7
★★★
強いてきっかけをあげるなら、あの日。
初めて彼を見た日。
たまたま帰りが遅くなった俺は小走りで帰っていた。
うちはそういうのにうるさい。
早く帰らないと、母さんの雷が落ちるのは必須だった。
――なのになぜか足を止めた。
あの時のことは今でもわからない。
でもそうしなきゃいけない気がして。
そこは怖い人たちがよくたむろってる、普段だったら絶対に寄り付かない裏道。
俺はどうしてかそこを覗いた。
――覗いた先には横たわる群れの中、一人立っている人。
…知らずに息を呑む。
とても穏やかとは言い難い場面。
その人は無造作に髪を掻きあげると、つまらなそうに足元を見てその場を去った。
…それだけのことだったのに。
なぜだか、ひどく胸が苦しんだ。
きしきしするような痛み。
けれども、不快でない痛み。
あぁ、俺はなんかの病気になったんだ。
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