番外編 | ナノ


今年のクリスマスは雪が降り、ホワイトクリスマスとなった。積もるほどの量では無かった。しかし、クリスマスに雪が降るなど都会ではなかなか無いので、テンションが急上昇した。丁度、創と買い物に行っていたななしはケーキを創に渡して、道路を走り回った。
その年にブレイクしたアナ雪の曲を歌ったり、エルサになりきったり、白い息を吐いてはゴジラ!と言ったり、それはもうものすごいはしゃぎようだった

その様子を微笑ましく見ていた創は感化されたのか、一緒になってエルサごっこを家までやっていた
当然激しく動いたのでケーキは少し崩れていた。二人はやっちまったぜ…と呟き、互いの顔を見て笑った。こんなクリスマスケーキもたまにはいいだろう、と



「あーあ…今年も、もう終わりか〜」

炬燵に入ってそう嘆く。クリスマスが過ぎるとあとは早かった。もういくつ寝るとお正月…ってまだ気が早いか〜と思っていたクリスマスだったが、気がつけばもう大晦日。
番組表を見るとデカデカと紅白歌合戦が載っている。もうそんな時期なのか。毎回言っているが、実感が無い

「今年もあと6時間くらいで終わりか。早いな」

「あ〜これ以上歳をとりたくないよ〜」

「お?なんだそれ?それは父さんへの嫌味かな?」

「え〜〜?なんのことですか〜?」

「この…すっとぼけか!かわいいなあ!」


キッチンからグツグツと鍋を煮ている音が聞こえる。部屋に充満する鍋の匂い。これは味噌鍋かな。ああ、早く食べたい、とお腹を鳴らしヨダレが垂れそうになる。
テレビはガキ使か紅白どちらを見ようか迷ったが毎年紅白を見て年を越しているので、今年も紅白を見ることにした。
今年は白と赤どっちが勝つのだろうか

「やっぱり白じゃね?」

「えーもしかしたら奇跡が起こって赤かもよー」

「いーや、ここんとこ赤勝ってるとこ見てないから今年も白だな」

どちらが勝つのか互いに予想する。ぶっちゃけて言えばななしも白が勝つとおもっている。だけど、ここは同じ女性として赤に勝ってほしいなとは思う。

「よし、出来たぞ〜」

キッチンから鍋を持った創がやってくる。ななしは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせる。鍋を置くために炬燵の上を少し片付ける。箸やお皿、その他の料理を並べる。一通り準備が終え、二人で炬燵に入りコップにシャンメリーを注ぐ

「えーと、今年もお疲れ様でしたー」

「お疲れ様ー!」

創と乾杯をし、そして一気に飲む。口の中でしゅわしゅわと炭酸がはじける。飲み終えたあとは、二人で鍋をつつく。テレビからはアイドルたちが歌って踊っている様が写っている

「んで、今年はどうだったよ〜。告白とかされたかー?」

「うん。されたよ」

「?!?!ど、どこの馬の骨じゃボケェ!?」

「嘘だよ」

「もーななしったら〜!パパ乗り込むところだったよ〜!」

「今年は成績も上がったし、新しく友達も出来たし、いい年だった!」

創を軽く無視し、今年起きたことを報告しあう。学校のこと、友達のこと、健康のこと、悪いことも良いことも思い出して、それを互いに報告しあう
時にちょっとした冗談を言い、笑いあう。

「あ、レリゴーじゃん!」

いつの間にかアイドルたちの歌は終わり、アナ雪の歌が流れる。ななしは立ち上がり、一緒になって歌う。その様子をビデオカメラに収める創。今年も娘の可愛い姿をおさめられた、とご満悦だった
レリゴーが終わったあとは何事も無かったかのように、炬燵に入り、鍋を食べる。ふーふーと息を吹きかけ、少し冷ましてから口に入れる。うん。味噌鍋うまし!

そんなこんなで時計を見れば今年もあと三時間くらいになっていた。

「マジか、今年もあと三時間だよ…」

「早いなー。今年はどんな風に年を越すんだ?」

「んー今年もジャンプして年を越そうかな〜。あ、父さん、あれ、あれやろ!あの、炎!ってやるやつ!」

「んえ〜…誰が写真撮るんだよ」

「タイマー設定してさ、ね?やろ?」

父親と言うのは娘のお願いに弱いものだ。創も例外ではない。可愛い娘が手を合わせてお願いしてくるのだ。断るはずがない。
しょうがないなと言いつつ、顔はデレッデレだった。ななしがチョロいもんよと悪い顔をしているなんて気づく余地もない


「ねえ、父さん」

「なんだー?」

炬燵の上に頬を乗せて創を見るななし。創は鍋に残ったのをおたまですくい、食べる。少し作りすぎたな〜と反省をする

「まだまだ父さんに迷惑かけると思うけどさ」

「おう」

「来年もよろしくお願いします!」

「…あぁ、こっちこそお前にたくさん迷惑かけると思うけど……よろしくな」

「うん!…まぁ、すでに迷惑かけられてるけどねー!」

「あ、このやろ。言ったな〜!」

「嘘嘘!嘘だってばー!」


またこうして来年も平和な日々を過ごして、父さんと炬燵を囲み、年を越したいなあって恥ずかしいけど、そう思ったんだ

これがトリップする前の大晦日の話


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