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アジトと言うと、どこか聞こえが悪いのは私だけだろうか。何か、こう、地下組織の塒のように聞こえるのだ。
───が、彼らのアジト≠ヘそんな黒さを帯びてなどいなかった。
「ここに居りゃあ、その辺に居るよりはよっぽど安全だぜ」
辿り着いたその場所にあったのは、くすんだ赤煉瓦に囲まれた一軒の小屋。広さはおよそ十二畳といったところ。……アジト≠ニ呼ぶにはあまりに窮屈だ。しかも、家具などは木製の机と椅子だけで、それ以外には「何も無い」と言っても過言ではなかった。唯一、「田」の字の窓には生活感が感じられる。陽の光がなくどんよりとしていたならば、或いは確かに隠れ家≠ニ言えたかもしれない。
「これのどこが安全───」
「ま、テキトーに座って」
彼は私の言葉を(明らかに故意に)遮って、ぞんざいなジェントルマンみたいに促した。そしてまた無線機を取り出し、手早く操作する。
今回は、繋がったらしい。
側部のランプが点滅すると同時に、ザザザ、と雑音がして、
『なぁに、秋』
───と、そんな声が聞こえてきた。
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