バナナを剥くのに最適な日

Aomine × Akashi



 どん、と背中に重みを感じた。隣にいた緑間が怪訝そうに己の後ろの男を見るが、視線だけで大丈夫だ、と示すと一つ息を吐いて一軍の中へと入って行った。部員全体が試合前のウォーミングアップのために指示された動きをしていることを確認し、赤司は青峰に少し離れるように合図を送る。

「赤司、青峰。どうした」
「監督、青峰が少し調子を上げすぎたようなので調整をしてきます」

 いつもと違うエースの行動に、普段はあまり口を出さない監督も目を見張ったようだが赤司の言葉を聞き素直に頷きベンチへと戻って行った。他にも何名か青峰の行動を視線で追っていたが、赤司の存在を確認するやいなや安心をしたように元の練習へと意識を向ける。それらを確認し、赤司は何かを我慢するかのように呼吸を抑えている青峰の背を押して体育館の出口へと足を進めた。

 人気のない奥まった場所にある廊下を歩き、恐らくは場所からいってこの体育館の管理側しか使っていないのでは、というトイレへと足を踏み入れる。後ろから付いてくる青峰が随分と居心地が悪そうに歩いていた理由も、先ほど何かを訴えるかのように体育館でぶつかってきた理由も同じ事象が原因だ。
 誰もいない閑散としたトイレの個室に二人で入り、赤司が鍵を閉めたところで青峰は我慢できずに赤司を自分と壁の間に挟み込みキスを仕掛けるが背中を思い切り抓られその目論見は失敗に終わったが赤司の口にした言葉を聞き青峰は期待に胸膨らませた。

「脱げ。始末してやる」
「えっ、舐めてくれんの!?」
「噛み切られたいのか?」
「ヤダナ冗談ダヨ」

 花の綻ぶような笑顔だっただけに本気度は高そうだ。それなのに少しも萎える様子の無い股間の様子に青峰は自分が予想以上に興奮をしていることを自覚した。ウォーミングアップのために走っているときから違和感はあった。それは柔軟の時に強くなり、シュート練習の時点では疑いようの無いものになっていた。つまり青峰の息子は今完全なる臨戦態勢を取っている。自然に収まるレベルのものではなく、一回抜く必要があると悟ってしまうほどに。相手が強かったり心から楽しめるゲームをしたときにたまに同じ状況になったことがあるが、その時はすぐに収まっていたのだ。だが今回のようなことは初めてで、周りにバレるわけにもいかず何も言わなくとも察してくれそうな赤司に縋ったのだ。
 今日の対戦相手は前々から青峰が対戦をしたがっていた相手のいるチームだ。いつも以上に闘志が高まり、それが若い肉体にダイレクトに表れたのだろう。赤司もそのことは理解をしている。それに青峰との関係はただのチームメイトを越えている。主将として、パートナーとして、してやれる第一の事を考えこの場へ連れてきた。だが予定外の行動で時間のロスは確実だ。

「……まぁ、それだけやる気があるということか」

 ふむ、と頷いた赤司を見て青峰はこれは怒られるパターンでは無い、と理解し安堵した。だが、

「早く済ませるぞ」
「……やさしくしてください」

 キランと光った赤司の瞳に青峰は舌っ足らずにそう言うしかなかった。



 じりじりと焼け付くような熱を感じる。それは青峰の発する熱か、そんな青峰にあてられた赤司の熱か。
 赤司の白い指が性器に絡みつく様子はなんとも淫靡だ。熟知したように動く指に確実に追い詰められている。掌で亀頭を撫でられ、こねくり回され、うめき声とも吐息ともつかない声が青峰から出て縋り付くように赤司を抱きしめる。そんな青峰を赤司はよしよし、と受け止め、だが手の動きは淀みがない。
 赤司、赤司、と呼び視線が交わったところでキスをする。今度は避けられずに受け止められ、夢中で口内を貪る。一旦口を離し軽く何度もバードキスをした後、もう一度深く。離れたときに引いた糸をもう一度唇に軽くキスをし切る。先ほどと異なり首筋や目元がぱっと赤く染まっている赤司は目の毒だ。擦り寄るように赤司の首筋に目元を押し付ける。

「っ、うぁ」
「ユニフォームにかけるなよ」
「わァって、る、っん……!」

 ぐり、と青峰の一番いいところを刺激され足がガクガクと震え立っていられなくなる。赤司の肩に顔を埋め、早くなる呼吸に限界が近いことを知る。赤司と触れ合っているところから熱を感じる。頬に当たる柔らかい髪からはシャンプーの匂い。それなのにトイレの中の湿気の中に混ざったキツイ消臭剤と、自分の生々しい精液の匂い。目の前がくらくらして何がなんだかわからなくなる。
 そんな青峰の様子を見ながらそろそろか、と精液が飛ばないよう両手で包み込んだところで入口から声が聞こえてきた。まだトイレの中へは入っていないが、音からして数人、もう数メートルも無い。呼吸が荒く、恐く周りの声が聞こえていない状態の青峰に加え今赤司は両手が塞がっている。
 青峰、と小声で耳元に囁き、熱の持った瞳がこちらを向いたところで唇を奪った。

「っんぐ――っ」

 突然呼吸を奪われ青峰は目を見開いたが、それを無視して赤司は自分を押し付けるよう、体重を預けるように体を青峰へと傾けた。青峰は喉の奥で声にならなかった振動を赤司に飲み込まれ、真っ直ぐと見つめてくる瞳に食い尽くされるような感覚を覚える。気付くと腰のあたりがぶるりと震え、赤司の掌の中に精を放っていた。

 外にいた人間の気配がトイレ内には入らずそのまま遠ざかったのを感じ赤司は口を離そうとしたが、離れるその直前で青峰に後頭部を押さえつけられ油断して開いた口の中へ舌が侵入してきた。両手が塞がってる赤司と自由に両手が使える青峰。加えてこの狭い空間では圧倒的に赤司が不利だ。上顎を舐められ舌を吸われ、足の力が抜けかける。服の上から尻を掴まれ、ここに入りたいのだと意思表示をするかのようにピンポイントに窪みをグリグリと刺激され思わず逃げ腰になるが青峰の腕力には敵わなく引き戻されてしまう。
 抜いてクールダウンをさせてやるつもりだったが、これは予想外だ。青峰の性欲を舐めていた。早急に脳内のデータを修正しなければならない。そしてこの馬鹿にここがどこかを思い出させる必要もある。
 ずり下げられ辛うじて恥骨の辺りに引っかかっているズボンも胸のあたりまで捲り上げられ4の数字がひしゃげたタンクトップも今は気にしている場合ではない。外に誰もいないことを確かめ思い切り音が出るよう足で後ろの扉を蹴りつける。そして音に驚きスキができた青峰のバランスを崩した。

「どあっ!!?」

 思い切り便座に尻をぶつけ目を白黒させる青峰の見下ろし口元を拭う。トイレットペーパーを千切り手についた精液を拭き取り、文句を言おうと顔を上げた青峰に一瞬、触れるだけのキスを落とす。ポカンとした青峰の表情が可笑しく、ゆっくりと頬から顎へのラインを撫でながら努めて優しい声音で、

「お預けだ、大輝。……続きは、今日の試合に勝ったら、――な?」

 そう言った時の青峰の瞳に宿った光。それを見て我が部のエースのやる気は十分だな、と赤司は甘い疼きと練習試合への手応えを感じ、百戦百勝のチームの長に相応しい笑みを浮かべた。


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