赤司くんの気持ちいいところを探す話

Kuroko × Akashi



※不感症な赤司


 一度目はひどく痛く苦しかった。二度目は相も変わらず苦しいばかりであったが中に出すと腹を下すことを知っていたので外で出し、後片付けが楽だった。三度目は自分の上で懸命に動く姿に意識を持ち、その姿を愛しいと思った。

「ボクが下手なのでしょうか」

 三度目が終わった時、三度行為を重ねその三度共に反応を示さなかった赤司の体を丁寧に撫でながら、黒子は言った。

「それは違う。言っただろう、オレは今まで”感じる”という感覚を覚えたことが無いと」

 実際に今黒子の手で汗ばんだ体に触れられても、くすぐったいという感覚はあるがどれをとっても性的な刺激にはならない。興味が無いわけではない。年相応に色ごとには興味があるが、何故か体がそれに付いてこないのだ。

「……まあ、上手いかどうかもわからないがな?」

 意地悪そうにそういう赤司につい黒子はむっとして赤司を再び組み敷いた。抵抗せずにすんなりとそれを受け入れた赤司を見て、試されているような複雑な気分になりながらも黒子は赤司の唇を塞ぐ。ちゅ、ちゅ、と軽く何度か口付けて、口端、頬、首筋、鎖骨、と徐々に下へと移動し胸に到達したところでそこにあった突起を口に含んだ。
 びくりと体を揺らしたが、どうやらそれは突然の出来事に驚いただけのようだった。赤司を見ると『続けろ』と目が言っていたので、お許しを得たところでもう一度突起を口に含む。少し汗でしょっぱい、あまり反応を見せなかった乳首が固くなってきた。だがどうも刺激を与えられた上での自然現象のようで、我慢している様子でもない赤司を見ると少しだけ残念に思った。
 しばらく強弱をつけながら舐めたり吸ったりを繰り返し、口を離すと唾液で糸が引いた。片方だけ真っ赤になった赤司の胸を見て黒子は口を拭って赤司に目をやる。

「……どうでしたか?」
「ああ、子猫にミルクをやる母猫の気分だった」

 ダメそうですね、と黒子が少し膨れた様子で離れていったのを見て赤司は笑った。



「ボクばかりが得をしているような気がして、申し訳ないです」

 四度目の行為の前に確かに黒子はそう言っていた。

「赤司くん、っあか、しくんっ」
「っ、ぐぅ、ふぅ、あっ」
「ああっ、気持ち、いいです赤司くんっ、」

 赤司を抱く黒子にはいつだって余裕というものがない。
 本当は黒子も赤司が快楽を得て、同じように感じてくれるのが一番だ。だが体は正直なもので、赤司が苦悶の表情で呻こうともきつく口端を閉じて痛みを逃そうとする様子を目にしても貪欲に赤司を求め、貪り尽くしてしまう。むしろ、どんな変化であれ自分の行為が赤司を平静でいられなくさせているという事実がどうしようもなく黒子の胸を高鳴らせる。サディストの素質があるのか、と自問自答するがあいにくこういった欲求は赤司相手にしか抱かないのでよくわからない。
 好きだ。赤司が好きだ。赤司が好きなんだ。

 好かれている。それは知っている。夢中になって腰を振る黒子になすがままにされているのは、そうして自分を貪る黒子が可愛いからだ。苦しさを覚え、男同士の意味のない行為とも知りつつも黒子を受け入れ続けた。
 愛情、とでも言うのだろうか。三度目の時からなにやら胸の奥で渦巻いていたこの気持ちに名を付けるとすれば。
 黒子に体を許したのは、少なからず黒子に対して好意があったからだ。恋愛感情として好意を抱かれていると知ったときは驚きもしたが、それが不快に思わなかった。むしろ好ましいと思ったからこの関係に収まっている。
 愛とはなんだ。恋とはなんだ。それに納得のいく答えを返してくれる人間は今までいなかったし、他人の語る感情は赤司には理解はできない。だか、今自分が黒子に抱く気持ち。もしかしたらこれが、

(ああ、そうか。オレは、体を許せるほど黒子のことが……)

 当たり前の事実に今更気付く時点できっと自分はどこかのネジが足りないのだろう。黒子の気持ちに応えたいと思っていただけだが、どうもそれだけではなかったらしい。何故自分がそう思ったのか、それを理解していなかった。そのことを認識した途端自分の体が今まで感じたことのないような感覚に襲われた。

「く、ろこ……っ」
「はい、っ赤司くん」
「今、っあ、オレは、気持ちいいよ……っん」

 そう言うと黒子は一度動きを止め、赤司の顔をじっと見た。そしてそのいつもあまり動かない表情筋がじわりと動き嬉しい、と物語っている様子を赤司は間近で見て赤司は思わず吹き出した。

「っぶ、ふふ、あははっ、……お前なんて顔をしてるんだ」
「……笑うなんて酷いです」

 嬉しさのあまりか、それとも元々生理的な意味合いで出ていたものか、赤司は黒子の目の縁の涙を指で拭って首に手を回した。しっとりと汗ばんだ肌が隙間もないほどに触れ合い、お互いの鼓動を感じる。
 しばらくそうしていたが、黒子がなんだかそわそわし出したのを見て赤司はふ、と笑みを浮かべて意識的に腹に力を入れた。

「っく……ぅ、……赤司くん」
「ふふ、なかなか可愛かったぞ」

 なんて人ですか、と悪態を吐きながらも再び動き出した黒子の動きは優しい。そのことにも気付いて赤司は油断すれば締りのない顔になりそうなのをなんとか抑えて抱きつく腕に少し力を入れる。そんな赤司の今までとは明らかに違う反応を見て黒子はいつもより感じている自分にまだ早い、と言い聞かせながら腰を動かす。赤司の息も切れ切れになってきて、我慢できずに空気を奪うようにキスをした。ぎゅう、と赤司に締め付けられ思わず口を離して赤司を掻き抱いた。

「っあ、中はダメ、だからなっ」
「う、あっ、赤司くん力入れないで……っ」
「んっ……!」

 ぶるりと黒子が震え、腹の内側から熱くなるような、形容しがたい感覚が赤司を襲った。

「……出ちゃいました」
「……」



「達しているわけではないんですね」

 後始末をするために用意していたタオルを手にして黒子は液体で汚れていない赤司の腹部を見てそう言った。気持ちがいいと言って、今までよりも強く反応していた内部を考えると赤司も達しているものだと思っていたがそうではなかったらしい。

「射精するだけがセックスでもないだろう」

 実際に黒子と体を重ね、内側からあふれるような気持ちを抱いた。今まであまり楽しいものではなかったセックスだったがこんな気持ちを抱かせてくれるのならば積極的にしてもいいと思えるくらいだ。気持ちがいいという感覚、確かにお前はオレに与えてくれた。赤司はなんだかよくわからないが幸せな気分になり、黒子を撫でて言い聞かせるように言った。
 だがそんな赤司の心の動きを知らない黒子はあまり納得がいっていなさそうな表情でそうですね、と小声で呟いた。

「今度は違う体位を試してみるか」 

 そんな黒子が可愛く見えて、黒子の前に餌をぶら下げてみる。ぱあ、っと無表情ながらも輝いた黒子の表情を見て赤司の心は満たされた。

 四度目のセックス、早く中に出した精液を掻き出せば腹を下さずに済むと知った。


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