これは一体全体どうなってんだ…と未だにカタカタと揺れている宝石を見つつ立ち尽くしているハル
何故宝石が勝手に揺れて、何故宝石から笑い声が聞こえるのか…
聞き間違えじゃない?って思うかもしれないが本当にこの宝石から笑い声が聞こえ、動いているのだ。何度も確かめました。
宝石に耳を当てたあと、周りに誰かいないか確認してから、また宝石に耳を当てて。それを何度も繰り返しましたからね…マジもんですよ…
マジでどうなってんの?
「えっと、あのー…宝石さん?」
『は、はは!な、なん、だ?ぶふっ』
「えっいや…あの、なんで宝石から声から…?その中に何か仕込まれてるんですか?」
『いや、ちがっうんだ…ふふ、これには、訳がっヒー…あってな』
「ちょっ笑すぎじゃね?どんだけ笑うの?!」
『いや、あまりにも、はー…ハルの顔が、ぶふふっ面白く、って!』
頑張って笑いを抑えようとしているのが分かるが、どうしても抑えきれていない。もう、こうなってしまえば思いっきり笑って欲しいくらいだった。なんだか見てるこちらが恥ずかしくなってくるだけだ
つか、何?笑っているのはあたしの顔が面白くて笑ってるってことだよね?えっと、それって失礼じゃね…?オイこら待て。何それ。人の顔を見て笑ってんのって失礼極まりないよ!しかも初対面だからね、あたし達!初対面の人に笑われてるよ!
一人で猿みたいにムキーッと怒っていると、宝石から『あはは!』とさらに笑われた。
それにムッときたハルは怒った顔でジッと宝石を見つめた。宝石はヒーヒー言いながらも、どうにか笑いを抑えてハルに謝った
『はー…悪い、俺が悪かった。だから機嫌を直してくれ。な?』
反省しているのだろう。本当に申し訳なさそうに謝ってくる宝石さん。ハルはそっぽ向けていた顔を、ゆっくりと宝石へ向ける。
笑いもおさまってるし、ちゃんと謝ってくれているのだから、許さないわけがない。ハルは一つ頷いて、宝石に笑顔を向ける
「もういい"っ…てぇ」
……噛んだああああッ
もういいですよって言おうとしたのに舌噛んだあああッ。嘘でしょ、まさかそこで噛む?しかもめちゃくちゃ痛い!噛んだ舌めちゃくちゃ痛いよコレ!
噛んだ痛みと後から恥ずかしさがこみ上げ、頬を赤く染めた。そして先ほどの事で分かったことだが宝石さんはとんだ笑い上戸である。いま、また笑えるネタが出来てしまったので宝石さんは笑い始めるだろう……。ハルは噛んだ自分を殴り飛ばしたい気分に陥った
しかし、予想とは違った反応が返ってきた
『大丈夫か?血は出てないか?』
笑うことは一切せず、舌を噛んだハルの心配をしてくれた。その優しさにジーンと感動を覚える。舌足らずな言葉で宝石に礼を言う。宝石からは、そうかと安心した声が聞こえ、またその優しさに泣きそうになる
てかこっちの様子見れるんだ…。カメラが入ってるのかな?
色んな角度から宝石を観察した後に、あっと何かを思い出した
「そんなことより宝石さん!これはどうなってるんですか?あたしさっきまで家の玄関にいたのに、何故か自然豊かな場所にいるんですけど…」
『どうなってる、か…。そうだな…』
ふむと考えこんでしまった宝石。ハルは宝石のその反応に少し、いやかなり不安を感じた
すごく…嫌な予感がする
そして、少し考え込んでから宝石が意を決したのか言葉を発した
『ハル、これから言うことに偽りはない。全て真実だ』
「?は、はい」
『ーー…あのな、ここは……』
悪い勘ってほど当たるモノはない
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