第零訓 甘い言葉には気をつけろ


「最近の真選組の行動というのは、目に余るものがありますね」

落ち着いた声の男が見つめる先には、大江戸ニュースの看板アナウンサー花野アナの姿があった。彼女は焼け焦げ未だに灰色の煙を上げている建物の前で、現場の様子を中継している。ちらほら、かっちりした黒服に刀を携えた男たちが画面の端に映っていた。その画面の一番下に表示されたテロップには、「真選組 またやった!!」と、馬鹿にするかのごとく大きく書かれていた。どうやら真選組は、捜査だか何だかと称して建物を一つ爆発させたらしい。こういうのは珍しいことではなく、そういう時には決まって住民からの悪い評価を受けるのがお約束だった。

「……荒々しい者ばかりの、バランスが悪い連中だ」
「そうそう、やっぱ女っ気がないのはいけないわね、人々の指示も得られない」

ソファに座るショートカットの女から、何かを絞り出すような音がしきりに響く。男はそれを、苦笑いだけして触れないでおくことにした。

「何々、潰す? 潰す?」

別の男が興奮したように繰り返す。女はそんな男に何かを投げつけ、机に置いてあった箸を手に取った。

「あーんたは黙ってなさい。馬鹿ねえ、巳之がそんなことするわけないでしょ?」
「そうそう、まあ、私はの話ですがね。……うぇ、気持ち悪ッ」

全く、彼女の味覚はどうしても理解ができないと、男は吐き気を紛らわすためにため息をついた。するとその横からひょっこりと、「無視しないでくださいよー」と気怠そうな声をした若い男が顔を出す。

「潰すんじゃありませんもんねー」
「そうです。私たちは革命をしなければなりません。……ねえ、皆さん?」

そう言って男はテレビのリモコンを手に取り、電源を切る。部屋の中は誰かさんの狂ったような小さな笑い声と、陶器と何かがしきりにぶつかりあう音がやけに響いていた。男がすっと立ち上がり歩き出すと、他の三人は何も言わずに立ち上がる。

彼らの腰に差さっている刀は光に照らされてなお、黒々と不気味な色をしていた。


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