ジリジリとアスファルトとハルを照りつける太陽を背に、両手に今日の夕飯の具材などが入ったビニール袋を持って歩く。太陽よ、もう仕事しないでくれ…そう心の中でぼやくが太陽は依然とハルを照りつけてくる

これも全部パパのせいだ…。学校が終わり友達と楽しく会話を弾ませながら下校していると一件のメールが届いた。ハルは友達に断りをいれてメールを確認すると

「愛する娘へ 今日の夕飯はシチューにしようと思う。お前にこんなことを頼むのは心苦しいがシチューのルーと具材を買ってきてくれ。お父さんは今心を痛めてこのメールを打っている…それだけはわかってくれ」

などとこの後も長ったらしく(娘へのラブが)書いてあるが、ハルはその先は読まずメールを閉じた。なんだかんだ言っているが、要は自分は動きたくないのだろう。
なんて父親だ

友達と別れたあと、スーパーに寄りシチューのルーと具材をカゴにいれ、あと冷凍食品やお菓子も入れてお会計を済ます。荷物はそこまで重くないのでハルだけでも持っていけるが、ギンギラギンと輝く太陽の下をまた歩くのかと思うと少し億劫だ。
でも早く帰ってゲームをしたいハルは覚悟を決め、スーパーから一歩、外へ出た


「あっづ…」


額から伝わる汗を肩で拭き取るが次から次へと汗が流れてくるため、拭うのをやめようかと思う。だが目に入ったら最悪なので面倒だと思いながらも肩で汗を拭い続ける
手汗でずれ落ちるビニール袋をガサリと音をたてて持ち直す。
今頃気づいたがこんなクソ暑い日に何故シチューをチョイスしたのだろうとパパの頭を心配し始める

ハルのパパこと、創(はじめ)は本当の父親では無い。ハルが赤ん坊の頃、玄関の前にタオルに包まれて捨てられてたそうだ。置き手紙も無く、ただ一人、ひたすら泣き続けるハルを抱き上げて部屋へ戻ったんだ、と創から聞かされた時、ハルは固まってしまった。
固まったが、不思議とショックは然程受けていなかった。確かにショッキングな内容ではあったが、わんわん泣き散らかすほど悲しくも辛くもない。

それはきっと…悲しみを感じぬほど創がたくさんの愛情を注いでくれたからなのかもしれない。だから、ハルはそっかと笑って返事をした。


そんなこんなで汗を滝のように流しながらもマンションへ辿り着き、自分の部屋の番号を入力してインターホン鳴らせば、ガチャリと無機質の音が鳴った後に、聞きなれた声がスピーカー越しに聞こえた

「はい」

「あ、パパ?あたし、ハルだよ」

「んんんんっハル!お帰りなさい!ちょっと遅いからお父さん心配しちゃったゾ!」

「いいから開けて」

娘が冷たくたってパパ頑張る。そう聞こえた後にガチャと音が鳴ったのでハルはそのまま自動ドアを抜けてエレベーターへと向かう。
その際にお隣に住むおばちゃんが先ほどの会話を聞いてたらしく、相変わらず仲いいのね〜!と言ってくる。ハルは少し顔を赤くし、おばちゃんに会釈をしてから逃げるようにエレベーターへ乗った。ハルだってお年頃だ。あんな会話聞かれたら少し恥ずかしいのである。
心配してくれてるのは分かるし有難いが大声で言わなくてもいいじゃないか…

自分の階の数字が光り、チンッと音と共にドアが開いたのでハルは床に降ろしていた荷物を持ち、部屋へと向かう。
ようやくこの灼熱地獄から抜け出せる…。ハルは額から伝ってきた汗を拭い、荷物を片手にまとめて持ち、インターホンを鳴らそうとすれば、ガチャリとドアがタイミング良く開いた。いきなり開くものだからビックリしたが、中から創が満面の笑みで迎えてくれた

「おかえり」

「うん。ただいま!」

玄関に荷物を全部置き、ローファーを脱ぐ。創はハルのスクールバッグ以外の荷物を持ち、リビングへ歩いて行った。ハルはローファーを綺麗に並べてからスクールバッグを持った。どうせなら一緒に持って行ってくれたっていいのに…と少し不貞腐れたように言えば、創はニンマリと笑った

「ハルちゃんは大きくなっても重いもの持てないのでちゅね〜」

にやけた顔でしかも赤ちゃん言葉で言ってくるもんだから、ハルはムッときて、スクールバッグを上に掲げる。重いものも持てますよアピールをすれば、創はカラカラと笑った。
くっ…確かに横着しようとしたあたしがいけないのかもしれないけど…けれども!あの顔…は、腹立つ〜…

しかし、創は顔良しスタイル良し家事だって出来るほぼパーフェクト人間なのだ。何をやっても様になっている。こんな美形の遺伝子を受け継いだら誰でも美形になれそうだな〜なんて思いながらバッグを床に下ろすと、具材を切っていた創が何か思い出したかのように、ハルの方へ振り向いた


「そうだ、ハル。風呂沸いてるから先に入っちまえ」

「わかったー」

「そーれーとーもー…パパと一緒に入る〜?」

美形でスタイル良くて家事だって出来ちゃう創だが、親馬鹿な面があるため、ハルは残念なイケメンなんだなと憐れみな視線を創に送って脱衣所に入って行った


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