ああ、痛い、痛い、身体中が、痛い
ハルはあまりの痛さに、倒れている身体を起こすことも、指一本動かすことも出来ず、ただ希色たちと一緒に横たわっていた
希色と花火をは大丈夫だろうか…痛む身体に鞭を打ち、首をひねり後ろを見れば、煉獄によるダメージをそこまで受けていない二人の姿が目に入り、一先ず安心した
見える範囲で辺りを見渡せば、先ほどまで草が生い茂ていたはずの場所が、広範囲で焼け野原化としていた。
それほどあの煉獄の威力は凄まじかった
前方からジャリと砂を踏む音が聞こえる
意識が朦朧する中、必死にそちらを見ると、こちらを冷たく見下しているアカネの姿があった
その隣にはヘルガーが寄り添っていた。
「実につまらない。これほどつまらないなんて…。」
上を見ては、わざとらしく、ハァとため息をひとつこぼす。
視線をまたハルに戻し、人差し指をピンと立てて彼女は言った
「君に大サービスとして教えてあげるよ。僕と君の違いを。」
くるりと回り、ハルに背中を向け、そのままコツリコツリとゆっくりと歩き出す
「君は確かにポケモンの知識はある。それはそこら辺のトレーナーより優れている。では、何が足りないのか?何が僕と違うのか。それは簡単なことさ。」
そしてある一定のところまで歩くと、ピタリと止まり、またくるりと回りこちらを見て、ハルに微笑む
だけどあたしにはその微笑みが、とても
「経験の差だよ」
怖いと感じた
「君がいくらポケモンに対しての知識があろうが、それを実戦において活用出来なければ意味が無い。僕はたくさんのバトルをしてきた。けど君はつい最近旅をし始めたヒヨッコだろう?そーんな君がこの僕に勝てるわけないだろう?生身で戦車と殺り合うみたいなもんさ」
ペラペラと語り始めるアカネ
ハルはアカネが言っている言葉が耳に入ってこなかった
彼女に対して全てが恐ろしいと感じた。
ハルと彼女は今日初めて会った初対面なのに、彼女は何故、こんなにも的確なことをいってくるのか。
そう全てが見透かされてるような気がして、ハルは怖くなった
「…っと、これ以上は話さなくていいかな。今ので分かったかな?要するに君みたいな弱い人間が僕に勝てっこないのさ。クズはそこでおとなしくお寝んねしてな」
何も言い返せない。
アカネが言っていること全てが正しいのだ。何も言い返せない自分に悔しくって、ギュッと拳を握った
「もうプラズマ団に逆らえないほどの恐怖を君の心に叩きつけてあげよう。焔、噛み砕く」
牙を向けてこちらに向かってくるヘルガー。
当然ハルは身体中が痛くて動けない。逃げることも不可能。
あぁ、あたしの生涯はここで終えるのだろうか?父さんとの約束を果たせなかったな。このあと花火と希色はどうなってしまうんだろ…。父さんが保護してくれたら嬉しいな…。もっと父さんに甘えれば良かったかな…。父さんにもっとたくさんの感謝を述べたかった。そういえば、結局希色とチョコ飯食べられなかったな…食べたかったな…
朦朧とする意識の中、今までの出来事が頭の中に駆け巡る。
迫り来るヘルガーを視界に入れつつ、これが走馬灯なんだ…と思い、静かに瞳を閉じる。
みんな、こんなに弱いあたしで、ごめんね…今までありがとう
「まだ、諦めるな…ハル」
え…?と思った瞬間、目の前まで迫っていたヘルガーの姿が見えなくなり、かわりに黒い靄のものがハルたちを覆っていた
ハルは探した。先ほどの声…聞き慣れたあの声の主を。
「……まさか、そんな、まさか」
一切表情を変えなかったアカネが何かを見つめ、顔を顰めていた。ヘルガーもその隣にいて、グルルと威嚇していた
ハルはそんな二人の視線を辿っていきそちらを見て、目をかっ開いた
そこに、いたのは…
「…ギラ、ティナ…?」
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