何が起こったかなんて分からない。
ただ目の前が真っ赤になったと同時にバチバチ!と言う電気の音が聞こえて、全身に鋭い痛みが走った

気がついた時にはハルは床に座って、ベッドの上にいるコリンクを見ていた。コリンクはフーッフーッとこちらに威嚇をして小さな体から紅い電気をだしていた。
そこで分かった

あたし、コリンクに攻撃されたんだ


『ハル!大丈夫か?!』


「あ、うん。大丈夫…恋は?」

『俺はこの中にいるから大丈夫だ』



そっか良かった。と言って立ち上がるが、まだ電気の痺れが残っている。立ち上がる際にピリピリと痺れて少しだけ痛かった


「コリンク…?」

『っっ!!くる、な!』


尋常じゃないくらい体を震わせて、目にはうっすらと涙の膜が張っていた。そんな姿を見て、ハルは顔を歪ませた。何か怖がらせない方法は無いか考えていると、騒ぎを嗅ぎつけたジョーイさんがどうしたの?!と言ってガラガラとドアを開けて入ってきた

新たな人物の登場にコリンクはさらに体を震わせる


「これはっ…いまコリンクは、錯乱してるのね。とりあえず暴れちゃうと傷口が開くから安定剤を…」

『っ』


ジョーイさんが注射器を手にするとコリンクはまたさらに目を大きく開けた。
その様子が尋常じゃないと察したハルはジョーイさんに注射器をしまうように言おうとしたが



『やだあああああああああああああああッッ!!』


その叫び声とともにコリンクは紅い電気を病室いっぱいに発した。さっきとは比べ物にならないくらい、電気は痛かった


「あぁ!」

「あうっ!」

『ハル!』



ジョーイさんとハルは床へと座り込んでしまった。心配してくれる恋にハルは大丈夫と意味合いをもってニッコリと笑い宝石を撫でた。ジョーイさんの方を見れば、彼女も平気な様子だった

今、目の前にいるコリンクは人間に対して尋常じゃないくらいの恐怖心を抱いている。それはコリンクを見れば一目瞭然だった。
この子みたいに色違いの子は邪険に扱われる……ジョーイさんが先ほどハルに告げたことを思い出す。

この子は一体どんな思いだったんだろう。痛かっただろう。怖かっただろう。辛かっただろう。寂しかっただろう

悔しい。すごく悔しい。同じ人間としてこんなことをしてしまうのか、と思うのが悲しい。もしかしたら、この子は本来明るい未来を送っていたのかもしれない。それを人間の手によって変えてしまったのかと思うと、悔しいんだ。
だから、だから、そんな恐怖心を人間が与えたのなら…また人間の手によって与えたい。
安心を目の前で暴れてるあの子に…


「ねぇ、コリンク、くん?大丈夫だよ?あたしたちは何もしないから、ね?」

『うそ、だっ!人間、悪いこと、する!色違い、珍しい、捕まえて、売る!やだ、怖いっ!怖い、怖い!』

「っ、あたしはそんなことしないよ?」

『!!言葉、分かっ?!』

「うん、そうだよ。だから、安心して、ね」

『くる、なっ!!』


手を延ばしてコリンクに近づこうとすれば、コリンクはまた電気を放った。
痛い、痛いけどあたしは歯を食いしばってさらにコリンクに近づく。それに気づいたコリンクはこれ以上近づけないようにさらに電気を強くする

後ろのジョーイさんや恋に、もうやめろって言われたけど、あたしはやめない
まだ、まだ大丈夫…いけるっ!これくらいへっちゃらだよ!


「ぐっ、う、大、丈夫だから。本当、になにも、しないっよ?」

『うそ、うそうそうそ!!おまえ、他、人間、同じ!うそついて、捕まえるっ!』

「捕まえ、ないっ!嘘なんか、ついてないっ!人間にも色んな、人がいる、の!コリンクくんが、見たとおりに、悪い奴も、いるけど!でも、優しい、ひとも、いるっ!」

『うそ!人間、怖いっ!』

「うそなんかじゃ、ないっ!」


一喝すればコリンクは怯んだのか、電気の威力が大幅に下がった。その隙を見てハルは、ニコッと穏やかな笑みを浮かべて、コリンクをソッと優しく抱きしめた


『?!?!』


いきなりのことで反応ができなかったが、自分が抱きしめられていると分かるとコリンクは強い電撃を発した


「っ」

『や、はな、せ!』

「大、丈夫だよ、大丈夫。怖かった、よね…辛かったよね…寂しかったよね……けど、大丈夫だから……あなたなら、きっと」


こんなのただのエゴだ。自分の考えを相手に押し付けている。ただのわがままかもしれない。だけど、これが今あたしの出来ることで、あたしがこの子に与えられるもの…


「大丈夫」


優しく、でも強く彼を抱きしめる。トクン…トクンと鼓動が伝わるくらいに。
そんなハルの様子にコリンクは酷く混乱していた

痛いはずなのに、苦しいはずなのに、何故彼女は自分に笑みを向けてくれるのだろうか?

何故彼女は自分に対してそこまでしてくれるのか?


本当は分かっている。人間には怖い人もいるけど、優しい人だっていることを。分かっている。分かっているけど、人間に対しての恐怖心が大きすぎて、全ての人間が悪い人に見えてしまう

もうこれから人間には恐怖心しか抱かないと思っていた矢先だ。いま、自分は人間である彼女に優しく抱きしめられている。
もちろん、怖くて怖くてたくさんの強い電気を出した。だけど、彼女はそれに怯えることもなく、自分に真っ直ぐ向かってきて、優しく微笑んで抱きしめてくれた
そして言ってくれた。大丈夫…と

あぁ、やっぱりこんなに優しい人もいるんじゃないか。自身がボロボロになっているのに、それにも構わず自分の恐怖心を少しでもなくそうと、優しく接してくれた。
触れて抱きしめてくれた


嬉しいなぁ……




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