「おおおお、すっごーい!」


今ハルたちはヒオギシティ内にある見晴台で景色を眺めている
サンギタウンに行く前に行きたかった場所。ハルは見晴台から見える絶景に目を輝かせて見ては、気持ち良い風が吹き、うっとりと目を瞑る。希色もハルと同じみたいですご、いと小さくこぼして景色を堪能してる


「絶景かな、絶景かな」

『おっさんみたいだな』


「うるさいやい」


中身がおっさんなんて今に始まったことじゃない。女子高生ってのは見た目は女の子だけど中身はおっさんなんだよ。そういう生き物なんだよ
ふん、と鼻を鳴らしてから目一杯に広がる森を見渡した。多くの木の中にポカンと穴があくように、野原が広がっているところを見つけた。そこを見てハルは、あ、と声を零し、指をさす


「あそこらへんであたしたち迷ってたのかな?」

『場所的にはそこら辺だな』


『?ハル、迷って、た?』


「うん、そうなの。始めて来た時に迷っちゃって。もうこの森で暮らしてやる!って思ったよね」

『ハルには無理な話だな』

「そう、ズバッと言わないでくれるかい?」


ベシッと宝石を叩くと恋は少し笑いながら謝ってきた。ハルはもーと言いつつ笑って、再度景色を見る。
うん。ここは絶景スポットナンバー10にはランクインするくらい、いい景色だよ。それにしても、結構森が広くて驚く。本当にメイちゃんに見つけてもらえて良かったと心の底から思う

メイちゃんと言えば…ここでメイちゃんはパートナーを貰ったのかぁ
主人公たちの始まりの地、初めてバトルした場所、初めてパートナーを選んだ所…。そう思うとなんだか胸が熱くなって、ハルは燃え始めた

タチワキシティまでの旅だけど、すっごく燃えてきた!
恋たちと一緒にタチワキシティまで歩いて、バトルもして…ああ、考えるだけで楽しくなってきた!
確かにパパが言ってた通り、そんな楽しいことだけじゃなくて、辛いことも多々あると思う。でも、仲間と一緒ならどんな困難も乗り越えていける。そんな気がするんだ


「ハル。どうだ?景色は」

「パパ…うん。すっごく綺麗!」


景色を眺めていたら創が後ろからやってきた。ハルはニヒッと歯を見せて笑っては親指を立てた。それをみた創は、顔を緩ませた。そして、ハルの隣へ立つ。柵に少し体重を乗せるように寄りかかり、ともに景色を見る


「……もう、行くのか?」

「…うん、行ってみる」

「そっか。俺はここでハルたちと別れたら当分顔を出せない。結果は恋を通じて聞くから」


うん、と言うと風がビュオッとふく。ハルは乱れる髪を片手でおさえる。チラリと隣を見ると、創はおさえることもせず風に身を任せていた。そして、しばらく見ていると創と目が合い、ニヤリと笑った


「お?なんだなんだ?パパと離れるのが寂しいってか〜?パパもハルと離れるのは寂しいよ〜〜」

「いや、寂しくはないわ」

「嘘でも言おうよ。ね?」


創は、はぁと溜め息をこぼしてくるりと景色に背を向けるよう体を回転させた。空を見上げてから、自分より低いハルの頭をわしゃと撫でる


「…ハル、いってらっしゃい」

「…うん!いってきます!」


創の前に立ち、笑顔で元気にこたえた。創もまた笑顔で手を振り、見えなくなるまでハルを見送った。
ハルたちは、この絶景なる見晴台を、始まりの地…ヒオウギシティを後にした


***


タウンマップを見つつ、サンギタウンを目指して草むらの中を歩く。
ゲームとは違って野生のポケモンたちはトレーナーに戦いを挑みには来ない。こちらの様子を見て、自分たちに害を及ばさないと分かったらハルたちのことを無視することが多い

ハルは草むらにいるチョロネコとかミネズミをかわいいなぁーなんて頬を緩ましながら、前へと進む。
すると前方に見知った女の子がいた


あのダブルお団子ヘアの女の子は...


「メイちゃん?」

「え…?あ、ハルちゃん!」


こちらに気づいたメイはハルの方へ向かって走って来た。
手を大きく振りながら走ってくるメイに対して激カワユス!と手で口元を隠すと、抱きかかえていた希色がびっくりしてハルの方をみた

希色はこちらに向かってくるメイに対して、少し怯える素振りを見せた。
そうだ、希色にメイちゃんは怖くないよって伝えなきゃね。初対面の人は怖がるけど一旦その人が怖くないって認識したらあまり怖がらなくなるんだよ。
これ、一緒にいて分かったこと!


「ハルちゃんも旅始めたんですね!」

「うん、まぁ…一応ね!あ、それと…ジムバッジも手にいれたよ!」

「本当だ!私と一緒ですね」


ニコニコと笑うメイがあまりにも可愛すぎて、ハルはでゅへへと頬緩ませていた。もちろんメイには見られないよう、少し俯きながら

すると、何かを思い出したのかメイは、あっと言って両手をポンと叩いた


「そうだ、ハルちゃん。これから私と一緒にサンギ牧場に行きません?」

「サンギ牧場?」


聞いたことのない単語にハルは首を傾げるとメイは手を合わせたまま、うんと元気よく頷いた


「そうです!歩いてすぐのところにあるんですけど…どうかな?」

「へぇ〜…んー、じゃあ行こうかな!」


快くOKの返事をすればメイはパァァァと表情を明るくさせて、ありがとうと素晴らしい笑顔で礼を述べた

本当かわいいなー。つか、あたしこれしか言ってない気がするよ。
でもサンギ牧場か…やっぱり聞いたことないなー。今の時間軸は二年後のイッシュなんだよね。だから、始まりも新しく出来た場所なのかな?
現に新しいベーシックバッジがあるしねー

まさか、これから旅する場所全て知らないところだったり〜と自分に冗談を言うが、あまりにも笑えない冗談なので、忘れるよう頭を振った


「あ、そうだ…私の相棒紹介しますね」


メイが一つのモンスターボールを取り出して、えい!という可愛らしい掛け声と共に少し上に投げる。宙を舞うボールの中からツタージャが一回転して地面に着地した

ハルはツタージャの身軽さに思わず感心の声と拍手を送った。するとツタージャは少し照れたのか、はたまた迷惑だったのかしらないけどプイとそっぽを向いた

ごめん。可愛い!


「ツタージャのナノハ。私の相棒です」


ねーと言ってナノハを抱き上げては嬉しそうに頬ずりをし始めるメイ


『えぇい、鬱陶しい。離れろ』


少し迷惑そうな身振りをしたり、口ではああ言ってるけど、顔は満更でもないみたいで2人の仲の良さに微笑ましく眺めていた


「あ、あたしの番かな?この子はコリンクの希色!ほら、メイちゃんは怖くないから大丈夫だよ」

『…ん、よろ、しく…』


お辞儀をしてからそそくさハルの方に顔を向ける。やっぱり、直ぐには無理か…と思い、メイに理由を話そうと下げてた顔を上げる。すると彼女は首をゆっくりと横に振ってから希色に向かってニコッと笑い、よろしくね。と挨拶をした

そして、ハルは知った。
あ、この子は本当に主人公なんだ。と

すべてを優しく包み込むような雰囲気をメイから感じ取り、ハルはメイのことをジッと眺めていた


「希色くんがハルちゃんのパートナーですか?」


急に声をかけられ、ハルはビクッと肩を揺らす。完全に別世界に行ってたわ…
その様子にメイは頭にクエスチョンマークを浮かべながら頭を傾げる。ハルは急いで頭を横に振り、答えた


「え、あ、ううん。あたしのパートナーは今ちょっと出掛けてていないんだ。また今度紹介するね」

「そうなんですか…。はやく帰ってくるといいですね!」


メイの天使並みの笑顔を見て、ハルは嘘をついたことに心を痛める。恋は自分が宝石に入ってるからなのかもしれないが、ハルが誰かと話す時は大抵黙ってしまう。なので、話して欲しくないのかなと思い、ハルは恋のことは誰にも話していない
まぁ、宝石がパートナーですって言っても、頭大丈夫かよみたいな目で見られるのがオチなんですけどね!

お互いの手持ちの紹介も終えて、目的地であるサンギ牧場へ足を歩み始めた

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