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数分後、龍の無線機が警告音みたいにやかましい音を響かせた。タワーからだった。タワーは龍に「砂里事件の帰還者として、健康診断を受けてほしい」とのことだ。
「なんで俺が」
龍は不服そうに顔を顰める。しかし無線機は彼の返答も待たず無愛想にブツリと切れた。
「オメーは砂里でヤられちまったことになってるンだから、当然だろ」
そう言われて、龍は余計に不機嫌そうになった。眉間に皺が深く刻まれる。けれど、不満なのも無理はない。彼は、成り行きとはいえ、私の所為で戦いに敗れたことになってしまったのだから。
「タワーは君を調べてどうのこうのってわけじゃなく、単に君の身体を心配してるだけだよ。でなければ科学局≠ノ来いって言うはずさ」
迅が言うと、龍の眉間の皺はちょっとマシになった。
「お、そうだ。医療棟に行くなら、学(ガク)に直接頼めよ。アイツには琉奈を拾ったこと、もう伝えてあるから、話は早ェと思うぜ」
「そうだね、学なら僕らの味方になってくれるだろうし」
龍は小さく舌打ちをして、渋々立ち上がった。「面倒くせえな」という声が聞こえてきそうで、私は心臓が締め付けられるような罪悪感に苛まれた。何せ、彼らの面倒事の原因は全て私の所為なのだ。迅や秋も、本当は面倒臭いと思っているに決まっている。ただ私の手前、言わないだけで。
「………………」
私は背中を見送った。彼は迅の「いってらっしゃい」という言葉に、ひらりと右手を挙げるだけで、地上へ続く暗い階段へと消えてくのだった。
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