2
12月24日。午後10時53分。
バカップルはバカらしく去って行った。
あたりは一面“クリスマス”という行事に浮かれている。
さっきのバカップルもそうだ。
なにが楽しくて“クリスマス”という異国の文化に浸ってんだか。
到底理解できないな。
「あ、村里君。もう11時だからあがっていいよー。ご苦労様」
「はい、じゃあ失礼しまーす」
店長の一言で俺の今日の一日は終わった。
目の前に掲げられている《mon amour》、洋菓子店。
ここでかれこれ一年は働いてる。
店名の意味は知らない。まぁ、響きがいいからとかそんなとこだろ。多分。
あの店長ならやりかねないな。
てかどうでもいいな、このくだり。
とりあえず今は帰る準備でもしようか。
店の裏口から中に入ろうとして気が付く。
うっかり忘れるとこだった。
「このボールペン高かったんだよなー」
少し傷ついてしまった俺のボールペン。
ごめんな。
悪気はなかったんだ。まじで。
「…この格好も早くどうにかしないとな」
傍にあったオープンウィンドウには、それはそれは可愛らしいサンタの格好をしたくまのキグルミを着た俺がいた。
今日の仕事は外でのケーキ販売だった。
キグルミだったのがせめてもの救い。そのほかいろいろにも救いだったし。
「…かえろ」
外はすっかり“クリスマス”色。
12月25日?
そんなのただの休日です。
[*←] | [→#]
2/10
←