あれから創とハルと恋でギャイギャイ騒ぎつつ、ご飯の支度をしていた。そういえばご飯まだだったなぁ…と自覚したら凄くお腹空き、早よ食べたいと考えた瞬間にぐぅーと豪快にハルのお腹が鳴った。

案の定、2人に大爆笑されてしまった。お腹を抱えて笑っている創の弁慶の泣き所を思いっきり蹴ってから、ドシドシと大きな足音をたててお風呂場に向かった
リビングを出る際にチラッと創を見ると脛を抑えてうずくまっていた。ざまぁみそづけ!なんて心の中で吐き捨てて、リビングを出て行った


「いたたた…我が娘ながら素晴らしい蹴りだった…」

『嬉しそうな顔すんなよ。本当気持ち悪いな』

「なぁ、さっきから喧嘩売ってるよな?絶対にそうだよな?よーし、そーゆことならその喧嘩買うぞアホんだら」


そう言いつつ、脛を少しさすってから立ち上がる。火にかけていた鍋の中身を確認してから火を止めて、また椅子へと腰をかけた。
恋はテーブルの上におかれている。ハルのちょっとした気遣いなのか、数枚のティッシュの上に置かれている


「...意識戻ったんだな」


新しく淹れ直した珈琲を飲みながら、恋に尋ねる。さっきとは打って変わり、ギャイギャイ騒いでた彼らは静かに話始める



『…あぁ。だが、まだ外には出れない』


「そうか…」

『…いいのか』


「何が」

『旅のことだ』


ズズ…と軽く音を立てて珈琲を啜る。シンクでは水道から水滴が落ちたのか、チャポンと水の音が静かな空間に響き渡る


「良いも悪いも、あれはハルが決めたことだ。俺たちがとやかく言う筋合いはねぇよ」

『だが…』


腑に落ちない。恋はそう言いたげだった。
もともと彼は旅に関してはそこまで賛成するつもりはない。プラズマ団が動き出してる中何故、あのような提案をしたのか
騒動が落ち着いた頃でもよかったんじゃないだろうか

「分かってんだろ。10になった子どもはパートナーがいる場合、旅をしてもいい権利が与えられる。ハルはもう16歳だ。一応お前というパートナーもいる。条件は一致してるだろ」

『そうだが…』

「出るか出ないかはあいつの自由。どっちにするか迷ってるなら手助けするのが親の役目だろ。どんなに危険で困難であっても」


それに…とその先の言葉を言おうとすると、風呂場の方から「あー、いい湯だったー!」なんて言う声が聞こえた。時計を見ればハルが風呂に入ってから約10分。女子にしては早すぎる入浴に恋は早すぎだろ…と思わず言葉がこぼれた
カラカラ笑う創は残りがあと少しになった珈琲を飲み干し、マグカップをテーブルに置く。そして、静かに目を閉じる



「運命はそう簡単に変えられない」





****


頭をふわふわなタオルでガシガシ拭きながらリビングに入ると創が皿をテーブルに運んでいた。今日の夕飯はパンとシチューとロールキャベツらしい。美味しそうな匂いにハルはヨダレが垂れそうになった。

そして、準備を終えた創も席につき、ハルも椅子に座ってから、二人で手を合わせた


「「いただきます」」


あたしたちの夕飯の時間
パパが作ってくれた美味しいご飯に、思わず頬を緩めて食べる


「あれ、恋はお腹とか空かないの?」

『…ん?あぁ、この中にいる時はお腹は減らないようになっているんだ』


「へぇー、その中すごいんだねー!」


感心しながらも、料理を口に運んでいると恋が行儀悪いぞと注意してきた。ハルはシュンとしてから短くごめんと謝り、食べるのを再開した


「おー恋きゅんはすっかりお父さんかー?ん?お父さん?いやいやダメだダメダメ!ハルのお父さんはこの俺だけ!恋きゅんはお父さんになっちゃっダメ!絶対!」

『…お前も行儀悪い。口に食べ物入ったまま喋るな。食べ終わってから喋ろ。あと、恋きゅんってなんだ。やめろ』


「恋ちゃんはお父さんじゃなくて、お兄さんだからな!いいな!?」

『…分かったから静かに食べてろ。あと、ちゃんもやめろ』


「パパ!汚い!喋らないで!」

『ほら、ハル…また口の中に入ったまま…』


おっと…いけねと言ってハルは手で口を抑える。創は創で、ハルから汚いと言われたことがショックだったのか、かなり落ち込んだ様子でシチューを食べいた。しかし、それも束の間。ハルがパパの料理は世界一だねなんて褒めると、先ほどの落ち込みが嘘だったかのように明るくなり喋り始める。まだ口の中に食べ物は入っているのに


『この親にしてこの子あり…か』


注意するのが面倒くさくなった恋は深くため息をついた



ご飯を食べ終わった頃には、21時を回っていた。ハルは歯ブラシをしてから、寝ることにする。
創に教えてもらった自室に行こうとすれば、創におやすみのちゅーは?と言われたので、恋と一緒に気持ち悪いと返してから、自室に入った

ベッドの近くに行くと電気スタンドが上にのってある低い棚があった。恋をその電気スタンドの近くに置いてから、布団に入り電気を消した


「おやすみ、恋」

『…あぁ、おやすみハル』


今日は本当に色んなことがあったなーと思い出しつつ、徐々にやってきた睡魔に負けてハルは瞼を閉じた


明日からも頑張ろう!


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