『先程はお見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありません。』

「あああ、いえいえこちらこそすみませんでした…まさか、あの、ポケモンだったとは…」


そう先程ゲットした男の人は目の前にいるキングドラだった。彼が擬人化した姿で野生だったため、モンスターボールに吸い込まれたのだ。ちなみに、最近のモンスターボールでも人間はゲットできないよと後から夢に耳打ちされた。し、知ってるわ!

キングドラ…見た目が若干強面気味なので中身もそのような感じなのかと思いきや、全然そんなことはなく、むしろ見た目に反してとても優しく丁寧な姿勢で接してくれる紳士だった。やはり、見た目で決めつけるのはいけないな。とハルは一人心の中で頷いていた


「人型がとれるってことは元々はトレーナーがいたの?」


首をコテンとあざとく傾ける夢にハルたちは同様に首を傾げ、そしてキングドラの方を見た。彼は相変わらず笑顔のまま、でもどこか儚げな表情でコクリと頷いた。


『ええ、前にトレーナーと共に各地を旅してました。人型もその時習得しました。ですが、少し事情があり今はこうして野生としてこの地方を旅してたのです』

「そうやったんか…なんやか、大変やったな…」

「変なこと聞いてごめんね…?」

『だい、じょぶ?』

どこか遠くを見つめる表情からその元トレーナーがあまり良くない人だと察して、それぞれキングドラに労いの言葉をかける。キングドラはそんな彼らに首を横に振って、気にしないでください。と声をかける。


『前のトレーナーも悪い方ではないんです…。自分が上手く立ち回れなかったばかりにご迷惑をおかけしてしまったので…あまり、責めないで下さい…』


困ったように笑う彼に、みんなはかける言葉が見つからず、静かに頷いた。
そんな様子を見ていたハルは手で口元を覆い、静かに涙を流していた。なんて、なんて健気な子なんだろう…たくさん大変な思いをしたんだろうな…と。


「うううう!なんていい子なの!貴方も自分をあまり責めないでね…!」

『あ、ありがとうございます…』


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を近づけてそう言えば、キングドラは少し引き、小さく礼を述べた。少しどころかドン引きであるが、1人感動してるハルはそれに気付くことなく、健気なだ〜と泣いていた。その後ろで全てを見ていた恋が、ふっ…ふふ…と手で顔を覆って顔を震わせていたことは内緒である。

夢から貰ったティッシュでズビッと少し鼻をかんでから、もう一度キングドラと向き合う


「あんな形で貴方をゲットしてしまったけど、どうする…?」


本当は一緒に旅したいけど、なんて本音は心の奥にしまう。なんだか、言葉を理解できるのに意思を無視してゲットするのが申し訳なく感じ、ついつい彼らに聞いてしまう。アニメとかゲームとか見る限り、そんなことしてないけど…まぁ、確認は大事なので!
ふむ…と考えてるキングドラをドキドキしながら見守っていると、彼はにっこりと優しい笑みで指で丸を作った。
…つまり、これは


『これも何かの縁です。貴女方の旅にご一緒させてください』


ブワッと自分の中で何かが膨らむ。これは嬉しさだ。自分の口元が緩むのが分かる。バッとみんなを見ると、それぞれいい笑顔で一つ頷いてくれた。そして小さくガッツポーズをとってから、キラキラと輝いた目で彼を見た


「うん!!よろしくね、藍(あい)!」

『あ、い…?』


キョトンとしている彼にズイッとさらに近く。彼は少し後ろに反っているがそれに気づかず、ハルは何度と頷いた


「そう!藍色の藍!嫌だった…かな?」

『…いえ、とても気に入りました。素敵な名前ありがとうございます』

「〜っうん!これからよろしくね」


こうしてハルのモンスターボールを投げて捕まえたいという願いが叶えられ、新しい仲間も増えた、そんなお昼下がりの出来事。



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