上空でバルジーナの上に立っている人物…アカネ
あのプラズマ団の怯えようから、彼女は幹部であることが一目瞭然である。
しかし、怯え方が尋常ではない。脚ががくがく震え、顔は青を通り越して真っ白、冷や汗がとめどなく溢れている

彼が…怯えるのも分かる気がする
アカネという彼女はまだ何もしてないのに、こちらを見る目、声が冷たい。あまりの冷たさにハルも冷や汗がタラリと垂れる
それは恋たちも同じようだ。恋はよく分からないが希色は震え、花火は顔をしかめている

ハルたちが一歩も動かない中、彼女は地上へ降り、いまだに震えているプラズマ団へ近寄った


「聞こえなかったのかな?君は、ここで、なにを、してるのかな?」

「も、もももも申し訳ございません!私、ぽぽぽポケモンを、もってお、おおおらず!」

「…ふーん。なるほどね。状況は掴めたよ。僕たちプラズマ団の邪魔をする奴から逃げてたんだけど、ポケモン持ってないからバトル出来なくて迷ってた。ってことかな?」


恐怖のあまりかプラズマ団は声を発さず、その代わりに首がもげるんじゃないのかと言うくらい首を縦に振った。

アカネはニコッと微笑んだ。
それをみたプラズマ団は少し気が緩み、ホッとした瞬間だった


「バルジーナ、悪の波動」


バルジーナの口から繰り出された悪の波動はプラズマ団の腹部に当たり、彼はそのまま後ろへ飛ばされ、石に体をぶつけ倒れた
動かないとこをみると彼は気絶したらしい

あまりにもいきなりなことにハルは動揺が隠せなかった
いくら失敗したからって部下に攻撃するなんて、そして指示を出す時に、彼女には部下を攻撃することに一寸の迷いがなかった…


「君は、もう、いらない」


気絶しているプラズマ団に冷たくそう言い放った。そして、くるりと体を回転させて、こちらを向いた


「君が僕たちプラズマ団の邪魔をするって奴は」

「………。」

「無言は肯定。よくないなぁ…人の邪魔をするのはとてもよくない事だよ。親に習わなかったかな?」

「…その台詞…そのままお返ししますよ」


喉を振るわせ、やっと言葉を発することが出来た。それほど、目の前にいるアカネ…という人物の威圧感が半端ないのだ
ハルの言葉を聞いたアカネは、キョトンとした顔をしたが、すぐにクスクスと笑い始めた


「きみ…言うねぇ…。んん?それより…どこかで見たような顔をしてるね」

「あたしは…あなたのこと知らない、ですけど…」

「何かの間違えかな?…まぁいいや。さて。僕たちプラズマ団には夢がある。それを邪魔されちゃあ嫌だからね…。今、ここで、きみを、潰すことを、僕は、決断した」


アカネがハルに向け指をさした瞬間、なんとも言えない恐怖心と寒気が身体中を駆け巡った。彼女の威圧感に、ここで胃のものが全て出そうになりそうだった

怖い、すごく怖い…まだ何もされてないのに…否、これから何をされるのか…怖くて仕方ない。
だけど、やらなきゃ…これ以上、ポケモンたちを苦しめさせないため、あたしは、やるんだ!

震える手をもう片方の手で掴み、深呼吸をしてから希色と花火をモンスターボールから出した。ハルの決意が伝わったのか、希色は怯えることなく花火と同じようにアカネに対して威嚇をし始めた。
ハルも二人を見習って、アカネをギッと睨む。

彼女は先ほどから変わらない表情…口元が弧を描いたままバルジーナを戻してから、腰に手をやり、一つのモンスターボールを宙へ投げた。出てきたのは、ジョウト地方に主に生息しているヘルガー。


待って…なんでバルジーナを戻したの?
なんでヘルガー……一匹なの?

怪訝の顔をしている中、彼女は変わらない声質で言い放った


「さぁ、始めようか?」


そう言われてから1分ほど経った今も、ハルもアカネも指示を出していない。両者、相手の様子を伺うかのように互いを見ている

いや、それよりも…なんでバルジーナを戻したの?ここはダブルバトルじゃないの?これじゃあ、2対1で完全にあっちの不利じゃあないか…


そんなハルの考えてることが分かったのか、アカネはまたハルに指をさして高々と宣言した


「君相手にこの子一匹で十分だよ」


ふふ、と笑うアカネを見て、ハルは思った
あぁ…馬鹿にされてる
確かにあたしはまだ弱いかもしれない。でも、これでもジムバッジを二個所持しているトレーナーではあるんだ…!


「なら、遠慮無しに行くんだから…っ!花火、睨みつける!希色、スパーク!」


花火がヘルガーに対して睨み、防御が下がったところを希色がすかさずスパークで突進していく。
…が


「焔、避けて」


本当に、本当に…もう避けられないだろうと言うところまで行ったのに、あのヘルガーは軽々しくかわした…そして…


「焔、火炎放射」


スパークのまま突進した希色は、かわされるとは思わなかったので急ブレーキが遅れ、火炎放射を避けることが出来ず、そのまま直撃してしまった


『あう…っ!』

「き、希色!」

「焔、コリンクに噛み付いて投げ飛ばせ」


ハルが花火に指示を出す前に、アカネはヘルガーに指示を出した。
ヘルガーは希色の後ろ足を容赦無く噛みつき、そのままハルたちの方へぶん投げた

ハルは一瞬呆然としていたが、直ぐに意識を取り戻し、飛んでくる希色を受け止めた


「希色!大丈夫?!」

『う、あ、だ、大丈、夫…!』


『きいくん、少し休み!足から血ィ出てるで』


先ほどヘルガーに噛まれた前足から血が滲んでいた。あまりの痛々しさに顔を顰めるが、希色は大丈夫も一言呟いて、またヘルガーと向き合った


「気合い入れていくよ!希色、怖い顔!花火、アイアンテール!」


希色の怖い顔で相手の素早さ下げてから、花火は尻尾を鉄のような銀色に染め、そのままヘルガーに降り下げた


「焔、だましうち」


尻尾を降り下げた先にはヘルガーはおらず、代わりにヘルガーは花火の後ろに回り、後ろを振り返る前にヘルガーの尻尾が花火に直撃し、そのまま地面に叩きつけられた


「花火!」

『平気、や!はよ、指示を…!』

「!花火、突進!希色は雷の牙!」


前方からは花火が猛スピードでヘルガーに突進するが、ヘルガーはそれを難なくかわし、後ろ足で花火を後方から来ていた希色へと蹴り飛ばした

あまりにも急なことだったので態勢を整えることも出来ず、気づいた時には二人はぶつかり、小さく呻き声をあげてその場に倒れていた


これでもハルは真面目に戦っているのだ。
何が良くて、どんな技を出すのがベストなのか、自分なりに考えて指示を出していた
だが結果は惨敗だ。目の前が白黒する。冷や汗が止まらない。言葉が出ない。

うそ、なんで、そんな、こんなこと…



「飽きた」


倒れている二人を呆然と見つめているハルに冷たく言い放つ言葉
ハルはゆっくりと視線をアカネに移した。そこには先ほどまで興味深々だった表情が今ではまるで、生ゴミをみるような目でこちらを見ていた


「そう、とてもつまらない。こんなつまらないバトルしていても時間の無駄。」


つまらない。時間の無駄。
それを意味するのは、あたしが相手と互角に戦えていない……あたしの弱さ…


「こんなバトル…とっとと終わらせるべきだ。焔、悪巧みをしてから" 煉 獄 "」


悪巧みをし一気に特攻をあげたせいなのか、それともこのヘルガーの元の能力値が高いからなのか分からないが、ヘルガーの口から出ている炎は、尋常じゃないくらい花火の火炎放射とは比にならないくらい、大きく熱く燃え上がっていた

あまりの大きさにハルは一瞬呆気をとられていたが、今、希色と花火は大きなダメージをくらっている。なのにら更にこんなもの受けた暁には一溜まりもないと思い、ハルは急いで二人の元へと駆け寄る
目の前の炎は更に大きくなっていく


「放て」


アカネの冷たい言葉と


『っハル!!!!!』


恋の声を聞き、ハルは二人を抱きしめ、目を固く閉じた


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