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どんな出来事も、宇宙の壮大さに比べれば、なんてことはない些末なもので。私という存在も、私の過去も、私の未来も。取るに足りない宇宙の構成要素のひとつ。それはまた、あなたも彼も皆平等に。
「この世界の名は、〈楼蕊(ロウズイ)〉」
聞き慣れない名前の世界≠セって、構成要素に含まれるのだ。
「君の居た〈地球〉とは、全く異なる世界だ」
亜空間。
異次元。
異世界。
どれでもいい。私は自分の目で見たものしか信じない主義だから。ここまでまざまざと見せつけられて、拒絶する意味も、跳ね返す言葉も無いでしょう。
「この世界では、君の居たセカイの文化や法則は通用しない。───それをまず、理解して欲しい」
例えばワケの分からない生命体に襲われたり?
例えば銃刀法違反≠フ少年に救われたり?
「次に、この世界には大まかに分けて三つの存在がある」
───〈人間〉と、
〈護豪業人〉、
そして〈幽云〉だ。
迅は親指と人差し指と中指を立てて見せた。角度によっちゃフレミングの法則≠ノ見えるかもしれない。
「幽云はこの世界のどこにでも居る、言うなれば妖魔。彼らは人間に危害を加える存在で、共存は不可能と言われてる。しかも幽云はそこらの獣と違って、普通の人間じゃ歯が立たないんだ。屈強な男の中には幽云退治を生業としていた人も居たんだけど、それでもやられちゃうことが多かった」
言いながら、彼は眉をハの字にして親指を折り曲げた。どうやら親指=人間らしい。
「けれど、そんな中に、他とは比べものにならないほど強い男が居た。
その男は豪(ゴウ)といって、この国では英雄≠ニ崇められてたんだけど───豪の強さには秘密があった」
と、迅は中指に触れる。
「豪の強さは人間離れしていた───何故なら、彼は〈人間〉ではなくなっていたから」
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