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 タワーの自動扉は、機械らしい音と共に秋を出迎えた。その奥には更にもう一枚自動扉があるのだが、こちらは外側の一枚よりも頑丈な造りになっている。

「こっち見ンな」

 扉と扉とのインターバルにはカメラが四隅に一つずつ。秋が歩くと、それ客人だと言わんばかりに四つのレンズが同時に彼を追い掛ける。
 タワーには無数の監視カメラ≠ェ備わっているのだが、その殆どが機能を成していない───カメラが映し出すものなんか誰も見ちゃいない───ということを、秋は知っている。カメラたちがこうしてせっせと仕事をしても、肝心の人間が見ていないのでは意味が無い。
 そんなことを考えると、秋は、ジロジロとこちらを凝視するカメラたちにもささやかな憐憫を覚えるので、ついなんだかんだと言葉を掛けてしまうのだ。勿論、返事など無いと分かっているが。

「きゃっ。あなたみたいなイカしたお兄さん、見ずにはいられなーい!」

 ふざけた声がした。
 明らかに、声変わりの済んだ男が出す「女の声」だ。

 しかも、真後ろから。

「お兄さんこっち見てー!」

 言われた通り、秋は振り返って、ついでに拳を入れてやろうと思ったが───間一髪、ひらりと避けられた。

「いやん。お兄さんったら危ない」

 知り合いだった。
 同業者である。

 名前は───

「耀(ヨウ)……、てめェは相変わらず暇そうだな オイ」

 その痩躯は、一丁前に刀を提げている。

「ま、俺の所は平和だから」

「何が平和だ。タワーが放つ電波で幽云がこの辺りに寄り付かねェだけだろ」

「ああ、バレた?
 お前らは大変だな、あっちこっち呼び出されてよ」

 『お前ら』と口にして思い出したのか、耀は「そういえば」と言いながら自分の背後に向けて親指を立てた。

「さっきそこで龍(リュウ)に遭った。任務だって。───お前はこんなとこで何してんだ?」

 まるで「仕事をさぼって遊んでるのか」とでも言うかのような口振りに、秋は「オレだってちゃんと仕事してら」と拗ねたみたいに踵を返した。





  
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