ガーディの後を追い、少し長い草むらを片手で掻き分けて進む。すると、ガーディがいきなり立ち止まった。
ハルは頭にクエスチョンマークを浮かべて声をかけようとすれば、ガーディに『しー、静かに』と言われた
ハルは言われた通りに静かにし、物音をたてず細心の注意を払い、ガーディのそばまで行く
『あれ、みてみぃ』
ん、と顎でさされた先に視線をやるとそこにはハーデリアと黒い衣装をまとった男性がいた
誰だ、あの人。と思い目を細めて男性を見ているとガーディが説明をしてくれた
『あいつらは二年前に解散したはずのプラズマ団ちゅう悪の組織や。理由は知らんけど最近復活したらしいで』
「ぷら、ずま…団」
あれが復活したプラズマ団か
二年前のあの白と水色の衣装ではなく、黒でスマートな衣装になっており、誰がどう見たって悪党にしか見えない。まぁ、悪党なんですけど
とりあえず、だ。どうしようかな。今のところプラズマ団がブツブツ独り言言ってるだけでハーデリアに何かしたわけでもないみたいだし。早く返してもらった方がいいよね
しかしハルは、一人で行っていいのだろうかと頭を悩ます。ここは、まずはみんなを呼んできたほうが安全なのか。だが、みんなを呼んでいるうちに、プラズマ団がハーデリアを連れて何処か行ってしまうかもしれない。
う、うーむ。どっちのほうが得策なんだろうか…
うーん。と頭を悩ましているとプラズマ団の独り言がちょっとだけ聞こえてきた
「くそ、どーしようかな。こいつ捕まえるのにも道具持ってくんの忘れたわ…」
あ、この人、きっと阿保のひとだ
「でも何か収穫がねぇと、アカネ様に怒鳴られるぞ…!」
おー、これはきっと幹部であるアカネ様に怒られることを恐れているな
てか、アカネ様って誰やねん。新しい人物なのかな?二年後だし、あり得るね
『…ア、カネ…』プラズマ団の幹部であろう人物の名前を小さく呟く恋。ハルは、そのアカネって人を知ってるのかと思い、どんな人か聞こうとすれば、ドカッと言う鈍い音とキャンとか弱く鳴く声が聞こえた
視線を宝石からプラズマ団の方に向ければ、プラズマ団の足元にはハーデリアが横たわっていた
「さっきから平然といやがって、腹立つんだよ!」
ぶちん。とハルの何かが切れた
何かがって?そりゃあ、
あたしの堪忍袋の緒だよ
『ちょ、あんさん?!』
ハルは希色をモンスターボールの中に入れてから、ガーディ君の呼びかけにも反応せず一目散にプラズマ団の元へ走って行った
プラズマ団もさすがに気がついたらしく、こちらを見たが、もう遅い
ハルは地面を思いっきり蹴って、少しだけ宙を舞い、そしてそのままプラズマ団の背中に
「はい、どーん!!」
「がごふっ」
プロ顔負けの飛び蹴りを食らわしてやった
やべぇ。ちょー綺麗に決まったよ
初めて決めたよ。いつも練習台として父さんにやってたけど、こんなに綺麗に決めたの初めてだよ。あたし、すっげぇー!
見事プラズマ団に飛び蹴りを決めて、綺麗にとはいかなかったが地面に着地し、プラズマ団はズシャアアと地面にこけた
「やばい、すごくない?!いまなら逆立ち出来そうな気がする!」
『逆立ちかよ。てか、ハル!危ないことはすんな!』
『怪我、しちゃう、よ!』「うん、ごめんね。今度から気をつけるよ!」
宝石と希色が入ってるモンスターボールをひと撫でしてから、横たわっているハーデリアのそばに駆け寄る
蹴られたところはそこまで大事になってなかったらしく、ハーデリアも少し痛そうにしていたが平気そうだった
急いでエナメルバックから傷薬を取り出して蹴られたところに吹きかけ、湿布を貼った
毛がもさもさしてて貼りにくい…!
でも、気持ちいいからずっと撫でてたい…
毛をもさもさと撫でていると、後ろで倒れてたプラズマ団がいてて、と言って起き上がったらしい
「この、くそ餓鬼!なにすんだ!」
「それはこっちの台詞ですよ。なにハーデリアに八つ当たりしてんすか。大人気ないすよ」
「なんだとー?!このやろー!ポケモンバトルでお前をケチョンケチョンにしてやる!…と言いたいところだが…」
子供かと言いたいくらいムキーッと地団駄を踏んでいたプラズマ団は、急におとなしくなった
ハルは怪訝な顔をして、プラズマ団を見ていると、ハルの顔にべちーんと何かが当たった
「ポケモン持ってねぇし何もないから、今日のところはここでおさらばしてやるー!覚えてろよー!!」
覚えてろよーじゃないよ。覚えてろよーじゃ
痛いよ。地味に痛いよあほんだら!
てか、なに?何が顔に当たったわけ?!
顔に当たった物を手にとってみれば、それはタチワキシティ観光マップだった。
観光する気満々かよ!
なにしてんだよ!なに悪の組織が観光マップ持ってんだよ!仕事しろよ!いや、やっぱ仕事しなくていいや
プラズマ団の方を見れば、逃げ足が早かったらしくもうこの場にはいなかった
とりあえず、観光マップをバックに入れてからハーデリアに話かけた
「大丈夫、じゃないよね?」
『ううん。助かったわ。ありがと〜』
やっぱりあの呑気夫婦に感化されたのか、特に気にした風でもなくのほほーんと答えた。
強者だなーと思いつつハーデリアの頭を撫でていると、ガーディがこちらに駆け寄ってきた
『なんやあんさん、えらい結構無茶しよるなー』
「えへへ、そうかなー」
『褒めてない』少し照れれば、恋にばっさり切り捨てられた。し、知ってるよそんくらい!ちょっとくらいポジティブに考えさせてくれよ!
『あんさんみたいにポケモンを想ってくれるモンが沢山おったら、世界は平和なんやろーな』
ガーディはうんうんと頷いてそう言った
あたしはそんなに出来た人間じゃないけど、でも、ガーディ君の言う通りここの世界の人間がポケモンたちを想い、優しくしてくれる人たちだったら……世界は平和だったに違いない
どこもかしこも幸せであり溢れていたと思う
あたしも、すこしでもいいからそのお手伝いをしたいと思う。
すこしでも笑顔が、幸せが増えるように
「…頑張ろうね」
『あぁ』
『ん、!』その様子を見ていたガーディはまた大きく頷いてからニコッとハルたちに笑いかけた
『あんさんの心意気に惚れた!俺を仲間にしてくれへん?』
「え、えええええ?!」
『なんや?嫌やか?』
「いや全然オッケーなんだけどさ、あたしなんかでいいの?」
『あんさんだから仲間になりたいねん!ええやろ?』
そんなことを笑顔で言われたら断ること出来ないだろー!いや、断る気さらさらなかったけどね
「うん、いいよ!じゃあ、あなたの名前はー…」
『お、なんやなんや!気になるわー!』
わくわくと言ったような様子で発表される名前を顔を輝かせて今かいまかと待っていた
ちなみにハルは、だらららと口で効果音をいっている
「ででん!花火ってのはどうかな?」
『はなび、ええやん!気に入ったわ!これからよろしゅー頼むで!』「よろしくね!あ、そういえばあたしたちの自己紹介してなかったよね。あたしはハル!この宝石が恋でこっちが希色」
『よろしくな』
『ん、よろ、しく!』花火に宝石を見せ、ボールから希色をだした。2人とも花火に挨拶するとよろしゅーな!と明るく元気に返事をしてくれた
こうしてハルたちにまた新たな仲間が増えた
『あ、せや。ハルちゃん』「んー?なーに?」
『パンツ見せて』「黙れ変態」
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