3月の庭で2 | ナノ


 

【中略】






 黙ってしまった椿の唇を何度も奪い、キスをした。
 いつの間にか腕を椿の背中に回して強く抱きしめて、その手が肌に直接触れようとしている。制服越しに背骨に沿うようにして指を動かし、太ももや腰を撫でつける。キスは深くなり、椿は安形のされるがままになっていた。
 安形の手が何度目か椿の太ももに触れた時、ある変化に気付く。
「……これ、勃ってんの?」
「……?!」
 安形に言われて、椿は驚き目を瞠る。まさか、そんな反応をしているなんて思いもしていなかったようで椿は戸惑っていた。
 安形は我慢できず制服の上から椿の性器をまさぐり、優しく擦った。がくんと腰が揺れて椿の身体がもたれかかってくる。ゆっくりと上下に擦ると、次第に硬さを増していき完全に勃起した。布越しにもはっきりと見て取れるそれに、安形は確かに欲情した。
「辛い?出してほしいか?」
「んっ……」
 首を横に振り、否定するも抵抗できずにいる。
 椿が本気を出せば、この状況から逃げられることは間違いなかった。さっきのように自分ひとりくらい殴りとばして、ここから出て行くことは容易いだろう。それなのに椿は抗わない。―尊敬する安形だからか。それとも単に恐怖が勝っているのか、わからなかったけれど。
 安形は容赦せずに、ズボンのチャックを下げて前を寛げた。
「あ、あ……っ」
 椿の屹立した性器を優しく握り、再びゆっくりと動かす。熱を帯びたそれは次第に、先端に先走りが堪えてとろりと溢れた。窪みから零れた蜜を全体にねっとりと絡みつけるように、安形は性器を上下した。ぐちゅ、と濡れた音が響くと椿の身体が強張った。
 まさかこんなことになるなんて、安形自身も思いもしなかった。でも止められないし止めるつもりもなかった。ごめん、なんて軽々しく頭のなかでだけ謝りながら安形は椿の身体に溺れていく。
「う…、 ん……」
 椿の頬が赤い。いま触れているところすべてが熱かった。
 あんな真面目で規律正しい椿が、自分の手でこんなにも乱れているのだ。どうしようもなく興奮で急いた指が、もっともっと、と先に進みそうになるのを安形は止められない。
 興奮状態にある性器を手のひらに包んで揉むように動かせば、椿の腰が揺れた。いやらしく捩るようなその動きが、とても扇情的でもっと駄目にしてやりたいと思ってしまう。
「あ、 嫌…… ッ」
 嫌、という椿の口をまた塞いで、今度は深く沈めるようにキスをする。二人で水の中にいるみたいに息継ぎをする間も与えないほど深く、たっぷりと唾液を注ぎ込んで。
「――……っ、む…… っは……」
 さすがに息が出来なくて苦しいのか、椿が無理矢理唇を離す。けほ、と咳込んで安形の身体に縋るように凭れかかった。肩で大きく息をしているのは、下半身への刺激のせいもあるだろう。もう、限界が垣間見えるそこを、安形は構わずに激しく扱いた。
 椿の色めいた吐息と、滲んだ目が煽るようで余計に逆効果だった。
「ん……、 あ ん……っ!ああっ……っ」
 くちくちと親指で先端をいじってやると、椿の濡れた喘ぎ声がせきを切ったように止まらなくなった。
 びくん、と大きく椿の身体が跳ねて、刺激に脚を震わせた。
「椿、椿……」
 名前を呼んで、ぐりっ、と指を捩じ込むように窪みを押さえれば、椿の性器から精液が勢いよく放たれる。最後の最後まで絞り出すように安形は椿の性器を擦った。
「会長……、っ だめ です…… っ んっ――……!」
 制服を汚さないように、手のひらで精液を受け止めてやる。逆上せたような椿の顔が、たまらなく愛しかった。その場にへたりこんでしまった椿は、本棚に凭れかかり呼吸を整えている。人の手、しかもそれが尊敬する自分の先輩の手によって射精してしまったことに、怯えているようだった。
 安形はそんな椿のすべてが自分を煽り、感じたことの無い情欲にのまれるのを目の当たりにした。ブレーキがきかなくなって、もっとひどくしたいという欲に苛まれる。





2011.5.4発行予定



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