「進化…した…」

凛々しく立つ希色をハルはただただ眺めていた。すると、押し合いで負けたイワパレスがまた希色に襲いかかってきた。
希色はぐっと脚に力を込め、イワパレスを限界まで引きつけてから、脚に込めた力で思いっきりジャンプする
宙で一回転し、落下するスピードを利用しイワパレスの背負っている岩にアイアンテールをヒットさせた

イワパレスの岩は欠け、そのままグラリと巨体を傾けさせて倒れる。すぐに起き上がると思っていたが、倒れたイワパレスは起き上がることなく不安げに辺りを見渡していた
先ほどまでの闘争心はどこへ行ったのだと問いかけたいほどの豹変ぶりにハルは吃驚した

『…なるほど』

そんなイワパレスの様子を見て、なにか分かった夢は花火と希色とハハコモリたちを呼びかける

『あいつらの弱点は岩だよ。』

『い、岩ァ?』

『希色くんが倒したイワパレス…岩が欠けた途端に動かなくなった。岩が少しでも欠けると動けなくなるんじゃないかなって言う推測』

『やってみる価値…ありそうですね』

『…せやな。岩を狙って攻撃すればええんやな?』

『うん。僕がサポートするからみんなお願いね』

『シャア!分ったで!……きいくんは大丈夫なん?』

進化したからって傷が癒えるわけでもない。希色はコリンク時に受けたダメージがそのまま残っている。そんなボロボロな希色を心配して花火は問うと、希色は力強く頷く。それ以上みんなは何も言わなかった。


『じゃあ、みんなよろしく頼むね』


その言葉を合図に花火たちはイワパレスたちの背負っている岩を狙って攻撃を再開させる。イワパレスたちの攻撃を避け、攻撃するチャンスを伺う。
相手の攻撃は威力は大きいものの、ひとつひとつの動作が遅く、次の技を繰り出すまでに時間が多少かかる。その時が攻撃のチャンス


『いまや!』


四匹全員のイワパレスに隙ができ、それを見逃さなかった花火は大声で合図を送る。希色と花火とハハコモリとクルマユ…四匹が一斉に高くジャンプする
先ほど希色がした攻撃のように落下するスピードを活かしてそれぞれの技を繰り出す
夢のてだすけにより全員の技の威力が上がり、難なくイワパレスたちの岩を少し欠けさせることが出来た

イワパレスたちは攻撃された反動でズッシィィンと大きな音をたてて倒れる。
夢の読みは当たっており、岩が欠けたイワパレスたちは倒れたまま、静かに辺りを見渡した

「……おわっ…た」

へたりと座り込むハル。あの凶暴化していたイワパレスたちをどうにか静まらせることが出来た。怖さから解放され脱力とともに目に涙が滲んでくる

『ハルちゃんハルちゃ〜〜ん!どやった?俺、かっこよかったやろー!』

ピョンピョンと跳ねてこちらに向かってくる花火を見て、涙が一瞬で引っ込んだ。いつもなら別になどと素っ気ないことを言うが、頑張ってイワパレスたちを止めてくれたので、花火の頭を撫でる。ふわふわした毛並みでとっても気持ちよかった
当の本人はいきなりの頭撫でに動揺し、あっえっ、うっなどと言葉にならない言葉をあげていた

『あら、ずるいな〜。じゃあ僕も撫でてもらおうかな』

フヨフヨと近づいてくる夢に笑みがこぼれ、優しく撫でる。頭を撫でてくれたお礼ー!とか言って存分に撫でまわす。少し荒くなった撫で方も夢はふふっと微笑んでいた。聖母の笑みなのか魔王降臨の笑みなのか分からないため、荒くなった手つきを優しくする
マジ怖え

『…ハル』

少し低くなった声に名前を呼ばれて、そちらを見る。全身ボロボロで、でもキリッとした目つきでこちらを見つめている希色がいた。ハルはたまらずに、希色の方へ駆け寄り、ギュッと力強く抱きしめる

『く、るしい、よ』

姿も声も変わったが、確かに腕の中にいるのは希色だ。良かった。本当に良かったと安堵する。そんなハルの気持ちを読み取ったのか、希色は自分の前足を出来る限りハルの背中へ回す

「…希色、お疲れ様」

『…ん』

「…お疲れ、様…っ」

本当はもっと掛けたい言葉はたくさんある。進化おめでとう!とかかっこ良かったよとか希色すっごく強くなったね、とかたくさんあるのに、出てくる言葉は労る言葉だった
さらにギュッと抱きしめる。苦しいだろうに、希色はただ静かに抱きしめられていた

そんな姿をアーティさんは見ていた。ハハコモリとクルマユに支えられながら、上半身を起き上がらせる

「……いい作品が作れそうだよ」

そう言って彼は静かに微笑む


こうしてイワパレス騒動は幕を閉じた
この怒涛の1日はあたしたちにとって、変化した1日になったのかもしれない



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