俺より高い目線、俺より長い足、俺より大きい手。
「、、、一体何なのだよ、高尾。」
俺とこの男、
キセキの世代と呼ばれるバスケットボールプレイヤー、
緑間真太郎の目線が等しくなるときは、
緑間が座っている時と、2人で寝転んでいる時くらいだ。
俺が先に階段をのぼっていたりすると等しくなることはあるけど、
基本的に並んで歩いているからあまりない。
「高尾。」
そんなことを悶々と考えていたら
「あ、ごめんごめん。」
苛立ちを含んだ声に引っ張られ、我に返った。
「まったく、お前と言う奴は、自ら誘っておきながら、」
何も言わず人の顔を凝視するなど云々
エース様はぐちぐちと溢し続ける。
「わぁるかったって、ね、」
呆れたような視線はやっぱり上から降ってくる。
「で、お前は一体ここで何をしたいのだよ。」
ひとつ溜息をついて辺りを見回してから俺に視線を戻してそう問うた。
ここ、というのは今俺と真ちゃんがいる公園のことで、
俺たちの通学路の途中にある結構大きな公園だ。
今は2人でブランコに座っている。
「んー、何をしたいって言うか、なんにもしたくないからここに来たの。」
「なんだそれは。」
俺の答えに怪訝な顔で返す真ちゃん。
「んー、なんていうかさ、」
ここ2週間、休む間もなく部活に打ち込んで来た。
それこそ、1日の半分はボールを触っていたと思うほどには練習三昧だった。
別に不満はない。
練習は辛いが、自分が好きなことをしているのだから楽しさも大いにある。
それに、練習中にふと自覚する上達は、一度知ってしまうと癖になる。
ただ、
「ただ、何も考えなくていい、真ちゃんと過ごすだけの時間が欲しくってさ。」
勉強のこと、部活のこと、
親友としてではなく、相棒としてではなく、
2人のこと、恋人として、ただ一緒に居る時間が欲しくなった。
「真ちゃんに分かるかなぁ、俺の言いたいこと。」
真ちゃんって頭いいのにばかだからなぁ
なんて言いながら俺はブランコに立った。
「だからか、」
「え、」
すると、きい、と音を立てて真ちゃんがブランコから降り、俺の前に立った。
「だからお前はここ2日様子がおかしかったのか、」
いつもは見上げるはずの目が、俺より下にあった。
「真ちゃん、何言って」
いつもは降ってくる視線が、俺に縋ってくる。
「お前のことなど、見ていれば分かる。
昨日からやけに呆けていて、何を見ているのかと目をやれば必ず目が合った。いつもならある程度余裕をもって熟していたメニューも、ここ2日間は殆ど限界に近い状態になっていた。
疲れているのだろう。
お前は疲れている時、一緒に居てもなにもしたがらないからな。」
驚いた。
まさか、自分のことがこんなに知られていたなんて、思いもしなかった。
ましてや、無意識の内に自分が緑間を見つめていだだなんて、
「明日午前10時だ。」
「、、、へ。」
俺を見上げ放たれた言葉に、気の抜けた声が出た。
相当間抜けな顔をしているであろう俺を見て、
「明日はオフだろう。午前10時に俺の家へ来るように。」
呆れた顔でそう言ってから、
滅多にしないようなやわらかい笑顔で
「帰るぞ、高尾。」
だんて言うもんだから
「ね、真ちゃん、ちょっと待って、」
なんだかんだで一番俺のことを見ていてくれる、
そんないとおしい彼氏様の、
いつもは一番近くにあって、さっきまで一番遠くにあった、

   ふと目についた君の唇
俺の唇とくっつけるためにぴん、と伸びた俺のつま先。


*無糖様提出作品






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