「ようこそ!ジョインアベニューへ!!」

ゲートの中に入るとそこは異世界だった。
というオチでは無いが、ゲートに入った瞬間クラッカーの音が鳴り響き、ハルの周りには紙吹雪が舞っていた。
目を点にし、頭に沢山の紙を乗せたまま側にいた藍や希色たちを見ると皆、ハル同様に目を点にし呆然と立ち尽くしていた。

恋の間抜け顔を拝めることは早々に無いぞ…今のうちにこの目に焼き付けておこう。と恋をガン見していると、お姉さんから花のレイをかけてもらった


「貴女でこのジョインアベニューを訪れた人、1000人目なんです!」

そう言って嬉しそうに恋たちにも花のレイをかけていくお姉さん。
状況をうまく飲み込めず呆然と立ち尽くしているとハルたちのまえにスーツ姿のおじさまが現れた。

「ようこそようこそ、いらっしゃいました!」

立ち姿からプライド高めの人かなと思いきや、笑顔でペコペコと何度もお辞儀をしながら握手を求められ、ハルもハッと意識を戻しおじさまと同じようにお辞儀をしながら握手をした。
二人で握手をしながらペコペコとお辞儀をしていると隣にいた秘書らしき人が「もうよいのでは?」と声を掛けてくれたことにより、お辞儀合戦は終了した。


「すみませんな、ついつい感極まってしまい…あっ、私、当アベニューの社長でございます。よろしければこれ当アベニューでお使いいただけるクーポンです。受け取ってくださいな」

「うぇ?!いや、え、でも…」

「良いのです良いのです!リニューアルオープンしてから1000人目のお客様!こんなに喜ばしいことはございません!そんな私からのお気持ちです。」


物腰柔らかく言う社長さんであるが、クーポンを持つ手はものすごくグイグイと強く押し付けてくる。なんとも言ってることとやっていることがチグハグである。ハルもその押しと社長さんの気持ちを考え、では…とそのクーポンを受け取った。
それに気前よくした社長さんはさらに懐から追加クーポンを取り出そうとしていたので、慌てて「十分です」と遠慮した。しょんぼりとした顔で「本当に…?」と訴えてくる社長さんに心を痛めつけられるが、ハルは心を鬼にして再度遠慮の言葉を投げかけた。社長さんは渋々といった感じでクーポンを懐にしまってくれた


「リニューアルオープンちゅーことは、前からあったんか?」


「はい。と言っても一年ほど前ですが…。」


一年前…BWの後の出来事か…それなら知らなくても仕方ないよね。と一人で納得して小さく頷くハル

「最初は全くお客様が来ず、閑散としてました…。どのようにしたらいいのか社員皆と手探りでやってきたものの…全く上手くいかず…赤字続きで閉館を考えておりました。」

「しゃ、社長さん…」

「ですが!つい数ヶ月前!救世主が現れたのです!」


どんよりとした雰囲気から一気にテンションが上がり、明るい雰囲気に。社長もガッツポーズをとり、鼻息を少し荒くし興奮気味で語ってくれた。ハルのとなりにいた藍はうわっ…と引いていたが、ハルと花火と希色は食い気味で話を聞き入った


「年はそう、貴女より下くらいの少年にアドバイスを頂いたのです!お店の種類を増やし、イベントを開催などなど…少年の案を実際にやってみるとこれが、繁盛しまして、今ではこのように沢山のお客様が来られるようになりました」

「はへ〜〜!あたしとそんなに変わらないのにすごいなぁ…」

「そんの、少年はどうしたん??」


「はい、是非ともここのオーナーをやってほしいと伝えたのですが…夢があるようで、オーナーはできないとのことでした。今も各地を旅してるかと…」


あ、これはその少年です。と一枚の写真を見せてくれた。そこには社長さんとバイザーをつけ髪の毛が特盛のスポーツ得意ですと言うような雰囲気の少年と横にはフタチマルが写されていた。てっきりヒュウだと思ってたハルは目を丸くさせ首を傾げた


「本当だ、ハルさんとあまり変わらない年の子だね」


「こちらの方がしっかりしてそうだな」


「ちょ、聞き捨てならないんだけど…どう意味?!」

「そのままの意味では無いかと」


「嘘?!藍までそんなこと言うの?!」


酷いよ!みんな!とおよよと泣き真似をするハルを希色がそんなことないよと一生懸命慰める。花火はケラケラ笑っていたのでありったけの力で肩を叩いた。
そんな様子をニコニコと温かく見守ってくれていた社長さんは笑顔でハルの手を握った。


「そんな新しく生まれ変わったジョインアベニューをお楽しみください」

「はい!」


ハルもまた社長さんの手を握り返し、満面の笑みで返事をした



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