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「タワーに報告しないとなると、何かと不自由なこともあるかも知れないぞ」
学は報告しない≠アとに反対しているのではない。これは単なる「確認」だ。秋もそんなことは理解している。
「だからあんたに言ったんだ、学。あんたならタワーでもそこそこ顔が利くだろ? いざって時は頼むぜ」
秋がにやりと笑うと、学は懈げに頬杖をついた。
「野郎の手助けなんざするか」
医者にあるまじき発言だ。
が、秋は間髪入れずに切り返す。
「拾ったのは女だよ」
琉奈、って名前だ。
───と。
「へえ……。女の地球人は初めてだな。幾つだ?」
「オレと同じぐれェかな。十七・八ってとこ」
「……美人か?」
「美人っちゃ美人だけど。性格キツそうな感じだった」
と、答えて、秋は慌てて「狙うなよ」と付け足した。
何しろ、「美人か」と訊いた学の眼がなんともいやらしく光っていたからである。さっきの懈げな表情はどこへやら。
「女の子なら、なおさらタワーには報告しねえほうがいいな」
「……なんでだよ」
「決まってるだろう。
お前のチームはお年頃≠ナサカリのついた野郎ばっかりじゃねえか」
「あんたが言うか」
「そんな精子くせえ所で可愛い女の子の世話なんざ、タワーが許可するとは思えねえ」
「……精子くせえ言うな」
「だったら、このまま持ち逃げ≠キるのが賢明かもな」
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