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皆との再会を喜び、宴を楽しむ中、楽しそうに笑っている大きな人が誰なのか気になっていた。大きな牙が二本口から出ていて、人間ではない気がする。もしかして魚人族だろうか。

「ロビン、あっちに座っている方は……」
「ジンベエよ。この間仲間になったの」
「そうなんだ。もしかして魚人族?」
「ええ、よく知っているわね」
「うん、本で読んだの。じゃあ挨拶してくる!」

ジンベイと呼ばれた彼の前まで行ってぺこりと頭を下げる。座っているのにとても大きくて、圧倒されそうになるが優しそうな笑顔を見てホッと息を吐いた。

「渚と言います」
「皆から話は聞いとる。わしはジンベエ。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
「そう固くならんでもええ」
「わか……った!」
「酒は飲めるのか?」
「うん!」
「ジンベエ、そいつめちゃくちゃ飲むぞ!」

お酒の入ったコップをジンベエから受け取ると、もう顔が真っ赤で出来上がっているウソップがジンベイに絡みに行く。

「そうか! 今日は渚の会なんじゃ。うんと飲もう」
「おう、飲むぞー! 渚ももっと飲めー」
「ありがと、飲む!」

ゴクゴクとお酒を沢山飲んでいたらいつの間にかウソップは寝ていて、ジンベイと顔を見合わせて笑った。

「迎えに行かないといけない仲間がおると皆 口を揃えて言うておったが、お前さんの事だったんじゃな」
「そう……なんだ」
「大切にされとるんじゃ。自信を持て」

ジンベイに背中を叩かれると私の身体は簡単に前にふっ飛んでいき、額を地面にぶつけた。

「すまん、力加減を見誤った」
「だ、大丈夫です」

すぐにチョッパーが額に絆創膏を貼ってくれた。仕方ねえなー、と言いながらも何だか嬉しそうだった。救急箱の中に渚の額用と書かれた小さな箱が見えて驚いた。私そんなに額怪我してたかな。

「どうぞ、ベーコンのクリームパスタです」
「うわあ、サンジのご飯だ」
「他にもたくさん用意してあるよ。勿論デザートもあるから沢山食べてくれ」

お礼を言いながらパスタを口にすると、まろやかで美味しい。それに何より……温かい。

「美味しい」
「そりゃあ良かった」

久しぶりのサンジのご飯はやっぱり美味しくて、頬が落ちそうなくらいだ。彼は他の料理も取ってくるよと去っていった。入れ替わるようにやって来たのはゾロで、酒を片手に私の隣に座った。

「おう、飲んでるか」
「飲んでる! ゾロ、腹筋触らせて!」
「何でだよ」
「ハートの海賊団の皆はツナギ着てて筋肉見えなかったの」
「鼻血が出なくて良かったじゃねえか」
「ケチィ」

改めて彼の身体を見ると、ものすごく逞しくなった気がする。他の皆もだ。

「なんか、ゾロの筋肉、前とちょっと違う」
「そりゃお前がいない間、強い敵と戦ってきたんだ。……それに」

私が作った筋トレメニューを取り出して、鼻をフンと鳴らした。

「毎日こなしてたからな、このハードメニューを」
「そうなの!?」

通りで筋肉が輝いて見えるわけだ。嬉しい、と微笑むと頭をわしゃわしゃを撫でられた。何だろう、大きな手にとても安心する。私も撫で返してあげようと思って、ゾロの頭へと手を伸ばすと、手首を掴まれた。

「悪かった。おれを探しに行った時に襲われたんだろ」
「うん。でも大丈夫だったし、ゾロは悪くない」
「いや、連れ去られたのを誰も気付けなかった」
「大丈夫! 今度からはゾロにリード付けるから」
「それはやめろ」

こんなに反省しているゾロは珍しい。前に喧嘩した時以来だろうか。実際私は運が良かったのか傷一つつけられていない。自分が一人になって連れ去られたのが悪いんだ。そもそも戦闘力があれば敵だって倒せるはずだし。

私達の会話が聞こえたのか、ナミやサンジ、他の皆が集まってきた。

「ゾロを探しに行ったとき、私がついて行くべきだった」
「いや、ナミさん。おれが……」
「謝らないといけないのは私だから謝らないで! 私が一人で行動したことがいけなかったの。でも今こうやって皆が受け入れてくれたことが何より嬉しくて。だから今日はパーッと飲みたいな!」

出来れば筋肉鑑賞しながら、と付け加えると周りは呆れたように笑っていた。そして料理やらお酒やらを取りに皆が散らばる。

不意に持っていたコップが手から落ちてしまい、あっと声が出た。しかし地面から手が生えてきて私に渡してくれて、きっとこれはロビンの能力だなと彼女を見た。

「ありがと、ロビン」
「ええ。……渚」
「どうしたの?」
「貴女の帰る場所はここよ」

ドキリとして思わず息をのんだ。求めていた言葉をくれるのは嬉しくて、胸が熱くなる。顔が緩んだまま彼女の隣へ座った。

「貴女の旅を詳しく教えてくれるかしら?」
「うん!」

島で働きながら暮らしていたことやハートの海賊団で教えてもらったことやお世話になったことを話した。ロビンはたまに笑い声を漏らしながら楽しそうに聞いてくれた。


「もうこんな時間ね。私はお風呂に行ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」

いつの間にか皆酔っぱらって寝ていて、食器の片づけをしながら周りを見渡した。
宴をするといつもこうなるな、なんて笑っていたら起きていたジンベイと目が合う。

ずっと近くで私と皆とのやり取りを一部始終見てたジンベイは、声を上げて笑った。

「お前さん、愛されとるな」

異常なまでに、と語尾についていたのは聞こえなかったことにしよう。


食器の片づけを終えて寝ている皆の寝顔を見ながら甲板を歩いていたら、一人いないこと気付いた。船首に一つの影があって、声をかける。彼は腕を伸ばしてこちらに来てくれた。

「ルフィ。私、シャンクスさんに会ったよ」
「なにィ!? シャンクスに!? すっげー!」
「とっても優しい人だった。ルフィの事を話したら赤髪海賊団の人達みんな嬉しそうに聞いてくれてたの」
「そっかー。おれも会いてえな」

麦わら帽子を撫でながら優しい表情をするルフィとシャンクスさんとの表情が重なる。

「ありがと、また船に乗せてくれて」
「当たり前だ。無事でよかった」
「全然大丈夫だったよ」
「そっか、頑張ったな」
「うん。でもやっぱり…………、寂しかった、なァ」

さっき沢山泣いたのにまた涙が出そうだ。声が裏返ったから震えているのバレたかな。ルフィは何も言わず自分の麦わら帽子を私に被せた。

「ありがと、ちょっと借りるね」
「おう」

海風を浴びながらルフィと一緒に夜の海を眺めた。