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田の字の窓の向こうで、木の葉がざわめいた。震え上がってそこから逃げ出そうとしているみたいだった。
私も、少し戦慄いた。
それに気付いたのか、迅ははっと表情を戻して「護豪業人の話だったね」と、図らずも脱線した趣旨に再び焦点を当てた。
「えっと。……幹部が居る居ないの話をしてたんだよね」
(恐らく話すべきことが有りすぎて)次の話題を選り悩んでいる彼に、私はひとつ尋ねてみる。
「護豪業人って、職業≠ネのよね。ってことは、お金が出るの?」
いやらしい意味じゃない。
ボランティアなら、「英雄」という言葉に更に磨きがかかったんだろうけど───そんなわけでもないらしい。
「うん、出るよ」
「でも、政府はお金なんて出してくれないんじゃない?」
英雄を殺してしまうほどなのだから。
「タワーが出すんだ。ここだけの話、中央ビルよりタワーのほうが何十倍もお金持ちだからね。でも、それは給料≠ニいうより賞金>氛氛氓ィ金が入る日や額は決まってなくて、幽云を斃すごとに、それに見合った額が貰えるの。護豪業人には階級制度≠ェあるけれど、階級によって賞金の額が変わることはないね」
英雄に、階級だなんて。
「階級と言っても、誰より誰が偉い、とかはなくて、『どれだけの範囲を護れるか』ってことなんだ。それは各護豪業人の強さと実績によって、タワーが判断する。
例えば、一つの街≠護ることを命じられている護豪業人もいるし、一つの区域≠護れと云われている護豪業人もいる。街≠ェ最小の単位で、最大は、ゼンブ=v
……ゼンブ?
あまりにも迅がさらりと言い流してしまったので、私は危うく聞き逃すところだった。
「ゼンブ って、」
全部=H
「そうだよ、全部分布≠ヘこの国の北から南まで、或いは西から東まで、全部さ」
それって、
「すっごく強い ってこと?」
迅は、くすりと笑った。
「全域担当の護豪業人のことをスキルドマスター≠ニ言ってね、たくさんいる護豪業人の中でも、数えるほどしかいないんだ。だから、うん───」
強いと思うよ。
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