06

 覚めなきゃ『夢』じゃない。
 覚めない夢は、『夢』じゃない。



 そんなこと 解ってる。



「あー。心配しなくてもちゃんと送ってやっから。───で、アンタ家どこだよ?」

 ……東京。

「トウキョー?」

 何処?と、彼は怪訝な顔をする。

 私はいよいよ発狂してしまいそうだ。笑い飛ばせば目は覚める? それとも、大声で泣きじゃくればいいの?


 分からない。

 『夢』の 覚まし方が。


「……かえして 早く、」

 私を帰して。
 正しい私を返して。



「ここ、どこなの……」



 私が呟くと、彼は、急に目を丸くして、いかにも「仰天してます」という表情で

「まさか、アンタ、」





 ───地球≠フ人?





 と 問うた。



 「地球の人」でなければ、ほかに「何の人」があるの?───火星の人? 木星の人?
 つまり、宇宙人ですか?って言いたいの?


 だったらあなたは
 「地球の人」ではないの?



「……此処は、本当に、」



 ───私の知らないセカイだと言うの?



「……オイオイ、マジかよ」

 少年は血相を変えて私に近寄り、私に触れようとして───やめた。

 不安と恐怖が、私の心を完全に支配した瞬間だった。

「本当に、地球の……」

 ───頬を伝う涙は確かにあたたかく、ほんの少し、しょっぱい。

 これを現実でないと疑うならば、それは、間違いだ。






  
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