲く。

「すごい。花火パフェだ」
「今日は沢山お世話になったからね。渚ちゃんには特別に」
「いつもお世話になってるのは私の方だよ。すごく嬉しい。ありがと」
「いえいえ」

彼は皆にデザートを届けに行った。頬杖をついてパフェの上の花火を眺めていると、ロビンが優しく笑っていた。

「どうしたの? あっ、花火ロビンも欲しいよね。サンジに言ってくるよ」
「いらないわ」
「そう?」
「ええ。良かったわね、トクベツ」
「うん、とっても綺麗。サンジってオシャレなことするよね」

「貴女は、誰かの特別になりたいと思う?」
「え?」
「例えば……そうね、サンジとか」

どうしたんだろう急に。彼女の言う誰かの特別って、きっとそういうことだよね。恋愛話をしたくなったのかな。

「サンジの特別は特別じゃないよ。女の子皆に優しいし。私は……、私だけに優しくしてほしいし私以外は見てほしくない。めちゃくちゃ我儘なの」
「我儘かしら。女の子なら大抵の子は思うはずよ」
「ロビンは優しいね。それにここで……船内で恋愛ってしない方が良いでしょ」
「あら、そんな決まりはないわ」
「ロビンは気になる人がいるの?」

「いないわ」「じゃあどうして」「貴女が彼らの事をどう思っているのか知りたくて」「えー?」と会話が終わる。彼女の質問にちゃんと答えることができていただろうか。

いつの間にかパフェを食べ終わったロビンは立ち上がった。

「好きな気持ちを自覚したら隠しちゃだめよ」
「えっ」
「貴女の事だから気付けば真っ直ぐ突き進むと思うけど、仲間だから恋してはいけないと蓋をするかもしれないと思って」

皆の事は仲間として大好き。その中で誰か一人に特別な感情を持ってはいない。私が自覚していない感情をロビンが先に知っているとでも言うのだろうか。