My sunshine | ナノ


 

My sunshine



「あ、あ……痛、い……!」
 顰めた眉と目尻に溜まった涙が、その細い身体に感じている強い圧迫感を物語る。
 椿は一生懸命に希里の背にしがみつき、息をつく間もなく繰り返される律動に耐えていた。一方の希里は、わずかに汗の滲む額を気にもせずに、まるで太陽を仰ぎ見た時のように眩しそうに目を細めているだけだった。
 白い頬を仄かに赤くそめて零れる声を抑えることもできずに、椿はそんな表情にすら気付く余裕はなく、ただ預けることのできるすべてを希里に委ねていた。椿の時間も、身体も、声も、感情すらこの時ばかりは希里のものだった。縋るように背中に回された頼りない腕にこめられた力を感じながら、希里は椿の重みを思い知る。
 繋がった足の付け根から幾筋も液体が伝い、皺のよったシーツをいやらしく濡らしている。
 希里の動きとともに押さえつけられる椿の性器は、もう既に何度か吐精し、彼の腹や胸を白く汚していた。
 そうしてまた朦朧とした感覚の中で射精感に襲われ、椿は開いた脚をぴくぴくと軽く痙攣させる。
「ん……っ……もう、嫌…だ…キリ……」
「もう少し我慢してください、ほら……」
 その様子を心底愛おしそうに見つめて、希里は椿の唇に吸いついた。舌をすべりこませて唾液を絡ませると、椿の舌も従順にそれを追いかけてくる。ゆっくりとした口づけと同様に、下半身の動きも先ほどよりもいくらか緩やかになっていた。それでも更に密着したせいで、椿の性器は希里の身体に挟まれ、動きとともにぐちゅぐちゅと音をたてて擦れてしまう。その弱い刺激と精液の滑った感触は、椿をまた快楽の底へと誘う。
「……あっ、やっ……、また……っ」
 唇が離れた瞬間、しゃくり上げるように椿は高い声をあげる。
「いきそうですか?」
 優しく問うて、希里が椿の性器の先端を親指で弄る。
 限界の近かったそこは、それだけで勢いよく精液を吐きだした。
「んあっ……!ん …… っ!」
 身体を震わせながら、椿は蕩けたような瞳で絶頂をむかえる。その瞳は何を映すでもなくただ空虚だった。目の前にいる希里のことすら見ていないようで、ひたすら快感に身を委ねて、その時が静かに過ぎていく。
 今の今まで全部が自分のものだった椿のすべてが希里の腕からすり抜けていく唯一の時間だった。
 数時間のあいだ何度も抱きよせ、求め合い、なまえを呼びあう。自分のことしか見えていなかったはずだった。けれど椿だけが今どこか遠い場所にいるように、希里の熱い視線にも無反応だった。
 希里には奪われたその数十秒ですら惜しい。早く、今されていることを思い出して、またこっちを見て欲しい。
「……いくときの顔、可愛いですね」
 椿の意識を呼び戻すように意地悪く言う。ようやく視線に気づいた椿が、希里を睨みつけた。
「……見るな……馬鹿っ」
 椿は羞恥で顔をさらに赤くし、希里から目を逸らす。見るな、と言われるともっと見たくなるのが本音だったけれど、それは言わないでおく。
「……続き、していいですか」
「ま……待て、……あ!」
「すみません、……もう待てなくて」
 希里の手がやわらかな椿の内腿を撫で、そのまま促すように大きく開いていく。狭まっていた中心部は広がり、希里の性器を深く受け入れた。十分に濡れて解されているはずなのに、それでも椿の中は窮屈できつく締め付ける。
 密着させた腰をゆっくりと動かして、内側にこすりつけるようにすると、椿の中がびくんと反応した。
「……ん……うっ!」
 しばらく震わせていた吐息がいつしか音となって、その淡く色づいた唇から甘く零れる。涙と唾液で艶めいた幼い顔は、希里の欲を攻め立てるには十分すぎるほどの色気を持っていた。
 我慢できず敏感な内壁にこすりつけるように動かせば、椿の細い腰が浮きあがり、希里の性器をさらに奥へと導いた。
「ああ……っそこ、嫌……っ…」
「ここが気持ちいい?」
 ふるふると首を振りながらも、椿は頤をのけ反らせ、身体はその気持ち良さに反応している。
「あ……っ」
「っ……会長、こっち向いて……」
 互いに余裕がなくなって、荒くなる呼吸。希里の呼びかけにわずかに反応した椿に、強引にキスをした。深く、沈めるように。この時だけは、自分のことだけを考えて。そんな願いを込めているのだった。




2011:長編を書くつもりで途中で断念していました



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