×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -






トラ男くん率いるハートの海賊団にコビーさんヘルメッポさん、それに島の人たち。知り合いがたくさん出来たことに嬉しく感じていた。今回の島は珍しく長く滞在していたな。

ボーッと海を眺めているのは楽しい。海風に吹かれるのが気持ちよくて甲板の手すりに肘を置いて目を閉じると、突然船が大きく揺れた。
いつの間にかサニー号は変な生物に囲まれていて、皆が甲板に集まる。ルフィは目を輝かせながらコイツらを捕まえて食べると言い出した。サニー号より遥かに大きな生物にナミとウソップとチョッパーが悲鳴を上げる。

ドシンとまた船が大きく揺れた。こんなに船が揺れるのは初めてで、身体が船の外に投げ出された。えっ、と声が漏れてそこからはゆっくり時が進んだように思えた。

まずい、このままじゃ海に落ちる。それに海は今大きな生物だらけだ。大きな口は私に向かってくる。
食べられると思った時にはもう口の中だった。生物の口が閉じられる前に2つの影が海に飛び込んでくるのが見えた。

「渚!」
「渚ちゃん!」

ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー


ペチリ、頬を叩かれた。頬の痛みで目を開けると視界いっぱいにゾロがいた。ゾロって整った顔してるよなァ、とボーッとする頭で思った。

「起きたか」
「生き、てる?」
「おう」

ホッとして状況を確認すると自分はゾロの腕の中に収まっていて、目の前のものに気付き固まった。

「どうした。どこか怪我したか?」
「……目の前に上腕二頭筋が」
「頭が重症だな。後でチョッパーに診てもらうか」

額をグイッと押されて遠ざけられる。首が痛い。ゾロは女の扱いが雑だと思う。サンジの丁寧さを見習ってほしい。言ったら怒るだろうから言わないけど。

「……ごめん、私のせいで」
「別に渚のせいじゃねェ。生物はぶった斬ったがその後岩場まで流されたみたいだ。霧に覆われててサニー号も見えやしねェ」

辺りを確認すると洞窟の入り口に私たちはいるようで、海の上には霧がかかっていて遠くが見えない。

「……ウゥ」
「ッ、何の声!?」

洞窟の奥の方から小さな唸り声が聞こえて、ゾロの上腕二頭筋に手を置く。隣の緑頭は思い出したかのようにあー、と声を出した。

「そういえばぐる眉もいたな」
「えっ!? サンジ!?」

離れたところで倒れている金髪がいる。サンジに駆け寄って声をかけるが反応がない。傷はなさそうだし息はしている。気を失っているようだ。肩を叩いて呼びかける。

「サンジ、起きて!」
「……ん、渚ちゃ……いや天使!?」
「何言ってんだアホ」
「てめェも一緒か。クソマリモ」
「サンジもごめん。助けに来てくれたんだよね」
「渚ちゃん、怪我は!?」
「大丈夫だよ」
「良かった」

気を失う前に見た2つのシルエットは彼等だったらしい。改めて2人にお礼を言って、洞窟の奥を見た。

「どうしよう。2人とも電伝虫持ってたりする?」
「持ってねえな」
「すまねェ。あるのは煙草とライターだけだ」

ゾロは大きな岩にもたれて目を閉じ、サンジは煙草に火をつけた。

「ゾロ寝るの?」
「ルフィたちがここに来るのを待つしかねェだろ。体力温存してろ」
「体力温存って言っても服濡れてるし寒いでしょ」
「寒くねェ」

筋肉量が多いと体温高いしなァ。筋肉に包まれて温まりたい。

「渚ちゃん、身体冷えてねェか?」
「ちょっとだけ。何か燃やせる物探してくる」
「おれも行くよ」

ゾロは寝ているようだからサンジと洞窟の奥へと行く。迷子になっちゃダメだよ、といつも勝手に何処かへ行く緑頭に言うとキレられた。こわい。


奥へ進むと薄暗くて少し離れたらサンジと逸れてしまいそうだ。足元に散らばっていたごみの中から、長い木の棒と紐を探してたいまつのようなものを作る。

「サンジ、ライター貸してほしい」
「これで良いかい? おれが持つよ」

火のついたたいまつをサンジに任せて、薄暗い洞窟を歩く。木の枝を拾いながら進むと、足首まで水が浸かってきて歩きにくいし身体が冷える。

「渚ちゃん、この木の板なんてどうだい? 短い枝を拾うより大きいの持ってアイツに斬らせれば良いんじゃねェかな」
「なるほど」

来た道へ戻ろうとすると、突然バザバサと音がして頭上を無数の何かが通っていく。驚いてつい悲鳴を上げてしまった。怖がってるレディも可愛いねとサンジに肩を抱かれる。身体が温まるからそのままで良いか。彼は嫌がる事はしないだろうし。

「今のは……」
「コウモリの群れが飛んでいったみたいだ」

「エロコックに襲われたのか!?」

刀を持ってゾロが走って来た。あまり見ない必死な顔に思わずふき出してしまう。

「襲われてないよ。コウモリにびっくりしちゃって」
「変な妄想すんな、エロマリモ」
「んだと!?」

喧嘩が始まりそうだったので、サンジが持っていた木の板をゾロに渡して後で細かくしてほしいことを伝えた。

「おい妄想野郎、レディから離れろ。何するか分かったもんじゃねェ。渚ちゃん、あいつのことは気にせず戻ろう」
「でもゾロ、方向音痴だから1人じゃ一生出れないよ。ここまで一本道じゃなかったし。でもここに来れたのは凄いや」
「それもそうだな。3メートルあけて後ろ着いてこい、クソ迷子野郎」
「1人で戻れるわ!」

ゾロは1人で歩いて行くので声をかけるが、拗ねているのか聞こえないふりをして歩き続ける。サンジはやれやれと溜め息を吐いて煙草を取り出した。

駆け寄って彼の腕を掴んでも止めることができず歩き続けるので、腕を絡めて引っ張った。そうすれば彼の肩がビクッと上がり、足を止める。

「おい! 離せ!」
「3人でここから出るの。ゾロがいなかったら困る」
「おまっ……だァーーー! 分かった分かった! ついていくから離せ!」
「もう、最初から素直にしてれば良いのに」
「何て羨まし……じゃなかった。てめェレディを傷つけるんじゃねェ!」
「うるせェ腕振り払っただけだろうが。……行くぞ」
「そっち逆方向だけど洞窟の奥に行くの?」
「……」

それから元いた場所に戻ると、ゾロは文句を言いながら木の板を細かく斬ってくれた。そしてライターで火をつけて焚き火が出来た。あたたかい。

「まだ少し濡れてて気持ち悪いかもしれねェが、これ羽織っててくれ。風邪でも引いちゃ大変だ」
「えっ、ありがと。サンジ寒いでしょ」

ふわりとスーツのジャケットを肩にかけられる。冷えた身体が温まるのを感じた。

「俺はもう一枚着てるから平気さ。……あァ、でもちょっと冷えるからもっと近くに来て腕を絡めてくれねェかな」
「鼻血出てるのは大丈夫?」
「下心丸見えなんだよてめェは!」

サンジの頭をゾロが拳骨を入れ、サンジは大きなタンコブを作った。

「ゾロ、殴っちゃダメでしょ」
「ガキ扱いすんじゃねェ」
「サンジ大丈夫?」

たんこぶを作って倒れているサンジの頭を撫でると、女神だと叫びながらお腹に抱き着かれた。

それからどれくらい経ったのか、服も乾いて身体が温まってきた。ゾロが刀を使って霧を吹き飛ばしたり、サンジが空中を歩いても近くに船は見当たらなかった。

「もう一度洞窟の奥行ってみねェか? 上から見たらここ、一つの島っぽいんだ」
「うん行こう。もしかしたら何処かに繋がってるかもしれないしね」
「おい待て。万が一、洞窟ん中で閉じ込められたらどうすんだよ」
「んー、2人がいるから大丈夫」

二本指を立てて笑うと、彼等は黙った。1人は溜息を吐き、もう1人は嬉しそうに口角を上げた。

「あのなァ……」
「もッッちろん! 渚ちゃんはおれが守るからねー!」

たいまつを持って洞窟の奥に進む。脹脛が痛くなるほど歩いたところで、前に光が見えてきた。

「出口かな……ハァ、ごめんちょっとだけ休ませて」
「数時間歩きっぱなしだったからね」
「体力ねェなお前」
「か弱いレディとテメェを一緒にするな。渚ちゃん、おぶろうか?」
「ちょっと休んだら大丈夫」

息を吐いて大きめの岩に腰を下ろすと、足の裏がジンジンと熱くなっていて、膝は震えていた。下半身の筋肉鍛えないとな。


それから少しして洞窟の出口を出ると、街が広がっていた。街の人に電伝虫を借りてナミ達と連絡を取り、この島に来てもらうことになった。

「サンジ、ジャケットありがと」
「もう大丈夫かい?」
「うん。……あ、汚れてるかもしれないから洗って返すね」
「そのままで大丈夫さ」
「そう?」

私の匂いがジャケットについていたみたいで、サンジはジャケットに腕を通した瞬間、私に包まれているかのようだと喜んでいた。臭くないなら良いけどちょっと恥ずかしい。

海岸で待っているとサニー号が見えてきて、皆が船から降りてきた。

「渚! 心配したわ。怪我してない?」
「うん。何ともないよ」
「ナミさーーん! おれの心配は!?」
「サンジくんは頑丈でしょ」

「お前ら無事だと思ってたけど無事でよかったぜ! ロビンが3人とも魚に食われたんじゃねえかって言うしよー」
「たとえ話よ」

ナミやウソップが心配してくれる中、ジーと私たち3人を見つめるルフィ。どうしたのか尋ねても黙ったままだ。暫く私たちを見た後、彼はニシシと歯を見せて笑った。

「大丈夫そうだな!」
「たりめェだ」
「よーし、飯食って出航だー!」

折角上陸したんだしご飯を食べて行こうということで、食事処を探す。ルフィは美味しい肉が沢山置いてある所がいいと言っていた。

街は人で溢れかえっていて疲れた足では皆に追いつくことができず、人混みに揉まれてしまった。

「あっ、皆待って……」

あっという間に彼らの姿は見えなくなり、はぐれてしまった。いつも迷惑かけっぱなしだと思うけど、今日は特に迷惑をかけすぎている。

えっと、迷子になったときは警察……はいないんだった。ここでは海軍……はルフィ達の敵だった。どうすれば良いんだろう。

考えながら歩いていたら目の前の壁に気付かずぶつかってしまった。しかし何故か壁は後ろに下がる。何故だろうと顔を上げると男性と目が合った。

「すみません!」
「あァ、悪ィな」

ぶつかったのは壁ではなく男性で、2本の葉巻を口に咥えていてモクモクと煙を出していた。しかしそれよりも、上着の前が開いていてインナーを着ていない。つまり胸筋や腹筋が丸見えなのだが……。

なななっ! なんて素敵な筋肉!! 胸鎖乳突筋、大胸筋、腹直筋、前鋸筋、外腹斜筋……全てにおいて私の理想の筋肉すぎる。どうしよう、興奮して息が上がってきた。ずっと見ていたい、許してもらえるのなら触ってみたい。抱きつきたい。
というか今私この素晴らしい筋肉にぶつかったよね!? 硬くて壁かと思ったけど、私の頭を跳ね返す弾力もあって、思い出すだけで鼻血が……。

「オイ、体調が悪いのか?」
「えっ!? 大丈夫です! ちょっと道に迷ってしまっただけなので」
「家の場所を言え。部下に案内させる」

筋肉が素晴らしい上に性格まで優しいなんて。でも家なんてないしこの島の人間でもない。旅行中で友人と近くの肉の美味しい食事処で待ち合わせをしていることを伝え、そこまで案内してもらうことになった。きっと食事処に行けばそのうちルフィが来るだろうと踏んで。

「少し待ってろ」
「はい!」

電伝虫で彼は部下にここへ来るように指示を出していた。部下がいるってことは、上の地位の人なんだろうなァ。待っている間、少し話をしても良いだろうか。

「あの、何のお仕事されてるんですか?」

本当はどうやってそんな素敵な筋肉に仕上げたのですか、って聞きたいけど我慢だ。折角理想の筋肉の人に出会えたんだ。少しずつ距離を縮めたい。

「海兵だ」
「えっ!? か、海軍!?」

彼の上着の背中を確認すると、正義という文字。ルフィ達と鉢合わせになってはいけない。……もしかしたらコビーさんみたいに友達かも、なんて思ったけど多分コビーさんが特殊なだけだとその考えは捨てた。

「海軍で何か問題か?」
「いいえ、通りで良い体つきだと思って」
「あ?」
「あの、ご結婚は?」
「そんなこと今関係ねェだ、ろ……」

貴方に興味津々なんです。どうか教えてください。
うんと目を輝かせて彼を見ると、彼は気まずそうに目を逸らした。

「……してねェ」
「じゃあ今お付き合いされてる方はいるんですか?」
「……色恋にかまける暇はねェ」
「仕事熱心な方なんですね! 素敵です」

今お相手がいないってことは立候補しても良いと言うことでは!? いやいやでもこの人は海軍。この人と一緒にいてはいけない。ああでも素敵な筋肉……。

「スモーカー中将、お待たせしました」
「たしぎ、道案内だ。近くの肉の置いてある飯屋まで」
「はい! 近くの肉の置いてある……ってたくさんありますよ!?」
「あァ、一番大きいところを探せ」
「すみません、ご迷惑を」
「いえいえ、仕事ですから! 少し待って下さいね」

たしぎと呼ばれた女性は眼鏡をクイっと上げながら、地図を広げた。優しい人だ。
それにしても部下としてこんなに素敵な筋肉を近くで拝めるなんて羨ましい。男性はスモーカーさんと言うらしい。中将ってコビーさん達より上の位では……。

「恐らくここが一番大きな食事処ですね。お肉もたくさん置いてあると思いますよ」

たしぎさんが地図の一部を指差し、そこへ向かう2人の後を追う。

どうしよう。ルフィ達が負けるなんてことはないのは分かってるんだけど、強い敵に会わせるわけにはいかない。食事処まで案内してもらった後、すぐに去ってもらおう。とっても失礼だけど。

そう思っていたら、お腹に覚えのある何かが巻き付いて……グンッと勢いよく引っ張られた。瞬きしたらルフィが目の前にいた。

「る、ルフィ……?」
「ケムリンと一緒だったのか?」
「けむりん? えっと、皆と逸れちゃったから、あの海兵さん達に近くの食事処まで案内してもらってて。ダメだった?」
「いや、ケムリン良い奴だしなー。見つかると追いかけてくるし、早く船に戻るぞ」
「うん。ありがと、見つけてくれて」
「いつの間にかいねェからびびったぞ」
「たくさん歩いたから、足が疲れちゃって追いつけなくて」
「そういやサンジがいっぱい歩いたって言ってたな。じゃあ船までこのまま行くか」

ルフィに脇の下で抱えてもらいながらサニー号へと飛んでいく。移動速度が速すぎて絶叫系のアトラクションに乗ってる気分だ。


ーースモーカーさんの筋肉、また拝みたいな。