「ちょっと着いてきてくれるかな?」
アーティさんにそう言われ、断る理由は無かったので二つの返事で返した。
一番端にポッカリと空いた穴を通れば、一気に下まで降りれる事が出来た。穴の中に入るのを戸惑っていたハルだが、恋に物理的に背中を押された。心の準備が出来てなかったハルは絶叫しながら下へと降りていった。感覚はウォータースライダーみたいだったと後に語る
それより許さんぞ、恋
ジムを出れば人混みは来たときよりか酷くなっていた。ひとつ違うところは、せかせかと急いでいる人はいなかった。その代わりに、みんな困っていた。きっと四番道路が通れないからだろう
アーティさんはそんな人混みの中を割って入っていく。ハルも置いていかれないようその後を追う。
「さっきも聞いてたとは思うけど、この先にある四番道路でイワパレス達が暴れているんだ」
時間縮小のため、移動しながら状況説明をする。周りがざわついているので少々聞き辛い。聞き逃さないよう、集中して話を聴く
「数は4、5体。僕ひとりじゃ足りないから君にも手伝って欲しいってことなんだ」
いいかな?少し振り向きながらハルに問いかける。ハルは少し悩み、恋を見る。彼は静かに頷く。腰についているモンスターボールも上等と言わんばかりに動いた。
「分かりました。あたし、手伝います」
「…ありがとう、本当に助かるよ」
アーティさんの安心した微笑みを見て、少しばかり照れた
四番道路へ続くゲートまでやってくる。入り口は立ち入り禁止のテープで塞がれていた。脇にいた警官がアーティさんを見るとひとつ敬礼をしてから、入り口を塞いでいたテープを取る。アーティさんは会釈をして中へ入っていく。ハルもそれに続こうとしたら、警官に止められてしまった
「君、この先は危ないから入ってはダメだ」
「えっ…いや、あたしアーティさんのお手伝い…」
「いいから子どもは家に帰りなさ」
「あ、その子僕の手伝いをしてくれる子なので通して下さい」
子ども扱いされ少しムッとしたところ警官にアーティさんがそう言ったのだ。警官は慌てて謝ってくれ、ゲートへと通してくれた。やはり身長欲しいわ
彼の半歩後ろを歩く。このゲートの先が怖くなってくる。でもアーティさんもいるし大丈夫だろう。
「…これは、また」
ゲートを抜けてハルたちはひどく驚いた。二年前と今の四番道路はものすごく変わっていたのだ。キチンとされてなかった道路はこの二年で綺麗に整えられており、設備もしっかりとしていた
だがハルたちはその事で驚いたわけでは無かった。その整えられている道路で例の4、5体のイワパレスが暴れていたのだ。
普通の暴れ方ではない。辺りにある物を片っ端から壊しまわっていた。また呻き声を上げ、これは尋常じゃないと察した
「これは流石に予想外だね…」
アーティさんでさえ、酷く困惑していた。彼曰くここに住むイワパレス達は温厚な性格らしい。なのでこのように暴れるなど一度も無かったと言う。
何が原因でこんなに暴れているのか…。検討もつかないとのこと
「ど、どどど、どうしましょう…っ」
「取り敢えず、イワパレス達を止めなきゃだめだね。ハルちゃん、手を貸してくれ!」
「は、はいぃ!」
二人とも戦えるポケモンを全てだす。アーティさんはクルマユとハハコモリ、ハルは夢と花火を出す。
ボールから出た瞬間に花火は威嚇し、夢はおやおやと呑気な声をこぼす。希色は先ほどのアーティさんとのバトルで傷ついているため出さなかった
こちらに気がついたのか、イワパレス達は一斉にこちらに睨みをきかせてきた。その気迫にハルはたじろぐ
「ハルちゃん、負けちゃだめ。こちらも負けないよう睨み返すんだ」
「は、はいっ!」
言われた通りにキッと睨み返す。少しだが、気持ちが前にでることが出来た。
未だにどちらも睨んだまま動かない。どちらかが動けばバトル開始だろう。冷や汗がたらりと垂れる。
きっと1分程度しか経っていないだろう。しかし、その1分がとてつもなく長く感じた
そして、ついにイワパレス達が動き出した。
頭の中でコングが豪快に鳴った
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