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「───…………」
何もかもがそっくりだった。
目が離せない、とは、こういうことだ。今一度、心臓が宙返りを始めたよう。鼓動に皮膚を貫かれそうな、この緊張感。
威圧的とも取れる冷たい眼。一瞬、その鋭い眼差しに射抜かれたかと思うと、彼は何も言わずに目を逸らした。そしてそのまま私の横をすっと横切る。私のことなんか、まるで気にも留めていない。
「……テメエは碌な仕事を回さねえな、秋」
私だけだ。
私だけが、心を乱している。
「あァ? なんでだよ。なんてことねェ任務だったろ?」
だって、いま初めて実感したもの。───私、ずいぶん遠い所へ来てしまった、って。
そう思ったら、途端に涙腺が綻んで、涙がこぼれそうになった。非現実と現実の狭間をうろうろと、いったい私は何をしているんだろう、って。
「まあまあ、仕事の話はあとにしよう。やっとみんな揃ったんだし、改めて自己紹介しないとね」
迅がそう言うと、秋が何か駄々を捏ねたが、聞き逃した。
私だけだ。
私だけが、心を乱している。
そんなこと、
だれも気付きやしない。
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