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「学に用事、ねぇ……」

 学というのは、医療派の中でも第一救護部隊≠フ隊長を務めるエリート殿である。と言っても、歳は弱冠二十五やそこらで、おまけに極度の女ったらしときてる。
 だもんで、部下や患者には慕われているものの、他の部隊の隊長殿からは痛々しい軽蔑の眼差しを浴びている男だ。
 しかし、実際は確実に「デキる男」なので、部外者のオレからしてみればそんなの「嫉妬」以外の何物でもない。

 それに、第一救護部隊は他の部隊とはちょいと違う。───何が違うかというと、第一部隊には、かなりの「腕っ節自慢」が揃ってるってことだ。要は、他の救護部隊なんかより、強い≠フである。そんなの医療に関係ない、と思うかも知れないが、それは大間違いだ。救護部隊は護豪業人の要請があって動くものなので、仕事場がいつも「屋根の下」とは限らない。戦場でくたばりかけた戦士が緊急要請を求めてきたら、そこへ走るのは救護部隊だ。そして、言わずもがな、外には幽云がウヨウヨ居る。───他人の救助云々の前に、まずテメエ自身の命を守れなければ元も子もない。
 「動けるデブ」ならぬ「戦える医者」───それが第一救護部隊≠ナある。

 だが誤解してもらっちゃ困るのは、奴らはあくまで〈医療派〉で、オレたち〈戦闘派〉ほどの力は無いってこと。戦闘派から医療派に転属する人間も時折居るらしいが、今の救護部隊にその例を聞いたことはない。
 だから、「第一救護部隊は強い」と言っても、所詮戦いの真似事───オレたちにゃ敵わないんだからな。


「おめェもたまには戦っとかねェと、細胞が腐っちまうぜ」


 そう吐き捨てて、オレは医療棟へ続く渡り廊下に向かって一歩を踏んだ。

 耀は、何も応えなかった。






  
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