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 医療棟はタワーの真横に寄り添うようにして建っている。首都栄泉の中では、タワー・中央ビルに次いで三番目に大きな建物だ。
 ここを拠点としているのが〈医療派〉と呼ばれる連中であるわけだが───確か、医療派のトップは女だと聞いたことがある。
 まあ、オレはそもそもこちらには殆ど世話にならないので、医療派の顔見知りなんてごく僅かだ。


「地球人?」


 そのごく僅か≠ネ知人であるこの男に、砂里であった出来事の全てを話した。大の女好きだということを除けば、学はなかなか信用のおける人物なのである。

「そうらしい」

 正直、オレだって混乱している。異界の女なんて、どう扱えばいいのか分からない。敵ではないのだろうが、味方でもない───かも知れない。

「…………またか」

 しかし、学は存外落ち着いた声で返答した。何故なら───



「六人目、だな」



 学にとっては、これが初めての事例ではないからだ。

「……今は迅に任せてる。タワーにはまだ報告してない」

「………………」

 学は険しい表情で口元に指を当てがった。これは、思考する時のこいつの癖だ。凛々しいと言やあ凛々しい。だから引っ掛かるオンナも多いんだろう。───いや、んなこたぁどうでもいいんだ。

「……お前は、このままタワーに言わないつもりか?」

 異界の人間は発見次第タワーに報告しなければならない。───一人目≠フ地球人が発見された時にできた掟である。

 先例≠フ五人の内、初めの四人は一時的にタワーに保護されていた。特定の護豪業人ではなく、タワーの「管理下」に置かれたのだ。



 ───その四人は、ひと月もしないうちに、死んだ。





 そして、五人目≠ヘ───







  
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