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 任務はものの数十分で片付いた。諸々の手続きのため、タワーへ向かわねばならない。異界からの客人≠フことが心配だったので後回しにしても良かったのだが、そうはせず、迅は急ぎタワーを目指した。

 彼は客人≠ェ、未だタワーに認知されていないことなど百も承知であった。もしタワーが直々に〈異界人を保護せよ〉と命を下すならば、もっと正式な通達があって然るべきだ。しかし件の客人≠ノはそれが無かった。秋がどこからともなく連れてきたのだ。

 ―――事を理解するのにたいした時間は要らなかった。客人≠引き連れた秋の表情は明らかにいつもと違ったし、迅も、秋のその行動は正しい判断だったと考えている。
 勿論タワーは敵ではないが、タワーが客人≠敵≠ニ見做さない可能性が無いとは言えないからだ。そうでなくとも、何故客人≠ェやって来るに至ったのか、どのようにしてやって来たのかなどを追及したがる可能性は大いにある。何せ六人目≠セ。いい加減その謎を解き明かさなければ、と、〈頭脳派〉あたりは躍起になっているだろう。
 しかも、前例≠フ五人はもう誰一人残っていないのだから―――。

 畢竟するに、秋も迅も、そこいらのくだらない護豪業人やアブなっかしい研究員に任せるよりは、自分たちで客人≠保護したほうが賢明なのではないかと判断したということだ。


 だが、いつまでもそのままではいられない。タワーのサポートがなければ何かと厄介な面も出てくるだろうし、そもそもこれは護豪業人としての規定違反である。本来であれば、秋は、琉奈を見付けて「この少女は地球人だ」と認識した時点で、タワーに報告しなければならなかった。そういう義務≠ェあった。
 にもかかわらずそれを怠った秋は少なくとも叱責を受けるだろうし、ともすれば裁判にかけられ職を失うやもしれない。秋だけではない。迅も龍も、共犯と見做され罰せられてしまう。


 それを避けるための手をあれやこれやと考えていると、タワーに到着していた。そろそろ賑やかになり出す歓楽街を突っ切っていたことにも気付かないほど、迅の頭はこの先のことでいっぱいだった。







  
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