静雄01
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「静雄さん静雄さん静雄さん! 今日も今日とて果てしなくイケメンですね!」
「……なまえか」
「はいっ! 池袋最強、ラブ! なまえですこんにちは!」
仕事が丁度昼休みに入り、昼飯の買い出しに出たらこれだ。偶然出会ったのは一応俺の彼女――なまえだった。
なまえはにこにこと笑って、俺に抱きついてくる。内心動揺しながら、はあとため息をついた。
「朝見た静雄さんも魅力的ですけど、今の静雄さんも素敵です。はああ、静雄さんって麻薬なんでしょうか。中毒性がありますー」
俺からすればお前の方が魅力的だし、すんげえ中毒性あるけどな。頬をすりすりと胸板(よりも少し下)にこすりつけてくるこいつはあり得ないくらい可愛い。絶対言ってやらねぇけど。
「つーかそれは良いんだけどよ。何でお前こんなところにいるんだ? お前のバイト先ここじゃねえだろ」
なまえは年齢で言えば高校生なのだが、親がいないせいで学校には通えていない。生活費を稼ぐため、日中はバイトをしている。
ちなみに部屋を借りる金なんかあるわけもなく、現在は俺と同棲中である。
俺の言葉になまえがうっ、と詰まった。怪しい。何か隠しているな、と睨むとなまえがそっぽを向く。
「おい、まさかサボったんじゃ、」
「違います! ええと、これには深い事情がありましてですね。……まあ平たく言えば、これであります」
なまえはしぶしぶと言った様子で一枚の紙を出してきた。チラシ、である。それにはなまえのバイト先の割引券やらなんやらがついていた。しかし、なまえの格好は完璧なる私服だ。こいつのバイト先はコスプレ喫茶だから、話が本当ならば今もメイド服やら何やらを着ているはずである。
疑わしい。眼で訴えると、なまえはぷうと頬を膨らませた。
「何でコスプレしてねぇんだ?」
「それは今が休憩中でコスプレで歩いたら目立つからです。お昼の買い出しも一苦労ですよー。ここまできてチラシ配りって面倒なんですからね!」
そこまで言われて、ようやく俺は納得した。確かにコスプレでは目立って仕方ないだろう。そうか、だからこんなところにいたのか。
「でもでも」
なまえはいきなり表情を明るくさせ、笑った。
「静雄さんに偶然会えたから最高に嬉しい1日になりました!」
「…………あー、お前さあ」
「へ?」
やばい。顔にやけそうだ。何だよそれ、俺に会えたら最高なのかよ。馬鹿だろ。そんななをどうしようもなく可愛いと思う俺も馬鹿だな。
俺はなまえの腕を引き、頭を押さえてキスをする。怒るかな、となまえの顔を見たがいきなりのことで頭がついていってないようだった。少し時間が経ち、彼女の顔は真っ赤になった。
「はは、タコみてぇだな」
「…………! 静、静雄さんは卑怯です」
「なんとでも言え。煽ったお前が悪い」
俺はなまえの手を掴み、足早に歩き出す。戸惑いながらもなまえは俺に着いてきた。
「どこにいくんです?」
「コンビニ。どうせお前もそこで昼飯買うつもりだったんだろ。今の俺は機嫌良いから甘いもん一つくらい奢ってやるよ」
「……よろしくお願いします」
現金な奴だな、と振り替えるとなまえは蜂蜜みたいな甘い笑顔で笑っていて、胸が締め付けられた。ので、
「へ、……! ん、ぅ」
「俺はこれで満足だからよ」
もう一回くらいキスしても許されるよな?
(溺愛恋愛ぬこ可愛がり)
(偶然もラブロマンスに変わる)
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