あれからハルたちはここサンギ牧場のオーナーと思われる夫婦の元へ駆け寄り、何があったのか聞いた。すると、どうやら二匹いる内の一匹のハーデリアがいなくなったらしい

夫婦は牧場内にいるからそのうち帰ってくると思うけどねぇ〜と呑気に言っていた。
ハルはそんなんでいいんかい。とメイと共に苦笑いしているとヒュウが一歩前に出た

そして



「ポケモンが消えたんだぞ!なんでそんなに呑気にいられんだよ!」


いきなり怒鳴り出した。
本当にいきなりなことだったので、ハルもメイも夫婦も驚いてヒュウを見た
ヒュウの顔は本当に怒っているのか結構怖かった。希色も怖かったのだろう…ハルに抱きついてきた。ハルは可愛かったのと安心させるためそのまま抱き返した

するとヒュウはハル達に背を向けて、俺も探す!と言って、さっさと牧場の奥へと行ってしまった
ハルとメイもそれに続くべく夫婦にお辞儀をしてからヒュウのあとへ続いた



「どこー?ハーデリアー?」


草むらをかき分けて消えたハーデリアを探す。希色も匂いを嗅いだり、耳を澄ましたりして一緒に探してくれている
メイとヒュウは別の場所で探している


「んーどこにいんだろ?」

『ここら、辺、いない、かも』

「かなー」

『牧場内にいるなら大丈夫だとは思うけどな』

「だよねー。でも…」


ヒュウのあの変わりっぷりは尋常じゃなかった

あんなにも怒っていて、でもどこか苦しそうな表情…。あれはきっと過去に何かあったんだろうと思う。でも、それはハルたちが理由を聞き出すことではない。ヒュウがいつか、言ってくれる、その日まで待つことにした。
メイもそう思ってるのか知らないけど、ヒュウから何も聞かずにハーデリアを探している


それにしても、


「癒されるぅ〜」


牧場内で飼ってるのか野生なのか分からないけど、メリープが草を食べていたり、昼寝していたりしてとても可愛い。本当に可愛すぎる。抱きしめたいよーいいかなー?でも怖がっちゃうよね…

一人しょぼんと落ち込んでいると、希色が何か見つけたらしく、ハル。と言ってハルの足に頭を摩り付けてきた

やっぱり希色が一番可愛いよ!!


『あ、れ』


希色の視線を追ってそちらを見ると、そこには何やらオレンジ色の足が見える。しかも藁から生えてきている。
まぁ、藁から足は生えるわけないので自然的にあれは、何かが埋まっているんだよね

埋まって、いる…?



「わ、わわわわわわ!!ちょちょちょ!大丈夫ううう?!」


急いでそっちに駆け寄り、大量の藁を希色と一緒に掻き分けると、そこに埋まっていたのはガーディだった。幸い気絶してるだけなのか大きな傷も無いし、呼吸も正常だった

ハルは急いでそのガーディを抱き上げた


「しっかりしろ!息をするんだあああ!お前が死んだら俺たちはどーすればいいんだ?!お願いだ、息をしろー!」

『??』

『死んでないから。あと、希色が困ってるからやめろ』


ごめん。一回だけやりたかった



***



『やー、あんさんらほんまおおきになー!危うく死ぬところだったわ!』


あはは!と明るく笑い飛ばすガーディ。
このガーディは先ほど藁に埋まっていた子である。オレンジ色の足を見てまさかな〜とか思ってたら本当にガーディ君だった。
あたしエスパーになれんじゃね?


「死ぬ寸前だったのによく笑ってられるねガーディ君」

『ええやん、別に死んどらんしな?それより、なんや?あんさん、俺らの言葉分かるん?』

「あー、まぁ分かるよ」

『ふ〜ん』


疑っているのか、信じてないような声を出してあたしをジロジロと見てくる
確かに、ポケモンと喋れるなどあり得ないことなので信じるわけない。ハルも絶対に疑うもんな〜と考えていた


『好きな食べ物はなんや?』

「チョコ飯!それ以外の異議は認めない!」

『いや認めろよ』

『名前からしてえげつない食べ物ちゅーのは分かるねん』

「なに言ってんの!美味しいんだよ!」

『美味、しい?おれ、食べて、みたい…!』

「希色…っ!やっぱり希色だけだよあたしの味方は!今度一緒に食べようね!」

『馬鹿たれ。やめろ…はぁ』


希色に抱きついて、チョコ飯を一緒に食べる約束をすれば恋に止められた。ちぇ
溜め息なんかついちゃって、白髪増えるぞー


『そうさせてんのはハルだろ。たく』

「うぃー、すみせーん」


謝れば、また溜め息をつかれた。
恋のキャラが最近苦労人になってきているよね。どんまい


『あっははは!なんやなんや、あんさんらおもろいな!疑って堪忍な?信じるでポケモンと喋れるちゅーことを!』


ハルたちの会話を聞いて本当にポケモンと喋れることが分かったらしく、ガーディは信じてくれた
なにこの子。めっちゃええ子やん!あ、移った

なんでガーディ君藁に埋まっていたのか聞いてみると、本人は一瞬ポカンとしてから、それのことならと笑いながら答えてくれた


『実は、腹が減ってしもーて倒れたんや。そうしたらや、俺が見えんかったちゃうんかな、ここのオーナーさんが大量の藁を俺の上に置いたんや!動く気力もあらへんかった俺は、そのまま藁に埋まってしもうた…ちゅーわけや』

「笑いながら言うことじゃなくね?!」


え、ちょ、なにこの子!なんでこんなにも呑気でいられるわけ?!
死ぬ寸前だったんだよ?!笑ってる場合じゃないでしょ!見て、希色もビックリしてるのかポカンとしてるよ!くそかわいい!

…ごほん、ガーディ君は呑気と言うか馬鹿と言うか、なんと言うか…うん。
なるほど夫婦か。あの夫婦に感化されたのか?!恐るべし呑気夫婦!!
きっとここにいる牧場のポケモンたちも呑気だよ!でも、それはそれで可愛いから許す!可愛いは正義!ジャスティス!


『とりあえず落ち着け』

「うっす」


可愛いもの大好きなハルはすぐに暴走化するらしい。前にいた世界でもそうだったが、ここに来てからグレードアップした気がする。だって目の前に可愛い生き物がいるんだもん。仕方ないよね。とハルは開き直っていた


『さっきから気になってたんやけど、その宝石はポケモンなん?』

「えっと、」


これはどう答えようかとか正直に答えてもいいのかな、とちょっと思考を巡らせた。すると恋が…あぁ。と短く答えた


『今は理由があってこん中にいるが、俺はポケモンだ』

『へぇー世の中は不思議なことがたくさんあるんやな』


うんうん。と力強く頷いているガーディ。
確かにこの宝石の中にポケモンがいるなんて誰も思わないだろう。現にハルも最初は疑っていた。だが、恋は嘘つかないってことが分かったので疑うのすぐにやめた。

しかし、ハルも恋がなんのポケモンか分からない。ポケモンってことは知ってても種族も知らない。なにタイプなのか、飛ぶのか、泳ぐのか、鳴き声はなんなのか、いつ宝石から出れるのか、ハルはなにひとつ分からない
そう考えるとハルは恋のことなに一つ知らないことになる

まったく恋は謎多きミステリアスなポケモンだね!


『せや、あんさんら何か探してたちゃうん?』

「…あ、そうだった!あたしたちハーデリアを探していたんだった!」

『早く、しない、日、くれ、ちゃう』

「そうだよね!でも、どこにいるんだろ…ここら辺にはいないみたいだし…」


ハーデリアのことをすっかれ忘れていたハルたちは再び探そうと辺りを見渡す。しかし、ここら辺はもう探していなかったので、どこにいるのか頭を悩ました。すると、今まで座っていたガーディが勢いよく立ち上がった


『そなんことやったら、俺に任せとき!ここら辺にいなかったんなら、あっちにいる確率が大きいで!ついてき!』


そう言って一目散に茂みの濃い、森の中へと入って行った。
一瞬ポカンとしたが、我を取り戻してガーディを見失わないように希色を抱き抱えてから、ガーディの後を追う


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