腕を組み、壁に寄りかかったままこちらを見てニコニコと微笑む創。そんな創の姿を見て、ハルはドアノブを握りしめた状態で目をパチパチと瞬きしてフリーズする。
彼女の頭の中は真っ白だったが、次第に目の前にいるのが自分の父親だと言うことを把握し、頭の中で疑問の嵐が起こる

…は?なんで、パパがここに……いるの?どういうわけ?え?あたしは元の世界に帰れた、の?
......いや、そんな訳がない。
だってあたしん家の内装はこんなんじゃないし、何より背後から聞こえてくるマメパトの鳴き声がまだここはポケモンの世界だと言っている。

じゃあ、どうしてパパがここにいるの?!


「ハル、何してんだ、早く入ってそこに座りなさい」

「え、あ、うん...」


ハルは創の言う通りにドアをしっかり閉めた。父親の後を追うかのように靴を脱ぎ廊下を歩く。靴下越しから伝わる冷たさに少しばかり冷静さを取り戻す。
リビングに着くと創はソファに座るように促す。ハルは言われた通りに椅子に腰をかけた。そして、目の前にコトリと温かいココアの入ったマグカップを出され、ハルの隣に創が座る

そっと視線をあげれば、創がニコニコ笑っていて、ハルは安堵の息を吐き、マグカップに手をつけココアを飲んだ。
そして少し飲んだところでマグカップをテーブルに置き、創の目をみた


「どうして、パパが、ここに?」

1番最初に疑問に思ったことだ
それもそのはずだろう。ハルと創は元はポケモンのいない世界にいた。なのに、ハルはなんらかの理由でこっちに一人で来た。

きっとハルを知る人はいないと思った矢先だ。ハルには帰る家があり、そして家の中に焦ることも疑うことも無く平然と創がいた

まるで、何もかも知ってたかのように


「どうして、なぁ...。本当はハルと会う気も言う気もなかったんだけどな。だけど、血は繋がって無くともハルは俺の世界でたった一人の娘だから、やっぱり心配で」

「お、おぉ、佐用ですか...」

「...なぁハル」

「はい、」

「俺、人間じゃないんだ」

「佐用でござ...え?」

「うん、だからな俺は人間じゃなくて、ポケモンなんだ」


目をパチクリとして創の顔を見やるハル。頭の中は創が何言ってんのか分からなかったが、どこか冷静な部分があり、あれ、これさっきも同じ様な会話した記憶がありけり。なんて思ってるところもあった

実際に創が言ったことをきちんと理解するのにたっぷり数十秒かかったとか


「え、は、ええええええええええ?!と、とととと、パパがぽぽぽポケモンんんんんんん?!」

「そう。ポケモン。なぁ?宝石の住人さん」


ニコッと笑ってハルの首にぶら下がっている宝石を見る創。ハルも恐る恐る視線を下げて恋を見つめた。
最初は微動だにしなかったのに、諦めたのか、はぁと溜息と共にカタリと少し動いた


『あぁ、その通りだ。その変態はポケモンだ』


「へ、変態…ぶふ」

「変態じゃねえ。ただの親バカだ。あとハル、笑うな。否定しなさい」

「否定するところが無かったんだけど…」

『無理難題押し付けてきたな』


「マジないわー」

「うっ、うっ!ハルが!そんな反抗期にぃぃっ!パパ悲しい!」

「本当のこと言っただけだもん!」

「結構傷つくぞそれ。てか、もんって…もんって!本当我が娘はかわいいな…」


キラッと星が飛びそうなくらい素敵なウィンクをしてみせる創に対して、ハルと恋はキモイと返した。
すると、酷いぞハルー!なんて泣き真似をするもんだから、どうしてパパはこんなにも残念なんだろうとつくづく思うハルであった


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