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 田の字の窓から差し込む光は、次第に弱々しくなってきた。時刻は午後五時を回ったところだ。

「琉奈は偉いね」

 呆と外を眺める私に、迅はにっこり微笑みながら言う。

「この世界のことを話したら、きっと混乱しちゃうだろうなって思った」

 私はかぶりを振った。

「混乱 してるよ。表情に出ないだけで……」

 昔からそう。
 感情が表に出ない所為で、冷たい人だとよく言われた。他人に愛想を振り撒くのが苦手で、人前で泣くのが恥ずかしくて。

 ───だから、迅のように温かい人が、本当に、羨ましい。



「琉奈は龍に似てる」



 ふふと笑って、彼は言った。

「龍……?」

「僕らの仲間だよ。僕や秋よりもずっと大人びていて、常に冷静で。口数は少ないんだけど、他人想いで、意志が強くて」

 それを聞いて、私はある一人の男を想起した。───その彼は、私にとってとても大切な人である。

「秋もね、ほんとはいい奴なんだよ。素直じゃないから、誤解されがちだけど。根はすごく正直で、真っ直ぐで、熱くて」

 まるで護豪業人≠フ代名詞のような人間だ と、迅は秋をそんなふうに評価した。


 けれど、
 私が評価したいのは───



「他人の良いところをたくさん知ってるのは、優しい人の証だと、私は思うよ」






 迅は 今までで 一番 綺麗に 微笑んだ。






  
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