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いつものようにジムで筋トレしているゾロの筋肉を眺めていた。彼が休憩に入った時にふと外の様子を見ると船が見えたのでゾロにも確認してもらうと、どうやら海賊船がこちらへ近づいてきているようだ。船内放送をして皆に呼びかけて私たちは下へ降りた。

皆が何だ何だと甲板に出てきてこっちへ向かってくる海賊船を見る。どうやら知っている海賊船ではないらしい。砲弾を撃ってきたことから敵だと認識して良さそうだ。

「なんだァ?」
「ヒィィ! 撃ってきたぞ!? どうすんだルフィ」
「迎え撃つ!」

「渚、危ないから中に入ってて」

ナミの指示に従って中に入り、窓から外の様子を見守る。皆は飛んでくる砲弾を弾き飛ばしたり切ったり蹴ったり。彼らは本当強いんだなと息を吐いた。何か私にできることがあれば良いけど。

海賊船が近づいてきて武器を持った人たちがサニー号に乗り込んでくる。中から覗いているのがバレてはいけないと思い、外を見るのをやめ床に座り込んで戦いが終わるのを待った。

叫び声、刀がぶつかる音、人が海に落ちる音、いろんな声や音が聞こえるけれど何故だか不安な気持ちにはならなかった。ルフィ達が勝つという安心感があるからだろう。早く戦いが終われば良いなと願いながら静かに待った。


「帽子が! お前らどけェェェ!」

ルフィの叫び声が聞こえて窓から再び外の様子を見ると、ルフィがいつも被っている麦わら帽子が飛んで海に落ちてしまったようだ。そういえば帽子についている紐が切れかけているって前に言ってたような気がする。敵の人数が多いから他の皆は取りにいけない。部屋を出てルフィに向かって叫んだ。

「ルフィ! 私が取ってくる」
「渚! 任せた!」

助走をつけて海に飛び込んだ。こんな深い海を泳ぐのは初めてだけど泳ぎは得意な方だと思う。何とか海の上に浮かぶ麦わら帽子を取って船に戻った。

泳ぐのに必死だったから全然気づかなかったけど、私が船に戻るまで結構時間がかかったらしい。襲ってきた海賊達は皆倒れており、戦いの後だった。

「渚、大丈夫!?」
「風邪を引くといけないからお風呂で体を温めた方が良いと思うわ」
「大丈夫。お風呂入ってくるね。……その前に」

持っていた麦わら帽子をルフィに差し出す。すると彼は背を丸めて私に頭を向けたので、麦わら帽子を彼の頭に被せた。ありがとう、とお礼を言いながら顔を上げたルフィはまるで太陽のようだった。

「この帽子はシャンクスの帽子だから。宝物なんだ」

シャンクスって誰だろうと首を傾げると、ロビンが四皇赤髪のシャンクスよ、と教えてくれた。

「四皇……。ルフィはすごい人と知り合いなんだね」
「友達なんだ」

頭の上にある麦わら帽子に手を置きながら言ったルフィの目は優しくて、シャンクスという人は優しい人なんだろうな。いつか会ってみたいと思いながらお風呂へ向かった。


********************


お風呂から上がってダイニングに行くと、サンジが冷たいドリンクを用意してくれていた。お礼を言ってカウンター席に腰を下ろす。
テーブルに置かれたメロンソーダを一口飲んで、美味しいと言うとサンジは良かったと嬉しそうに笑った。

「我儘言ってもいい?」
「ああ! 何だい? 渚ちゃんの望みなら何でも聞くよ」
「アイスのせてほしいなーなんて」
「勿論良いけど、メロンソーダの上に?」
「うん。好きなの、クリームソーダ」
「そうだったのか! 渚ちゃんの好きなものリストに追加しておくよ。冷やしておいたアイスがあるからちょっと待ってて」

彼は冷凍庫からバニラアイスを取り出してメロンソーダの上にのせてくれた。アイスとメロンソーダをスプーンですくって口に入れると、懐かしい気持ちと一緒に甘い味が口の中に広がった。

「ありがと、幸せ」
「……っ、おれも君の幸せそうな顔が見れて天にも昇る気持ちさ」

和やかな時間が流れる。一戦あったのにも関わらずサニー号の修理も終え、何事もなかったかのように平和だ。


先程の海賊から奪った宝を換金するのと食料調達のために、麦わらの一味は小さな島に上陸することになった。船を降りるとナミに腕を絡められた。

「渚、一緒に服買いに行きましょ。お金はたんまりあるし」
「私も良いの?」
「ええ。ルフィの大切なものを取りに行ってくれたのは渚だしね。あーあと、荷物持ちもいるわね。ゾロ、サンジ君、買い出し付き合ってくれる?」
「んナミさァん! 喜んでお供しまーす」
「何でおれが」
「アンタ誰かといないと必ず迷子になるでしょ。それにか弱い私達に何かあったらどうすんのよ」

か弱い?と首を傾げたゾロにナミは拳骨を振り落とした。ゾロは頭から煙を出して地面に倒れている。ナミの拳骨痛いよね分かる。
その後ゾロは何も言わずナミの後をついて行くので、大人しくついていく姿に頬が緩んだ。

それからお店を何店舗か回って、ソロとサンジの両手はナミが買ったものでいっぱいだった。次の服屋に入るときに痺れを切らしたのかゾロが口を開いた。

「おいナミ、まだ買うのか」
「あとちょっとねー。渚はまだ全然買ってないから、渚の服を今から見ようかしら」
「ほんと? ナミが選んでくれるの?」
「アンタに似合うのをしっかり選んであげるわ」
「ありがと。嬉しい」

服屋に入ってナミが何着か服を持ってきて私の前で服を合わせてくれる。彼女が選ぶ服はちょっとセクシーだけどセンスの良いものばかりだ。

「うーん、こっちの方が良いかしら」
「さっきのも良いけどこっちも良いな。渚ちゃんは何着ても似合う」
「どっちの服も可愛いなー。どうしよう」

ナミとサンジは私より真剣に服を悩んでくれていた。最終的に二着で迷っていてうーんと2人は唸った。

「このオレンジ色も似合うし青色も似合う」
「どっちも可愛いけど、どちらかと言えば渚ちゃんには青色が似合うんじゃねェか?」
「どっちかって言うならこっちのオレンジよ! 渚はどっちがいい!?」
「えーと、うーん……」

オレンジ色と青色のワンピースを目の前に差し出される。どっちも可愛いんだよなァと悩んでいると、ゾロが私の前に服を差し出した。裾が水色とエメラルドグリーンのグラデーションになっているワンピースで、海を意識したような色使いだ。

「こっちのがお前らしいだろ」
「可愛い! ゾロって服のセンス良いんだね。これにする」
「確かに渚っぽいわ。珍しいわね、ゾロが服を選ぶなんて」
「マリモのくせにやるじゃねェか」
「さっさと終わらせたいだけだ」

服を買って靴も買ってその他にもたくさん買ってもらって、ゾロとサンジは顔が見えなくなる程の荷物を持っていた。ナミは買い物に満足したようで、彼らの前に立って私に問いかける。

「どっちが沢山持てたと思う?」
「うーん、どっちも同じくらいかなァ」
「マリモよりおれの方が持ってるな」
「ふざけんな、おれのが持ってんだろ」
「渚がこう言うんだからドローってことで。じゃあ荷物船までよろしくねー」

ナミはひらひらと手を振って2人が去っていくの見ていた。彼らは大荷物を持ちながらまた喧嘩をしてる。

「私たちは戻らないの?」
「ええ。カフェでも行きましょ」
「うん! ナミとデートだね。嬉しい」
「アンタってほんと……」

彼女は途中で言うのをやめた。嫌がっている表情ではなかったので特に気にしないでおく。お店を探している途中、何やら島の人が盛り上がっていた。

「何かしら」
「ちょっと見ていこうよ」
「お宝の匂いがぷんぷんするわ」

盛り上がっている中心にはこの国の王女と複数の護衛、そして料理人らしき人たちがいた。司会者がマイクを持って叫ぶ。

「豪華賞品はこの海いちの鍛冶職人が造った料理包丁! なめらかな切れ味に料理人も驚いて腰を抜かすほどだ!」

料理包丁か、サンジが喜びそう。話を聞いていると今から料理人たちが料理対決をするらしく、この島の王女を満足させる料理を作った人が賞品をゲット出来るらしい。

「へえ、料理包丁ね」
「サンジ欲しいかな。呼んでくる!」
「はーい、行ってらっしゃい」

小さな島なのでここから船まで近い。もう船に戻っているであろうサンジを追いかけて走った。
サニー号が見えると大声でサンジを呼んだら、彼は船から顔を出した。

「どうしたんだい、そんなに慌てて」
「お願いちょっと来て欲しいの! 説明は後でするから」
「あ、ああ。勿論良いけど」

彼が船から降りるや否や彼の腕をグイッと引っ張って走り出す。うおっ、と驚いた声が聞こえたけど足を止めずに走り続けた。

さっきの場所まで戻ってくるとナミがエントリーをしてくれていて、サンジに状況を説明した。

「へえ、料理包丁か。使ってみたいもんだ……ってなーんて素敵なレディなんだ!」

王女を見て飛んで行ったサンジ。勿論護衛の人に止められていたけど、王女に愛の言葉を叫んでいる。

「料理人が集まったところで、ルールを説明します! ここにある食材どれを使っても良いので、王女へスイーツを作って下さい。ただし王女は甘いものが嫌いなので、甘くないスイーツを作りましょう!」

難しいお題だな。でもきっと彼は王女を満足させるスイーツを作るんだろうな、と思ってナミと一緒に見守った。


********************


料理対決はサンジが優勝し、王女から賞品を受け取っていた。サンジは賞品よりも王女に興味があるみたいだけど。

「ねえ貴方、私のものにならない?」
「はーい! なりまァす! 麗しきプリンセスの専属シェフにー!」

「賞品は貰ったんだから行くわよ、サンジ君」

ナミが声をかけても、サンジは姫に目をハートにさせたままでナミは溜息を吐いていた。

「渚、あのバカよろしく。先に戻ってるわ」
「ええ!?」

王女の腰に手を添えて城へ向かうサンジ。本当に行ってしまうのだろうか。彼がいなくなっては困る。大きく息を吸って小さくなっていく背中に呼びかける。

「サンジ! 戻ってきて! サンジがいないと困る。寂しいよ」

王女に腕を強く絡められたサンジはデレデレしていて、聞こえていないのかこっちを見てもくれない。何を言ったら彼は足を止めてくれるだろう、戻ってきてくれるだろう。そう考えて、一つ思い浮かんだ。

「戻ってきたらチューしてあげるー!」

大声で言うのは恥ずかしいけど仕方ない。
ピタリと足を止めたサンジにつられて王女も足を止めて、2人が振り返って私を見る。

「渚ちゃん、チューって言った? 今」

コクリと頷くと王女の手を優しく退けて、驚いた表情で此方へ歩いてくるサンジ。効果は多分あったのだろう。

「待って、キスぐらい私がしてあげるわ」
「すまねえ」

彼はどこかボーとしていて、王女に気の抜けた返事をした。私の前までゆっくり歩いてきたサンジに戻ろ、と声をかけると彼は首を縦に振った。

それからどちらも話すことなく歩き、サニー号が見えてきたころ、サンジが口を開いた。

「何か忘れてないかい?」

へらりと笑ったサンジにムッとする。簡単に女性について行こうとするんだから困る人だ。

ジャケットの下襟を両手で掴んで少し屈ませてから、彼の頬に口を寄せた。喜んでくれるかな、なんて思っていたら想像以上に彼は顔を真っ赤に染めていた。

「もう離れていかないでね」
「えっ」
「この船のコックはサンジだけなんだから」
「……ほんっと、敵わねえな」