「てかマジでポケモンな、の?」
「俺がハルに嘘つくことあった?」
「星の数ほど」
「あ、あれぇー?そうだったっけぇー?」
はははと誤魔化し笑いをして、汗を滝のようにかき視線を宙に迷わせている。どうやら思い当たる節があるようだ
だが、今のハルにとってそんなことはどうでもいい事だ。創には沢山聞きたいことがある。でも、何を言っていいのか、何から聞いたらいいのか、分からなくなって頭を悩ましていた
それをみた創は、ハルの名前を呼び、顔を上げたのを確認してからニコッと微笑んだ
「色んなことがありすぎて頭が混乱しているんだろう?大丈夫。ハルの頭でも分かるように順を追って説明するから」
「パパ…ってちょっと待って。遠回しに馬鹿って言ってるよね。言ってるよね?!」
「まずは…」
「スルーですかちくしょう」
今度から嘘つき野郎って呼んでやる。と心の中でそう誓い、ココアを飲もうとマグカップを持つ。
フーフーと息を吹きかけ少し冷ましていると、創に名前を呼ばれ、そちらを見る。
先ほどまで笑っていた顔が真剣になり、こちらを見ていたのでハルは一口も飲まずにマグカップをテーブルに置く
「自己紹介だな。改めて、俺の名前は創。又の名、そうせいポケモン...アルセウス。よろしくな」
「あ、」
アルセウスううううううううう?!
思わず声を上げて驚いた。いや、驚くなって言われたほうが無理だろう
いや、考えてみ?今まで人間だと思っていたパパが実はポケモンで、しかもだ。ポケモンはポケモンでも神と言われてるアルセウス様なんだよ?神だぜ?これはめちゃ驚くよなぁ〜!?
創がアルセウスと言うことに凄く驚いていたが、あれ…とパパに自分がしてきたことを思い返す
蹴ったり叩いたり悪態ついたり無視したりしてきたが、これってまずくないか?神様にそれは本当にまずくない?
「あああの、これまでの無礼をどうか許してくださあああい!」
ハルはソファーの上で土下座をした。
それは物凄い勢いで。額を柔らかいソファーにグリグリと押し付けていたら、ポカンとしてた創と恋がカラカラと笑い始めた。
「ぶっ、謝るなよハルっ」
『そう、だぞ、こんな奴に謝らな、ぶふ』
「ちょ、こんな奴にとか…ひでぇ、あはは」
「つか…2人とも笑いすぎじゃね?!」
未だに笑っている彼らにジトーとした視線を送らせば、2人はどうにか笑うのを止めてくれた。
恋は時々、思い出し笑いをしているが、それはあえて無視する
「だけど、本当にハルは謝ることなんてない。寧ろ謝らなくてはいけないのは俺の方だからな」
「?」
「俺はハルを騙していたことになる」
創は背もたれに寄りかかりマグカップに入っている珈琲に視線を移した。なんのことか分からないハルは、頭にクエスチョンマークを浮かべていた
「ポケモンである俺がハルと一緒に暮らしていたのか...それは偶然だったんだ」
「偶然?」
「そう。たまたまあっちの世界に遊びに行っていた俺は、玄関で泣いている赤ん坊を見つけた」
「それが、あたし...。って神様がなに遊びに来てんの?!」
「えー、だってー息抜きしたかったんだもーん」
『だもんとかキモイ』
「お前はどうしてそう辛辣なわけ?!」
恋の辛辣さに少し涙目になって訴えてくる創。それをまぁまぁと宥めるハルは、この2人は仲が悪いのかな?なんて思っていた
「ごほん、とりあえず俺はハルを拾って育てた。本当は人間に育ててもらった方がいいとは思ったんだが、何故か出来なくてな。この子は俺が護ってみせるって想いが湧き出てきてな。それでハルを拾ったのかもしれない」
「……」
「でも、俺はハルのこと本当の娘のように思っているし愛してる!それだけは、偽りはない…。だけど、ハルを騙していたことには…」
「ねぇ、パパ?」
話していく内に創は眉間に皺を寄せ、カップを持っている手に力が入り、拳は血の気を無くして白くなっていた。
それをハルは優しく自分の手を重ねた
創は少しビックリしてハルを見る。それに応えるように、ニコッと笑ったみせた
「あたしね、親がパパで良かった。そりゃあ、まぁパパがポケモンだったことにはビックリしたけど、でも、そんなの関係ない」
「……」
「ポケモンだとか、人間だとか、そんなことどうでもいいの。赤の他人である、あたしを拾って愛情もって育ててくれたんだもん。あたしは世界で一番幸せな娘だよ」
「…ハルっ」
創は愛する娘を強く優しく抱きしめる。何かに縋るような抱きしめにハルは子どもみたいと思い、自分の腕を創の背中に回す
人肌の温もりを感じる。ドクンドクンと互いの鼓動が聞こえる。ああ…すごく、安心する。
ここに飛ばされた時、どうしようもない不安に駆られた。
気がついたら森にいて、実は異世界で、マメパトに襲われて、あたしを知ってる人がこの世界にはいないことを知って、世界に見捨てられた気がした
確かに恋がいるし、ここに来て嬉しいとは言ったけど、その反面不安と恐怖感があったのも事実。
だから、身内であるパパがここにいたことに安心した。あたしは一人じゃないんだねって思えた
ハルは微笑みながら一筋の涙を流し、ギュッと抱きしめた
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