のろいをかけたよ

Kuroko× Akashi





「あかしくん、きみにのろいをかけました」

 声が聞こえた気がした。
 おや? と思い辺りを見渡すが誰もいない。あの声は、知っている声だったはずだが誰だったか思い出せない。
 くすくす、と笑う声が聞こえた。

「ちがいます。うえです」

 言われるままに上を向くとそこには黒子がいた。そうか、お前だったのか。
 呪いとはなんだ? 意図は?

「のろいはのろいです。ぜったいにとけないのろいなんです」

 絶対に解けないとは、随分と自信があるようだ。





「黒子。お前に呪いをかけたよ」

 情事中に言うにしてはやけに物騒で、だがその声音はいかにも今している行為を物語る熱を孕んでいて。黒子は自分でも馬鹿みたいだ、と思わずにはいられないくらい間の抜けた声で「のろい?」と聞き返していた。だが赤司は笑うばかりでどんな意図があったかも何を思っての言葉だったのかも答えてはくれない。一時的に途切れた情事の熱も再発し、本当に赤司に言われたことだったのか、あれは熱に浮かされた自分が聞いた幻聴だったのではないかと思ってしまうほど。

 寝てしまった赤司の寝顔を見つめながら黒子は心の内を吐露する。

「赤司君。
 赤司君。好きです。
 赤司君。キミがいたからボクは。
 赤司君。赤司君。赤司君」

 染み込ませるように口ずさむ言葉が、赤司が起きている時には絶対に口にはできないということを黒子は気付いていない。何度も名前を呼び、だが赤司が起きることを恐れている。
 この気持ちはなんだ。赤司といると、自分の気持ちがわからなくなる。
 呪いをかけられた。これは呪いだ。
 赤司にしか解けない呪い。
 ぐにゃり、と視界が歪んだ。





嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘ぜーんぶ嘘!!!!!!





 WCの決勝戦を明日に控えた。
 赤司にあの時かけられた呪いとはなんだったのだろう。それは今でも分からず、黒子の顔が頭を過るたび不思議と胸がざわつく。
 『黒子。お前に呪いをかけたよ』
 思い出にしてしまうには近すぎて、思い起こすには遠すぎる日の出来事。

 確かに、黒子は赤司に呪いをかけられた。



「呪いと言うものが、本当にあると思っているのか」

「呪いを呪いと為すものは、ほとんどが思い込みだと、お前ならば知っていてもおかしくはないと思っていたがな。まぁ、いいだろう。呪いが本当にあるものだとしよう。だがそれは果たして本当にかけた本人しか解けないものだろうか?」

「本当は気付いているんだろう? オレがお前にかけた呪いなんてもうお前は解いてしまっている。それはお前自身のスタイルを確立した、お前自身が一番分かっているはずなのに。お前はただ単に、大元であるオレを倒し、自分が本当に呪いを解いているのかの確認をしたいだけさ。自信がないから、オレに答え合わせをしてもらおうとしているんだよ。そう考えると、オレはお前に大分頼られていると言えなくもないな」

 そういう時に綺麗に笑うのは性格が悪いと思います。そう赤司に伝える前に黒子は目を覚ました。
 夢の中とはいえ、中々に憎たらしいことを言われたような気がする。



 赤司君。ボクはキミに呪いをかけられました。今、その呪いを解きに行きます。
 そしてその呪いが解けた暁に、中学時代キミに伝えられなかった事を伝えたいと思います。
 ボクはずっときみに――







ネタバレ
マジで全部黒子の夢です。

一段落目→黒子の夢(赤司視点)
二段落目→黒子の夢(黒子視点)
三段落目→黒子の夢(中三全中後)(覚えていない)
四段落目→高校黒子。目が覚めつつある。(でもまだ夢見てる)




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