第1回 | ナノ
「それ、どうしたの」
さっきまで、動物みたいにお互いを求めていたというのに。
体が弛緩し、思考がまどろむ私をよそに、彼はすぐにタバコに火をつけている。
少し吸って、深く吐く。愛を囁いていた唇から白い煙が吐き出される。
左手の甲の親指の付け根。小さな火傷があった。
「ああ、これ?この前美人のおねーさまにオイタした時、タバコ押し付けられたんだ。なーに、なまえちゃん。気になっちゃった?」
なんて言いながら、彼は左手で私の頭を撫でた。
美人のおねーさまに――――きっと今、不細工な顔をしている。
それに気がついたのか、「なんてな、情報分析の女神さまの尻触ったら、やられたんだよ」と苦笑いしている。
「痛くないの」
「痛くねーよ。結構前にやったやつだから。火傷だから残っちまったのかもな」
動くと汗をかいた体に、シーツがくっつく。起き上がって、座っている彼の左手を掴む。火傷をまじまじと見る。濃い茶色に変化している皮膚は乾燥している。
「熱かった?」
「ん?」
「火傷したとき、熱かった?」
ペロリと火傷を舐める。美味しくない。そして、ちょっとしょっぱい。汗の味だろうか。
「私も、光留さんに付けられたいな」
彼が一瞬驚いた顔をした。
「・・・っ!」
次の瞬間私を押し倒して、上に跨り首筋に顔を埋めた。彼の唇が首筋に吸い付く。チクリと痛みが走る。唇が離れても、その熱が首筋に残っていて、熱い。
「み、光留さんっ、どうしたの」
「なまえちゃんが、可愛いこというから、光留お兄さん。元気になっちゃった」
火傷より熱い夜を、お兄さんと過ごそうか――――
なんて、今時誰も言わないような台詞を口にして、彼は私に口付ける。
タバコの苦い味が私の口腔内を侵す。
流されるがまま、また、求め合う。左手はやわやわと私の胸に触れている。
身体に触れられると、体の芯が熱くなる。
彼のことしか考えられない。彼はどうなのだろう。
「なまえ」
と、彼の呼ぶ声がする。ずるいと思う。こういう時ばっかり、ちゃんと名前を呼ぶ。
彼の声は、手は、視線は、私を捉えて離さない。私の体はどんどん彼に侵食されていく。
彼の熱に浮かされて、また、思考がどろどろと溶けていく。
触れ合う体が熱を帯びていく。この熱を共有するのは2人だけ。
また、唇が触れ合って。今度はあまいあまい口づけで。
あまい熱に侵されて、今日も私は彼とともに溶けていく。
この身にあまくて熱い火傷を負いながら。



――――あますぎて火傷する熱帯夜

あなたの残したこの熱は、私を火傷させるには充分だった。



あますぎて火傷する熱帯夜

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