「ほ、本当にポケモンなの?」
恐る恐るともう一度宝石に問いかける
信じられないことばかりで頭は混乱状態だ。よく考えれば宝石に話しかける少女など…頭のおかしい人だ。
しかしハルは最初ドッキリと信じ込み、この宝石もその仕掛けなのだと思っていた。宝石の中に何か機械が埋めてこまれており、その機械を通じて話しているのだ…と考えていた。だが、ドッキリではないと分かった以上それもありえないとなったわけだったがハルはそれに気づいていなかった。
少々…いやかなり馬鹿だが、大目に見てほしい
『あぁ、今は理由があって宝石の中にいるだけで、正真正銘のポケモンだ』
「り、理由?」
『そう。まぁ…簡単に言えば、あることに力を使い果たしてしまって、今は力が限りなく0になっているんだ。だから、力を溜めるために暫くこうして宝石の中に入っているんだ』
「そう、なんだ…。種族とかって…?」
『……それはちょっと…内緒、だな』
ここでも言葉を濁す宝石。
いくらハルが馬鹿だろうが、空気は読める子である。深く聞かないでくれと雰囲気で言ってるのを読み、ハルは「そっか」とだけ返した。
いつか、いつか、聞ける日が来たらな…なんて宝石のトレーナーでも無いのにそんな事を思いつつ、瞳を閉じる
しかし、さっきから驚きの連続で近い内に禿げる気がするな〜。こんな若い内に育毛剤にお世話になるとか嫌なんだけど…。てか、ポケモンの世界にも育毛剤ってあるのかな?
『ハルはこのあとどうするんだ?』
「え、いや…育毛剤のお世話にはまだなりたくないかと」
『…なんの話だよ、ぶふっ』
育毛剤のことなどを考えていたせいで、宝石の質問とだいぶ違った答えを言ってしまったハル。やっちまったと頭を抱えると、宝石はカタカタと笑い始めた
一旦笑うと止まらないんだよな〜と思っていると、宝石はなんとか笑いを止めようとする。笑い声は聞こえなくなったが、宝石は未だにカタカタと揺れている
『ゴホンッ…これからのことだ。旅はするのか?』
旅。それはここの世界のたくさんの人が経験すること。もちろんハルも旅をしてみたかった。
そう、過去形なのだ。実際にこの世界に来て、旅をしたいのかと聞かれて、ハルは迷っている。旅をすれば色々と分かるかもしれない。仲間も増えて楽しく旅が出来るかもしれない
だけど、どこか戸惑っている自分がいるのも確かだ。
「えっと…と、とりあえず森から脱出してから考えようかな…と」
うーん。と頭を悩ませた結果、行き着いた答えはそれだった。だが確かに、なにをするにしてもまずは、この森から出なければ意味が無い。森を抜けてからゆっくり考えよう。旅をするのか…はたまた着いた街で、のほほんと平和に暮らすのか…
何も強いられてる訳では無いんだ、誰かにこの世界を救って欲しいと言われた訳でもないんだ…どっちの選択になろうとそれはそれで良いと思う
『…そうか。そうだな。まずは森から出ないとな。あ、そうだハル』
「んー?なーにー?」
『お願いがあるんだ』
少し考えたあとに宝石はお願いをして来た。もちろんハルは自分が出来る範囲であればどんなお願いでも、聞き入れるつもりだった。
だって、こうしてこの状況に理解出来たのは全部宝石さんのおかげだから。だから、宝石さんのお願いは叶えて上げたい。あたしが出来ることなんて少ないけどね!
『俺をハルのパートナーにして欲しいんだ。』
「え、」
『確かにまだ何のポケモンなのか教えられないし、今はこんななりで何も出来ないけど、それでもハルさえ良ければ俺をパートナーにしてくれないか?』
もし彼が姿を現して此処にいたならば、きっと真剣な目をしているに違いない。雰囲気がそう言っている
もちろん、ハルは断るつまりなど微塵もない。寧ろ、このお願いはハルからしたかったものだった。初対面のはずなのに彼の声を聞くと落ち着く。きっとそれは彼をもう信頼してるからだと思う
だから嬉しい。嬉しさのあまり気持ち悪い面してないかな?まぁ、してても仕方ないよね!
黙りこんでしまったハルを感じて宝石は『やっぱり、』と寂しげに呟いた。でもハルはにっこりと笑い
「じゃあ、宝石さんの名前は恋(れん)ね!」
『え?』
「だから、宝石さんの名前!相棒になるのに宝石さんなんて余所余所しくて嫌だから、名前つけたんだけど、嫌だったかな?」
『っ!いや、そんなことはない。素敵な名前をありがとう』
「良かった!これからもよろしくね、恋!」
『あぁ。こちらこそ、よろしく頼む。ハル』ハルと恋は、あははとお互いに笑いあった。こうして、恋がパートナーとなった。
『あ、そう言えば、ハルはポケモンと話せる能力つきだから』
「マジでかぁああああ!」
本当に育毛剤にお世話になったらどうしよう。
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