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犬も歩けば棒にあたる。
ならぬ、佐田が歩けば人避ける。
…という言葉があってもいいほど、廊下を歩く佐田の周りには人がいなかった。
ギリギリまで離れようと壁に張り付く生徒のみならず、先生までもの姿は圧巻だ。
圧巻を通り越して滑稽である。
そして当の本人である佐田は気にもとめず、当たり前のように悠々と歩いていた。
図太いのかタフなのか。
「…――淳弘!」
ふいにしんと変に張り詰めた空気の中、響き渡った高らかな声。
声がした方を確認してみれば、一人の男子学生が佐田の元へと駆け寄ってきていた。
身長は平均男子より少々低いくらい。
彼の姿が見えたと同時に冷えついていた空気もゆるんだ。
佐田の黒オーラを相殺するほどのマイナスイオン効果を持った少年。
その学校では、『安らぎの金木』と呼ばれる金木 絢祢その人だ。
「絢…」
「――ちょっと、聞いたよ〜?また雑魚に絡まれたんだってぇ?大丈夫だった?」
「ああ。ちゃんと相手が仕掛けてきてからのめした」
「よし!じゃないと正当防衛にならないで、淳弘一人の責任になっちゃうからねぇ〜!バカに責任押し付けるのが一番!!」
あくどい。
佐田さえもそう感じるのが、金木 絢祢その人である。
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