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「はぁ…………」

昨日出会った理想の筋肉の人……スモーカーさん。忘れられない、あの筋肉。昨日から思い出しては溜息をこぼしてしまう。また、会えるかな。会いたいな。

「どうしたんだい? レディ。溜息なんて。悩みを抱えているならおれとティータイムでもどう? いちごジュースを入れてきたよ」
「うん、ありがと。ダイニング行こ」

サンジに誘われてダイニングへ向かう。階段を降りるとき、いつも彼は手を差し出してくれるので手をのせると、嬉しそう微笑む。
ダイニングのドアを開けると、ナミがいてジュースを飲んでいた。入ってきた私達に気付いてお先、とウインクをした。可愛いなと思っていたら隣にいたサンジが目をハートにして倒れた。

「ナミのウインク恐るべし……」
「何バカなこと言ってんのよ。このいちごジュース美味しいから渚も飲んだら?」
「うん、いただきます」

テーブルに置かれたジュースを飲むと、甘酸っぱくてとても美味しい。

「昨日から溜息ばっかりじゃない。何かあったの?」

ナミにそう言われてハッとする。無意識に溜息を吐いていたみたいだ。実は、と昨日あったことを話すとナミは口角を上げながら頬杖をついた。

「ふーん、そういうこと」
「頭からあの人の筋肉が離れなくて」
「渚の恋は応援したいけど、よりにもよって海軍とはねェ……」
「渚ちゃん……その、惚れたっつーのは……」

鼻血が止まったのか、サンジは空になったコップを下げる。眉を下げながら聞いてくる彼に、ナミはあっと声をもらした。

「ここでする話じゃなかったわね。場所を変えましょ」

ナミに引っ張られてダイニングを出る。チラリとキッチンに目を向けると、サンジは手をこちらに伸ばして私の名前を呼んでいた。
女部屋に入り椅子に座る。前の椅子に座ったナミは真剣な顔で口を開いた。

「話を戻すけど、理想の身体だったってだけよね?」
「うん、でも性格もとても優しい人だったよ。見た目は怖そうだけど」
「困ったわねェ。渚、悪いけど相手は海兵。私達の敵なの。協力は出来ないわ」
「そうだよね……」
「ごめんね」
「ごめん、ナミが謝ることじゃないの! またあの筋肉を拝みたいなとは思ってるけど、恋仲になりたいとかそういうのはないから!」

スモーカーさんの筋肉とお付き合いしたいとは思ったけど。それは本人に失礼な気がするし思うだけにしておこう。

ナミの言う通り、海兵は敵の存在。それに私はここでお世話になってるんだしこれ以上迷惑をかけてはいけない。
……気持ちを切り替えないと。


********************


夕食の時間になり皆がダイニングに集まる。サンジの頭にはきのこが生えてそうなくらい落ち込んでいるのがわかった。船員が誰かに惚れたとか付き合ったってなると彼は毎回こうなってしまうのだろうか。仮にナミやロビンに恋人が出来たってなると、どんなことになるんだろう。

「うめー!」
「味はいつも通り美味ェけど、見た目の色がなんか……全体的に茶色だな」
「おっ、人参がハート型に……と思ったら真ん中に亀裂が入ったハートだったぜェ。器用なことしやがる」

サンジに何かあったのかとウソップとフランキーがボソボソと話し合っていた。そこへナミが何やら話をしていて、3人の視線が私に集まる。
しかし何も言われないので気にしないで皿に盛ってあるポテトに目を向けると、不思議な形をしていて、何の形なのか首を傾げた。

「何だろう、花びらかな」
「多分、雫ね。渚、サンジくん慰めてあげて。こんな料理見てたらこっちが悲しくなるわ」
「え、うん。分かった」
「投げキッスでもしたら元気になるわよ」
「そんなのしたことないよ」

アイドルでもあるまいし。夕食を食べ終え甲板に行くと、外は日が暮れて薄暗くなっていた。

「おい、渚」
「どうしたの?」
「トレーニングメニューとか作れんのか」
「それって筋トレメニューってこと?」
「ああ」

急なことに驚きつつも、いろんなことを想像したら興奮して息が荒くなってきた。

「私が作ったメニュー通りにゾロがやってくれるの!?」

ゾロはこくりと頷いた。そんな夢みたいなことある!? というか急に何で。いやそんなこと今は何でも良い。こんなことゾロから言われるなんて無いんだから、彼の気が変わらないうちにメニューを渡さなければ。

「ちょっちょっと待ってね! 考えるから! やっぱりなしとかダメだからね。絶対ね」
「お、おう」

それから測量室で参考書を元にメニューを考えた。一般男性とは比にならない程の身体だ。メニューも常識を外れたものを作って良いはず。筋肉をバランスよく鍛えれるように考えなければ。


「出来た……!」

筋トレメニューが出来た。時計を見ると夜中の2時を過ぎていた。集中していたせいか目が冴えていて眠れそうにない。そういえばゾロは朝方に寝るって聞いたことがあるけど、まだ起きているだろうか。

暗くてよく見えないけど、甲板に人影があった。きっとゾロだろう。彼は静かに海を見つめていた。
後ろから驚かしたらどんな反応をしてくれるんだろうか、とドキドキしながら足音を立てないようにゾロに近づく。

「なんだ」
「っ!……どうして分かったの?」
「それぐれェ分かる」
「残念。驚いた顔が見たかったのに」
「そりゃ悪ィことしたな。こんな時間まで何してたんだ」
「筋トレメニュー考えてた。でもどうして急にメニュー考えてくれなんて」
「別に……。気分だ気分」
「そう。私は考えるのとっても楽しかったから良いけど」
「……」

理由を教えてくれそうにないから、それ以上は問い詰めずにメニューを渡した。夜の海は肌寒い。いつもこんな時間まで起きているのだろうか。隣に並んでゾロの顔を覗き込むと目が合った。

「寒くない? 熱燗いる?」
「そこはホットミルクとかじゃねェのか」
「ホットミルクなんかいらないって言うでしょ」
「まァな。じゃあ熱燗」
「うん、待ってて」

キッチンへ行きお酒を取り出す。勝手にお酒取ってサンジに怒られないかな、なんて思いながらお湯が沸騰するのを待った。そういえば、サンジを元気づけるようナミから言われていたんだった。何か考えておかないと。

熱燗を持ってゾロの元へ戻る。彼は芝生の上に座っていたので、隣に腰を下ろした。

「熱いから気を付けてね」
「おう。寝なくて良いのか?」
「眠くなくて。1人で飲みたかったら部屋戻るけど」
「……ここにいろ」
「うん」

それから2人で飲んで、波の音をBGMに会話したり。ゾロは私の話をうんうんと聞いてくれて、たまに馬鹿にしてきたりするけどそれもなんだか面白くて。お酒と会話を楽しんでいたら、身体が温まってきて一気に眠気が来た。

「眠くなってきた」
「おれも寝るから部屋戻れ」
「うん……」
「ここで寝んなよ」
「ん……」
「おい……ぉ、い」

瞼が重くなってゾロの声が遠く……。最後に聞こえたのは彼の大きな溜息だった。

ーーーーーーー
ーーーーー
ーー


「そろそろ朝飯の時間だ」

低い声が聞こえた。優しい声で心地良い。朝ご飯の時間らしいけどまだ瞼は開いてくれない。まだ眠っていたい。

「動くと落ちるぞ」

落ちる? 落ちるってどこに。寝返りを打つと体を支えてくれるはずのものがなくて、身体が落ちる感覚で目が覚めた。

「っ、オイ」

目の前にはゾロ。自分の顔の下には彼のふっくらした大胸筋があった。私が床に落ちる前に受け止めてくれたらしい。

「……」
「寝ぼけてんのか?」

下を向くと大胸筋……。欲望のままに胸の谷間に顔を埋めた。何これ、包まれてる。頬が気持ち良い。
彼はやめろと言って私の首根っこを掴んで持ち上げて、自分の上から退けた。

「……あれ、さっきまで天国にいたはず」
「行くぞ」

どうやらアクアリウムバーのソファで寝ていたみたいだ。昨日はお酒を飲んで甲板でそのまま寝ちゃったから、ゾロがここまで運んでくれたんだろう。彼もここで寝たのかな。……ハッ。

私襲われてない? と自分を抱きしめながら言うと、動揺したのかゾロは噎せていた。

「バカ言ってんじゃねェ」
「ふふ、昨日すっごく楽しかった。また夜中に飲もうね」
「夜中はやめろ」
「えー? 夜の海って静かで気持ちいいじゃん」
「お前無防備過ぎんだよ。男の前で寝るなんて」
「ゾロの前だけだよ」

彼は一瞬目を丸くした後、すぐに大きな溜息を吐いた。朝ご飯食べ終わったら筋トレね、とゾロに伝えてダイニングに向かった。


********************


朝食を終えて皆がダイニングから出ていく。サンジに食器洗うね、と声をかけて空になったお皿をキッチンに運んだ。

「元気ないね。大丈夫?」

手を伸ばしてサンジの頭を撫でると視線を落とした彼と目が合う。泣きそうな顔をしていた。私の名前を呼びながら目の前でバッと腕を広げられたので抱き着かれると思ったら、私の胸のあたりから手が生えた。

「えっ、手!?」
「うふふ、ダメよサンジ。それは自分のものにしてからするものよ」
「……っ! ロビンちゃん」

私の胸から生えた手はサンジの顎を押していた。うるんだ眼をしたサンジはとても可愛い。ロビンは面白そうに隣で笑っている。

「サンジ、何か心配事でもあるの?」
「ああ。レディがここから離れるんじゃないかって不安で不安で……」
「私図々しいから降りろって言われるまで降りないよ」

もう一度サンジの頭を撫でると、彼は眉尻を下げて微笑んだ。ロビンが私達を見て、貴方達ほんと可愛いわねと笑っていた。

食器を運び終えて洗っていると指にピリッと痛みが走った。泡を水で流して指を確認したら切れて血が出ていた。そういえば最近手荒れが酷いや。

「チョッパーに絆創膏貰ってくる」
「あら、怪我でもしたの?」
「手を切ったのかい!? 見せて」
「最近手が荒れてて……」
「ああ、渚ちゃんの綺麗な手が……。ごめんな、これから洗い物はおれがするから」
「ううん、私がする」
「えっ」
「渚って時々頑固になるわよね。先にチョッパーに診てもらいましょうか」

コクリと頷くと、ロビンはチョッパーを呼んでくるわとダイニングを出た。

「少しでも役に立ちたいの。だから食器洗いくらいはさせてほしい」
「でも、」
「……」
「分かった。洗剤、低刺激なものを次の島で買うよ。それまではおれがするから。ハンドクリームをプレゼントするから使って」
「うん、ありがと」

ちゅ、とリップ音を立てて彼は私の指にキスをした。サンジは王子様みたいだね、と言うと困ったように笑った。

「きみのプリンスになれるのなら喜んでなりますよ、プリンセス」

そう言って彼は私の手の甲にキスをした。



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下記、主要キャラたちの心情


夢主
スモーカーさんの筋肉とお付き合いしたいと思ってた。気持ちに諦めはついたがまた見れたらいいな〜くらいには思ってる。
2番目に好きな筋肉はゾロ。いつか筋肉を思う存分触りたいと思っている変態。今のところ弟のように見ている。
サンジは女性に優しいし女性皆に好意を向けてるから私もそのうちの1人だろうなと思っているので、特別な好意には気づかない。自分の事を褒めてくれたり丁寧に扱ってくれることは嬉しいし好き。

ゾロ
スモーカーの筋肉に惚れたとか聞こえて嫉妬して、筋トレメニューを作れとか言い出した。夢主の事は他の仲間と同じように大切にしている。でも他の奴にとられるのは嫌。自分の気持ちに気付いていない。
夢主に年下扱いされてる事が気に食わない。

サンジ
夢主がいちご好きだと思ってるからいちごのジュースやスイーツを頻繁に作るようになった。(ナミとロビンはそれに気づいている)
他のレディより夢主の事を特別扱いしてるつもり。料理の感想をいつもくれるから嬉しい。毎日のティータイムが楽しみで仕方ない。最近スキンシップが激しくなってきた。

ナミ・ロビン
ゾロとサンジが夢主に対して特別な感情を抱いているのに勘づいてる。でも協力はしない。自分たちで頑張りなさい。ただし夢主泣かせたらただじゃおかないって思ってる。

ルフィ
夢主の食べてる姿が(仲間として)好き。筋肉ばっかり言って面白いやつ。戦えないから守らないといけない。絶対戦いに巻き込んではいけないと思っている。足手纏いとは一切思っていない。
夢主の腹にグルグル腕を巻きつけて、夢主を運ぶのが気に入ってる。

ロー
夢主に一目惚れした。一目惚れなんてしたことなかったから空回りして暴言を吐いて冷たい行動をとってしまったので反省している。夢主がバイト中ずっと自分の側に置きたいと思って見てた。仲間にならないかと誘うが断られて(+自分の好意がバレて)ショックを受けた。次会ったら掻っ攫いたいと思っている。