「やー、驚いたでー。自分の体が光ったとおもーたら目線が高くなっとんねんな。んで、きいくんに鏡を見せて貰ったら、あらびっくりどっきり桃の木奇想天外!人間になってたんや」うんうん。と力強く頷く目の前にいる青年…基、花火は先ほど自分に起こった出来事を話してくれた。
さっき風呂場のドアを勢いよく開けた青年は、擬人化した花火だったのだ。ハルはいきなりのことだったので、びっくりして目を点にして固まっていたら、なんやもう服着とるんかい、ちぇ。と不貞腐れた顔になったのでこいつは花火だ。とすぐに分かった
それから擬人化した希色が追いかけてきて、「花くん、恋兄、覗く、ダメ、言ったよ、めっ!」と腰に手をあててプンプンと怒る希色の姿があった
なにあれ。なんていう天使ですか?
可愛いんだけど、可愛すぎなんですけど!めっ、とか…やばい、可愛すぎて鼻血出そう…
あと、恋一応注意してくれたんだ…ありがとう!あんたはやっぱりあたしのお父さんみたいだ!…なんて言うと、父さんが駄々をこねるから口にはしない。心の中で言うけどね
花火は怒っている希色の頭を撫でてから視線が合うようにしゃがみ、ごめんなーとへらへら笑いながら謝った
お前、反省してねぇだろオイ。でもそんなことに気づいていない希色は、ん、とコクリと頷いて許したようだ。ちくしょ、騙されてるけどそんな希色も可愛いから何も言わねぇ!
それからリビングに戻り、冒頭の話をベッドの上に座り希色を膝に乗せ後ろから抱きしめながら聞いていた。ちなみに希色は置いてあったピカチュウドールを抱きしめていた
『俺たちポケモンはある条件を満たせば擬人化するんだ』
「へぇーそうなんやー。丁度ええ!この姿やったらナンパしまくりや!」名案だ!と言わんばかりに表情を明るくさせて、からからと笑った。そんな花火の様子を見て、ハルはジト目で見やり恋は小さく短い溜息をついた
こいつの頭の中はナンパしかないのか。
ハルも溜息をつきたくなったので、小さく息を吐いた
そこで思い出した。
そうだ、恋に聞かなくちゃいけないことがあったんだ。あたしは机の上に置いてある宝石を手に取り、目の高さまで上げてから恋に聞いてみた
「あのさ、恋」
『ん?なんだ、ハル』「さっきプラズマ団の下っ端が言ってた"アカネ"ってどんな人なの?」
『ー…っ。悪いハル。俺も名前しか聞いたことが無いから詳しくは知らねぇんだ』
…あれ、最初の間はなんだったんだろう
どこかバツが悪そうな雰囲気だけど…本当は何か知ってるのかな…?それとも本当に何も知らないから申し訳なくなったとか…?
でも、
「そっかー分かった。ありがとうね恋!」
何も聞かないよ
いつか貴方が自分から全てを話してくれる、その日まであたしは気長に待ってるからね。
少し沈黙になった時だった
ぐぅ〜と大きく部屋に鳴り響く腹の音が聞こえた。音の元を辿っていくと、希色がピカチュウドールをきつく抱きしめてお腹、空いちゃった…と申し訳なさそうに呟いた。
きっと、ハルと恋が真剣な話をしてたから邪魔しちゃ駄目だと思っていたのだろう。ショボンと落ち込みながらちらちらと上目遣いでハルの様子を伺う希色が最高に可愛い
我慢の限界だったのか恋と花火がぶははは!と大声で笑い始めた。花火は腹を抑えて床をバシバシと叩き、恋はそりゃあ手から落ちるんじゃないかと言うくらい、宝石がカタカタと揺れていた
希色は頭にハテナマークを浮かべつつ恋と花火の顔を交互に見て、少し慌てていた。
ごめん、希色…あたしも限界…
「く、ふふふ…!」
「?ハル…?」何故三人が笑っているのか分からないといった風に三人の顔をキョロキョロと見始める
ハルはそんな希色の頭をぽんぽんと撫でて笑いすぎて出てきた涙を人差し指で拭いニコッと笑った
「そうだよね、お腹減ったよね。ご飯にしようか!ね!」
「…!うん!」
「はー…きいくんの腹の音は豪快やなー!」
『…小さいのに、な、ぶは』言葉の続きを発することなく恋はまた笑い始めた。恋のツボがよく分からないけど、取り敢えず浅瀬より浅いと言うことが分かった。
花火は未だに笑っている恋に向かってどーどーどーと落ち着かせようとしていた
ふ、花火。それは無駄な努力って言うやつだぜ!あたしが何回それをやったことやら!
つか、あれれれ?花火…お前つられてまた笑うなよ。落ち着かせようとしていたお前まで笑ってどーすんの
からからと笑っている二人の笑いがおさまるまで待ち、ようやく止まったのがそれから10分後。
希色がお腹空きすぎて屍化としていたので急いでPC内にある食堂まで行き、今日の夕飯を食べた
トレーナーカードがあるから無料とは言え、希色が頼んだ料理の数は尋常ではない。絶対に二日分だろって言う量を希色はけろっとした顔で次々と平らげる。
つか、これ有料だったら一日でお財布が破産だな。あと、ここの食堂を運営してる人涙目じゃね?
心の中ですんません。と軽く謝り、ハルも目の前にあるチョコをぶっかけたご飯に箸をつけた。
ちなみに花火は希色の食べっぷりとハルのチョコ飯を見て、口元を引きつらせて力なく笑っていた
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